【中年名車図鑑】ある程度のウデと“気合い”がないとFCは乗りこなせなかった…

ライフスタイル

大貫直次郎

ロングノーズ&ショートデッキのボディに至極のロータリーエンジンを搭載したピュアスポーツモデルの初代サバンナRX-7は、1980年代初頭に入ると次期型が本格的に企画されるようになる。開発陣が目指したのは、「心地よい緊張感が感じられるクルマ」。具体的には、より高性能なグランツーリスモへの進化を画策したのだ。今回は型式の“FC”の通り名で今なお熱い支持を集める2代目サバンナRX-7(1985年~)で一席。
 

通称「FC」として走り屋から熱烈な支持を受けた2代目RX-7。「FD」移行後も人気は衰えなかった

【Vol.12 2代目マツダ・サバンナRX-7】


ロータリースポーツ車のイメージリーダーとして1978年3月にデビューしたSA22C型サバンナRX-7は、ライトウェイトスポーツの性格が強く、一部のファンには大歓迎されたが、時代の流れは確実に“ラグジュアリー化”にシフトしていた。さらにRX-7は北米市場に向けた重要な輸出モデルという役割も担っていたため、現地の要求、すなわち大型化と高級化が大きな課題となる。その回答策として次期型RX-7の開発陣には、グランツーリスモとしての性格を加味することが命題となった。

新型を企画するにあたり、まず開発陣は「スポーツカーとは何か」という基本テーマを掲げ、ゼロベースに立ち返って構想を練る。その際には社内に“スポーツカー研究会”も立ち上げ、参考になるクルマを徹底的に乗り込んだ。結果的に得られた目標は、「心地よい緊張感が感じられるクルマ」の創出。さらに、時代に則した高級感を加えることが必須要件とされた。
 

全長×全幅×全高4310×1690×1270mm。コンパクトなボディサイズも人気の理由だった


肝心のエンジンについては、コスモに搭載していたフラッグシップロータリーの13Bユニットを使うことに決定する。ただし、そのまま積み込むだけでは意図するスポーツ性能が演出できない。そのために開発陣は、ツインスクロールという凝ったメカニズムのターボ機構を装着する。また、冷却機構のインタークーラーも組み込んだ。得られたパワー&トルクは185ps/25.0kg・m。自然吸気の13Bに比べて25ps/4.5kg・mの出力アップを達成した。

強力パワーを支えるサスペンションには、アルミ材を多用した前マクファーソンストラット、後ラテラルロッド付きセミトレーリングアーム(マルチリンク)を採用する。さらにリアサスにはトーコントロールハブを組み込み、メカニカルな4輪操舵の機能を持たせた。エクステリアに関しては入念な風洞実験を実施したうえで、スポーティかつ空力特性に優れた(Cd値0.32)スタイリングを構築する。見た目の雰囲気も、従来型より立派に仕上げた。外観と同様、インテリアも従来型より見栄えと質感を高め、さらに室内空間自体も大きく広げた。

 

ロータリーならではのクセもあり、乗りこなすにはある程度のウデが必要だった


■より高性能なグランツーリスモに進化

コードネームP747を名乗って開発が進められた2代目サバンナRX-7は、FC3Sの型式を取得して1985年10月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“NEW ADULT SPORTS”。グレード展開はGTリミテッド、GT-X、GT-R、GTの4タイプで構成し、全車に13B型ロータリーターボエンジンを搭載していた。ちなみに、CMでは映画『ブレードランナー』(1982年公開)のテーマ曲にのってワインディングを疾走するRX-7の映像が放映され、そのなかで与謝野晶子の短歌「柔肌の 熱き血潮に 触れもみで 寂しからずや 道を説く君」がナレーションとして使われる。女性の柔肌にも触れない求道者と孤高の新ロータリースポーツであるRX-7の姿を重ね合わせたものであるが、当時流行していたデートカーのアンチテーゼ的な意味合いも感じられ、RX-7の硬派ぶりがよく表れていた。それにしてもこの名歌は、クルマ関係者の琴線に触れるものであるらしい。28年後の2013年に発売されたマイナーチェンジ版のトヨタSAIのCMでも、「柔肌の~」が使用されている。
 

初代に比べ、室内空間は広がり、インテリアも豪華に


新しいサバンナRX-7は、当時の走り好きから大歓迎で迎えられた。とくにスタビリティが向上したコーナリング性能が高く評価され、たちまちワインディング№1の称号を獲得する。ただし、速く走らせるにはちょっとしたコツを必要とした。低回転域で起こる燃焼の荒れに起因したカーバッキング現象を避けるテクニックが必要だったのである。低回転域に入らないようにクラッチやアクセル操作を駆使し、ターボのパワーバンドをキープしてコーナーを素早く駆け抜ける、これが出来て初めて、RX-7を乗りこなせたのだ。ある程度のウデがあり、気合いが入ったドライバーでなければRX-7は応えてくれない――そんな玄人好みの特性も、RX-7の人気の要因だった。

走り好きから絶大な支持を集めた2代目サバンナRX-7。しかし開発陣はこの状況に慢心せず、ロータリースポーツにさらなる磨きをかけていった。デビューから約10カ月が経過した1986年8月には、後席を省いて2シーターとし、さらにBBS製鍛造アルミホイールや専用ダンパー、アルミ製ボンネットなどを装着した300台限定の「∞(アンフィニ)」を発売。走りに特化したスパルタンなRX-7はコアなファンの心をがっちりと掴み、たちまち完売の状態となる。その後、∞モデルは小変更を加えながら、1991年までに計6回の限定販売を実施した。
 

写真の4シーターのほか、後席を省いた2シーターモデルもラインアップしていた


1987年8月にはロータリーエンジン車販売20周年を記念して、「カブリオレ」が追加される。カブリオレの特徴は、凝ったルーフの開閉機構、そして内装の演出にあった。ルーフは電動開閉式ソフトトップとパネル製のルーフトップを組み合わせた専用タイプ。フルオープンのほか、トップ部のパネルだけを外すタルガトップの走行も楽しめた。風の巻き込みを防ぐエアロボードの装備、荷物の積載に貢献するトランクルームの設置など、使い勝手にも配慮する。内装はシート、ドアトリム、ステアリングに本革を採用したことがアピールポイント。革の表面には撥水加工も施している。クルマの性格に合わせて、高級オーディオを標準装備したのもニュースだった。一方、開発陣は走りの性能にもこだわった。オープン化にあたり、クロスメンバーや補強材などを効果的に配置。さらにサイドシルの断面構造も変更して、高いボディ剛性を確保した。空気抵抗係数はフルオープン時でCd値0.39。この数値は、当時のオープンカーとしてはトップレベルだった。このカブリオレモデルは予想以上のマニアックな人気を博し、RX-7がフルモデルチェンジした後も販売が続けられ、1992年10月にファイナルバージョンをリリースして締めくくった。

1989年4月になると、マイナーチェンジを敢行する。13Bターボユニットはインディペンデント・ツインスクロールターボの装着や圧縮比のアップなどで、パワー&トルクを205ps/27.5kg・mにまで向上。さらに、ローターやフライホイールの軽量化、内外装の意匠変更なども実施し、ロータリースポーツとしての完成度がより高まる。このころになると、ロータリーターボの欠点とされたカーバッキング現象やオイル消費もかなり改善されていた。


■北米のレースシーンで大活躍した2世代のRX-7

ところで、RX-7が最も活躍したレースシーンといえば、北米を転戦するIMSA(インターナショナル・モーター・スポーツ・アソシエーション)のGTシリーズが筆頭に挙がるだろう。初代のSA22Cと2代目のFC3Sの2代に渡って参戦した同シリーズでは、1980年から’87年にかけて8年連続でGTUクラスのマニュファクチャラーズタイトルを獲得。さらに、デイトナ24時間レースでは12年連続でクラス優勝を成し遂げる。IMSAへの参戦を通じて培ったロータリーエンジンの速さと耐久性は1991年開催のル・マン24時間レースでも発揮され、4ローターのR26Bユニットを搭載したマツダ787Bが見事に総合優勝を達成した。

2代目サバンナRX-7は約6年の長寿命を全うし、1991年10月に3代目となるFD3S型アンフィニRX-7へと移行する(発売は12月)。しかし、新型がデビューした後も2代目の人気が衰えることはなかった。日本の狭いワインディングを駆け抜けるのにちょうどいいボディ幅(1690mm。FDは1760mm)が、走り好きを魅了し続けたのだ。5ナンバーサイズでのロータリースポーツの完成形――FC3Sにはそんな冠がふさわしいのかもしれない。

 

【中年名車図鑑】

Vol.1 6代目 日産ブルーバード

Vol.2 初代ダイハツ・シャレード・デ・トマソ

Vol.3   4代目トヨタ・セリカ

Vol.4   初代トヨタ・ソアラ

Vol.5   2代目ホンダ・プレリュード

Vol.6   5代目マツダ・ファミリア

Vol.7   初代スバル・レガシィ

Vol.8   2代目いすゞ・ジェミニ
Vol.9  初代・三菱パジェロ

Vol.10  5代目・日産シルビア

Vol.11  初代/2代目スズキ・アルト・ワークス

 

citrusでは【1000円分のAmazonギフト券】が当たるアンケートを実施中

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

大貫直次郎

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バ...

大貫直次郎のプロフィール
ページトップ