舛添氏にも可能性が!? 多額の退職金を手にして下流老人になるというリスク

マネー

 

辞職が決まった舛添要一東京都知事。6月13日には「給与全額返納」を表明したものの、15日には撤回。全額返納どころか、在任期間2年4カ月分の退職金として約2200万が支払われることが報じられ、モヤモヤが広がっています。

 

「平成25年就労条件総合調査結果の概況」(厚生労働省」によると、平成24年における定年退職者の学歴・職種別の退職金は以下の通りです。

 

大学卒(管理・事務・技術職):2156万円

高校卒(管理・事務・技術職):1965万円

高校卒(現業職):1484万円

 

日本経済団体連合会が発表した「2014年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」を見ても、新卒から60歳まで勤めあげ、定年退職した際の退職金は大学卒で約2358万円、高校卒で2154万円です。そもそも、全企業に占める退職金給付制度がある企業の割合は年々減っており、4社に1社は退職給付金制度がないのが実情です。

 

そう考えると、「都知事のやり逃げ許すまじ」「けしからん!」と正義のこぶしをブンブン振り回したくなる気持ちもわからなくはありません。ところが、この退職金は、たくさんもらえればいいかというと、そうとも言い切れないようです。というのも、ポンとまとまった金額をもらうほど、足元をすくわれるリスクは比較的に高まるのです。

 

 

■ケース1 退職金を投資信託で賢く運用するはずが……

 

「これまで投資にまったく興味がなかった父が、退職した途端、外貨がどうとか、不動産投資信託がどうといった話をし始めたときは驚きました」というA美さん(32歳)。

 

あるとき、A美さんが帰省すると、A美さんの父親が浮かない顔をしています。「どうしたの?」と聞くと、「まあ、別に…」と言葉を濁す父親。気になって、しつこく聞くと、ようやく投資信託の運用結果が思わしくないことを教えてくれました。

 

もともと、退職した直後にすぐ近所にある地方銀行の窓口で「退職金をそのまま寝かせておくのはもったいない」と投資を薦められ、さらに、銀行員一押しの投資信託を購入。その後、運用成績が悪くなるたびに「今ならこっちのほうが有利です」と銀行員に言われるままに、買い換えていたのだとか。

 

A美さんは父親を説得し、現在保有している投資信託の一覧表を作成。すると、そこにあったのは投資信託の中でも手数料が高かったり、比較的ハイリスク・ハイリターン狙いなタイプのものばかり。どれも、ずいぶん手数料を払っていました。まとまった資金を持っている上、「親身になってくれたから」「よくわからないから」と言いなりになってくれるA美さんの父親は、まさに、まるまる太ったカモだったわけです。

 

退職金以外の老後資金もあり、生活自体にはダメージを受けなかったものの、退職金を百万円以上目減りさせてしまったA美さんの父親はしょんぼり。いまだに「授業料にしては高すぎた……」とぼやいているそう。

 

 

■ケース2 ”長年働いてきたごほうび”のはずが……

 

Bさん(40歳)が両親の生活ぶりが気になり始めたのは、父親が定年退職を迎えてから5年近く経った頃のことです。

 

定年を迎えた当時は、「ようやく念願の長期旅行にいける」と仲良く連れ立って旅行に行ったり、趣味の時間を楽しむ両親の姿を見て、ほほえましく感じていたというBさん。しかし、その後も”ごほうび”生活は一向に一段落する気配はありませんでした。

 

「大丈夫なの?」と母親に聞いても、「大丈夫よ~」と気に留める様子もありません。夫婦でスポーツクラブに入会し、週末はレストランに出かけ、「若い頃に戻ったみたい」とニコニコ。子どもの立場からすると、”親が元気で楽しそうならまあいいか”というところですが、実はその裏で着々と生活費の使いすぎが進行していました。

 

ある日、Bさんが何の気なしに「退職金いくらぐらい残ってるの?」と母親に聞くと、気まずそうに「それがね、あんまり残ってないの……」という答えが返ってきました。生活レベルを上げるのは簡単でも、下げるとなるとひと苦労。気前よく、パッパッとお金を使っていた生活とどう決別するか、”おつきあい”との付き合い方にも、頭を悩ませているそう。

 

退職金のおかげで手にいれたゆとりと、楽しい時間。でも、そこには身の丈以上の生活を、身の丈だと錯覚する罠が潜んでいました。

 

 

■ケース3 退職金で住宅ローンを完済するはずが……

 

「夫が定年退職したら、まず住宅ローンの繰り上げ返済をする予定だったんです。夫も納得してくれていたはずなのに」というC子さん(56歳)。

 

退職金でマンションの住宅ローンを完済し、残りは将来の老後資金にあてる。そうすれば、住居費は最小限になるし、贅沢さえしなければ、不安なく老後を迎えられるはず……という、C子さんの予想はあっさり裏切られます。

 

「これが最後のチャンスだと思う」と、夫が突然の起業宣言。ゴルフ仲間と一緒に、事業を起こすと言い出します。C子さんは大反対しましたが、夫は聞く耳を持ちません。「長年働いてきたのは自分なのに、なぜ退職金のつかいみちを勝手に決められるのか」「長年支えてきたのは自分なのに(以下略)」と、もめた揚げ句、退職金での住宅ローン完済は諦めることに。

 

「事業が軌道にのれば、繰り上げ返済もできるし、同じことだよ!」と説得する夫に対し、(楽観的すぎる……)と不安を感じていたC子さん。残念ながら、イヤな予感は的中し、軌道にのるどころか、張り切ってはじめたビジネスは鳴かず飛ばず。今はなんとか住宅ローンを払い続けられているものの、払えなくなれば、マンションを手放さなくてはいけないかもしれない。住む家を失ったらどうなるのか……と、心配でたまらないそう。

 

また、人生の大事な選択にあたって、意見を聞いてくれなかった夫に対する失望もあり、離婚して、“おひとりさま”として再出発する可能性も脳裏をよぎるとか。

 

まとまったお金を手にすると、誘惑は確実増えます。浮かれてうっかり踏みだしたその先には、“下流老人”まっしぐらの深くて暗い穴がポッカリ開いているかもしれません。

 

仮に退職金が2000万円もらえても、月々20万円ずつ使えば8年と4カ月、月々30万円なら5年半もすれば、スッカラカン。退職金を過信せず、むしろ、退職金が引き寄せるトラブルを警戒する。こうした臆病さが、老後の経済リスクを遠ざけてくれるのです。

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島影真奈美

島影真奈美

「定年後の備えラボ」主宰/編集&ライター 年金から保険、住まい、健康など“定年後”にまつわる不安や悩みを幅広く蒐集。快適なシニア生活と世代間コミュニケーションにまつわる研究・考察を行う。『定...

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