「販売員の接客は超高級店だけ」な時代の到来!?

ビジネス

後藤百合子

 

4/22付の日経新聞電子版に、日経新聞とフィナンシャル・タイムズ紙の共同調査結果として、「ロボットと仕事競えますか 日本は5割代替、主要国最大 」という記事が掲載されました。

 

これまでも今後ロボットやAIに置き換えられると予測される職業に関する記事は散見されましたが、この記事では職種ごとに「置き換え可能」と「置き換え不可能」な業務内容が細かく記述されており非常に具体的です。

 

また、「日本はロボットの導入余地が主要国の中で最も大きいことが明らかになった。マッキンゼーの試算では自動化が可能な業務の割合は日本が55%で、米国の46%、欧州の47%を上回る。農業や製造業など人手に頼る職業の比重が大きい中国(51%)やインド(52%)をも上回る結果となった。」と、かなりショッキングな調査結果も紹介されています。

 

今回の共同調査の結果開発されたというツールをさっそく見てみました。さまざまな職種が選べるようになっていますが、現在、人手不足が深刻な職種の一つ「小売販売員」を選んでみると、約半数の48.4%の業務がロボットで代替できるとされています。

 

<代替できる業務>

販売その他の取引を処理する

販売その他の商取引の記録を維持管理する

販売その他の金融取引の記録を照合する

製品やサービスのコストを計算する

営業窓口などの連絡先を用意する

商品展示台を設置する

顧客ニーズを判断するために顧客情報や製品情報を収集する

作業エリアを清掃する

建物や商品の状態を調べる

商品や部品を仕入れる

顧客から商品注文を取る

販売その他の取引の正確性を評価する

商品や物資の在庫を購入する

商品・サービスの配達を手配する

顧客の信用情報を照合する

 

<代替できない業務>

技術的な商品・サービス情報を顧客に説明する

商品やサービスを販売する

商品やサービスに関する顧客の質問に答える

顧客や得意客、ビジターにあいさつする

製品やサービスの利用について顧客に助言する

お金を支給したり、クレジットやバウチャーを発行したりする

消費者に商品の特徴を説明する

顧客にサービスや製品を推奨する

安全を確保するために作業エリアを監視する

製品や資材の在庫を監視する

販売員を訓練する

販売のコストや条件を見積もる

販売活動を監視する

顧客に金融情報を説明する

セールス・サポート人員を監督する

専門知識を維持するために法律や規制を学ぶ

 

ロボットに置き換わる可能性があるのは、売り上げ処理や記録の維持管理など経理事務的作業、売り場のチェックや作業台の設置など物理的な売り場管理・設営作業、注文受付から発注・納品までの業務処理作業など、顧客との関りがないかほとんどない、バックヤードの仕事が大部分を占めます。

 

反対に置き換わらないものは、実際に顧客に商品知識を伝えたり、最適と思われる製品を勧めたりという営業業務と、販売員の訓練や監視などのスタッフ管理業務で、どちらも「人に関わる」業務であるのが特徴です。

 

しかし、例えば、Amazonを見ればわかるように、オンラインショッピングでは商品説明や顧客へ商品を勧める作業がほぼ自動化されていますし、店頭でもQRコードを使って商品説明を行うサービスも今や珍しくありません。また、店頭で販売員が顧客とコミュニケーションをとりながら顧客の欲しい商品を探す、という業務も、Pepperのような対人専門に開発されたロボットを使えば、下手に商品知識のない店員を配置するよりずっと売り上げ効率が高まるでしょう。

 

もちろん、レジでの会計は自分で行ってもらうことになりますが、これもICタグとスマホ決済を組み合わせれば、自分で商品を袋に入れるだけで何もせずにそのお店を去ることも可能です。

 

そう考えていくと、「代替できない業務」に分類されている業務もほとんどがロボットに置き換え可能になり、唯一残った「管理・監督」業務も、将来的には複数の店舗を集中管理室で同時に管理する(一部ロボットに監視させる)のも夢物語ではなくなりそうです。

 

ユニクロを展開するファーストリテイリングは今後AIに集中的に投資していくことを発表しましたが、できるだけコストを下げて商品を販売するためには今後このような取り組みが不可欠になっていくでしょう。また、副次的な効果として「ブラック企業」評価など雇用に関するさまざまな問題も解決できることが期待されます。

 

先進国の消費の多くは、「必要商品」ではなく「満足消費」です。人は「買う」という行為に対して満足を求めます。そして満足を支える一つの要素は販売員による接客です。

 

ロボット接客が当たり前になってしまえば、生きている人間が接客をしてくれる店はそれ自体が差別化戦略となり、価格に上乗せできる付加価値をもつサービスとなるかもしれません。

 

実際に、外食チェーン店などでは、ホールには店長が一人いるだけで、注文はテーブルで客が入力、配膳はコンベアーやパートの女性がカートで運んでくる、などといったお店が珍しくなくなっています。

 

私たち日本人はずいぶん長い間「お客様は神様」の接客を当たり前と考えてきましたが、ごく一部の高級店でしか「生身の人間が接客してくれる」というサービスが受けられない時代が、もうそこまできているのかもしれません。

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後藤百合子

後藤百合子

大正5年創立、今年で100周年を迎える繊維会社の4代目社長。 日本語、英語、中国語(北京語と広東語)のトライリンガル。現在、シンガポールでも会社を経営中。 ツイッターアカウントは@sinlife2010

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