昨年のGWには計875名の集団食中毒も──野外フードフェスに潜む集団食中毒のリスク

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ゴールデンウィークは楽しそうなフードフェスが沢山! でも、油断しないでください。昨年はゴールデンウィーク中に、大規模な集団食中毒の報道がありました。楽しいはずのフードフェスでつらい思いをしないように、注意すべきポイントを確認していきたいと思います。

 

■“鶏肉の生食”は危険だらけ!


昨年のゴールデンウィークに「肉料理を食する」というシンプルな趣旨の大規模な野外フードフェス(来場者40万人@東京会場 ※主催者発表)がありました。このフードフェスでは、出店者が提供していた「ハーブチキンささみ寿司」を原因食品とした食中毒が発生しました。

肉料理のフードフェスだとこってりとしたものが多そうなので、参加者は「ハーブチキンささみ寿司」を新鮮で、さっぱりして、美味しそうな響きだと、さぞ感じたことでしょう。しかし、「生肉」「加熱不足の鶏肉の調理品」であることを匂わせる名前は、食中毒を専門に研究する私にとっては危険な響きでしかありません……。

このとき、複数の患者ふん便から検出されたのは食中毒原因菌のひとつであるカンピロバクター。フードフェスは全国5会場で同時に開催されており、「ハーブチキンささみ寿司」を調理した業者は東京会場だけでなく福岡会場でも販売していたため、同様に患者が出ていることも判りました。患者数は東京で609名、福岡で266名、2つの会場で合わせて875名と大規模な被害を及ぼした食中毒となりました。

「ハーブチキンささみ寿司」は、ボイルされた鶏肉の切り身をネタとした握り寿司。食べた人が「鶏肉は生であった」と証言していること、また提供された写真からも生肉の様にみえること、原因菌のカンピロバクターは高確率で生の鶏肉を汚染することから、加熱不足により調理後の鶏肉にカンピロバクターが生残して食中毒を起こしたと見受けられます。

カンピロバクターは今、細菌性食中毒の原因として最も多く挙げられるもの。その推定原因食品は「生の鶏肉と加熱不足の鶏肉の調理品」が多く、具体的なメニューの例としては「鶏レバー、ささみ等の刺身、鶏肉のタタキ、鶏の湯引き」などがあります。

近ごろは「生からあげ」「レアからあげ」(両者ともに中はほとんど生の唐揚げ)、「生親子丼」(生の鶏肉と卵)など“生”を打ち出した調理品が飲食店で提供され、食中毒の原因となることがあります。“生●●”といった調理品に対しては、しっかり加熱されているかどうかを疑い、確認して食することが大切。飲食店が提供する調理食品でも、「鶏肉の生食・半生製品」は危険を伴うと言ってよいでしょう。


 

■フードフェスでの食中毒──原因の多くは慣れない大量調理や温度管理不徹底

 

鶏肉だけではありません。2014年7月には、静岡県の花火大会の露店で提供された「冷やしキュウリ」を原因としたO157(腸管出血性大腸菌)の集団感染が発生しています。最終的に患者数510名(内、入院患者114名、死亡者無し)となり、O157を原因とする食中毒としては過去10年の中で患者数最多の事例となりました。

「冷やしキュウリ」は、キュウリを洗浄し、ヘタ取り・皮むき後、調味液入りの水でつけ込み、割り箸をさして冷やして販売されたもの。外気温30℃以上という状況下で、漬け込み作業中の十分な保冷が困難だったのでしょう。数百本という膨大な量のキュウリを一度に漬け込んでいたことも、被害を拡大させた一因と考えられています。

原因食品が業者によるものではなく、家庭で調理された弁当だったケースもあります。食中毒が起きたのは2015年5月、神奈川県の大学で開催された食のイベント。黄色ブドウ球菌によるもので、患者数は21名にのぼりました。一般の家庭で、イベント前日の21時ごろから当日8時にかけて調理されたという弁当は、十分な放冷がされずに盛り付けがされていました。その後、長時間の保管をしたため、調理に携わった人の手指を介して弁当を汚染した黄色ブドウ球菌が増殖したのでしょう。

たくさんの人が集まる会場での食中毒はめずらしくない状況です。多くは、提供する側の不慣れな大量の食品調理、また調理に慣れていない人が調理過程に加わったために、衛生的な取り扱いがおろそかとなり食中毒が発生したと考えられます。野外フードフェスが増えるこれからの時期は気温も高くなります。食中毒防止には、衛生的な取り扱いのほか、温度管理が重要です。特に大量調理時は注意が必要です。


■野外イベントでの食事で気をつけること

【来場者が気をつけること】
「加熱不足の食肉(生焼けなど)」「肉の生食・半生製品」の危険性を認識すること。しっかり中心部まで加熱され、肉の色が変わっていることを確認して食しましょう。また、野外フードフェスなどで冷却されずに保管されている調理食品は購入しないように。

※万が一、食中毒になってしまった場合
主な食中毒原因菌と食べてから症状が出るまでのおおよその時間は、カンピロバクターで2、3日後、O157(腸管出血性大腸菌)で1~5日後、黄色ブドウ球菌で1~5時間後、サルモネラで1~2日後などです。症状が出たらすぐ医者にかかり、「生肉」や「加熱不足の食肉」を食べた場合は、食べたことを忘れずに申し出ることが大切です

【出店者が気をつけること】
不慣れな大量の調理は避けること。どうしても必要な場合は、人員や調理過程、時間などに余裕を持ち、衛生的な取り扱いをおこなうこと。そして温度管理の徹底。食品の調理過程や販売時に食品を長時間室温に放置しないこと、保冷剤を活用するなどの工夫が必要です。

野外イベントでの食中毒のリスクを避けるためには、必ず“確実に加熱された食品”を選ぶようにしましょう。
 

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門間千枝

門間千枝

東京都健康安全研究センター 微生物部 主任研究員(食中毒担当)。「食べること」が大好き。人が「おいしい」と食べているものを「危ないよ」と言う仕事に就くとは思っていなかった。世界中のおいしいものが気軽に安...

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