ボケたくなければ、片づけは自分でしなさい

ヘルス&ビューティ

ニューズウィーク

miya227-iStock.

<片づけは「最高の脳トレ」だと、片づけ講座を主宰する高橋和子氏は言う。となれば、最近話題の「実家の片づけ」問題も解決できる!? 脳の認知機能を効果的に鍛える "片づけトレーニング"とは>

「片づけ」は、子どもが最初にしつけられることのひとつだろう。それなのに、「断捨離」に「ときめく片づけ」、さらに「○○整理術」「△△収納術」など、数え切れないほどの片づけノウハウが巷にあふれている。人は、いくつになっても片づけに悩まされている。

最近は「実家の片づけ」も話題になっている。高齢の親だけで暮らしている家庭では、体力と認知機能の低下によって、日々の片づけすらままならなくなるという。それによって、気づけば実家がゴミ屋敷状態になっている......というケースが多いそうだ。

こうした悩みを解決すべく、また新たな片づけ本が誕生した。それが、『ボケない片づけ 一生自分で片づけられる5つのステップ』(高橋和子著、CCCメディアハウス)だ。

本書の何が新しいかと言えば、その直球なタイトルにある「ボケない」という点。脳の認知機能を鍛えるような手順で行うことで、日々の片づけが認知症予防のトレーニングになる、というのだ。


■片づけは脳の認知機能を鍛える「最高の脳トレ」

片づけ講座を主宰している著者の高橋氏によると、毎日の片づけは「最高の脳トレ」だという。なぜなら、「これは要るのか要らないのか」「ここにどういうふうに収納するのか」といったことを考える際、私たちは脳をフル稼働させているからだ。

ほんの少しのスペースを片づけただけで疲れてしまったり、思うように片づけられないと疲労感が増して嫌になってしまったり......というのも、それくらい脳を使っている証しなのだという。

そこで、脳の認知機能をより効果的に鍛えながら、だれでも自分で片づけられるようになり、かつ片づけが楽しくなるように考案されたのが、本書の提唱する"片づけトレーニング"だ。ここで重要なのが、「片づけ前のメモ」→「片づけ」→「片づけ後のメモ」という手順。これが認知症予防の鍵だという。

まず片づけ前のメモは、認知機能のうちの「計画力(段取りを考えて実行する能力)」を鍛えるため。一方、片づけ後のメモは、短期記憶を司る海馬を鍛えることで、認知機能の「エピソード記憶の想起(体験したことを記憶として思い出す)」を活用するためだ。

そして、実際に片づけをするときには、認知機能の「注意分割機能」を使う。つまり、「要るか要らないか」「どう分類するか」「捨てるかあげるか」というふうに、ひとつひとつに注意を払いながら複数のことを行う(=片づけ自体)が、認知機能を鍛えることにつながっているという。

【参考記事】「どうにかなる」と言う人はお金持ちになれない

これら3つの認知機能(計画力・エピソード記憶の想起・注意分割機能)は、認知症になる前に、最初に低下する認知機能だと言われている。だからこそ、「前後にメモを取って片づけをする」というだけのことが、脳を十分に活性化して、認知症を予防するトレーニングになるというのだ。

なお、メモは詳細なものである必要はなく、片づけ前なら「いつ」「どこを」「どのように」を書くだけでも十分に脳を鍛えられるとのこと。ただし片づけ後のメモは、海馬を鍛えるために、すぐではなく翌日に「思い出して書く」ことがポイントだ。

さて、いざやる気を起こして片づけに取り組もうとすると、ついクローゼットや押入れといった"大きな敵"から手をつけたくなるが、それこそ挫折のもと。まずは簡単にできるところから始め、トレーニングを重ねて、徐々にスキルを磨いていくことが大切だ。

著者の提唱する片づけトレーニングには5つのステップがあり、最初のステップは「カトラリーの引き出し」。箸やスプーン、フォークなどのカトラリーは用途(食べるときに使う)がはっきりしているため、最初に取り組むのに最適な片づけ場所だという。

それに対して、たとえば下駄箱は、季節や用途によって靴を分類できるうえ、家族の共有スペースでもあることが、片づけの難易度を高くしている。

このように段階を踏んでいくことで、片づけに対する苦手意識をなくし、少しずつ自信をつけていくのだという。それによって片づけが苦でなくなり、しかも「脳トレになる」というご褒美もあるので、むしろ楽しく取り組めるようになるのだ。


■「捨てる」ではなく「選ぶ」、「自分で片づける」ことの大切さ

片づけが苦手な人の多くが、「もったいなくて捨てられない」という問題を抱えている。

しかし、不要なものまで大量に溜め込み、何がどこにあるかわからず、必要なときに探し出すこともできずに、同じものを何個も買ったり、結局は捨ててしまったりすることのほうが、ずっともったいない、と著者は言う。

とはいえ、それでも捨てられない、という人は多い。そこで著者が強調しているのが、捨てるのではなく「選ぶ片づけ」であるという点だ。不要なものを捨てるのではなく、必要なもの・使うものを選ぶことが、片づけトレーニングの基本となる。

「使うもの」を選んだあとに残ったものが「使わないもの」ということになるが、それをすぐに「捨てるもの」とするには勇気がいる。だから「一時保管BOX」を用意し、ひとまずそこに入れておく。そして、たとえば半年間一度も開けなかったら、そのまま捨てる。

こうすれば、なかなか捨てられなかったものでも、気持ちの整理がついて、捨てることをすんなりと受け入れられるようになるという。

【参考記事】「今日は赤」と意識するだけ 「カラーバス」で見える世界が変わる

もうひとつ著者が強調しているのが、「自分で片づける」ことの大切さ。著者のセミナーを受講した人の多くも、このことを口にするという。

これは社会問題となっている実家の片づけにおいて、とくに重要になる点だ。高齢の親は、認知機能が低下して片づけられなくなっても、その環境に慣れてしまい、あまり不都合を感じないことが多いという。そこへ、いきなり子供がやって来て、勝手に片づけてしまうことがあるのだ。

片づけが得意な人(片づけないと気が済まないタイプの人)は、ついつい他人のものを片づけてしまうことがある。しかし著者によれば、たとえ家族であっても、それはNG。まして勝手にものを捨ててしまうなど、絶対にやってはいけないことだという。

「自分以外の人のものは、勝手に片づけない」、これが片づけの大原則だ。それは、自分で選ぶことが何よりも大切だから。自分で選ぶことで、ものではなく自分自身が片づけの「主人公」になれる。

本書には、著者のセミナーを受講して、自分で片づけられるようになった人たちのエピソードも多く収録されている。片づけられないという一見ささいな悩みが、いかに家族の仲や生活の質を左右していたか、また、精神面にも大きな影響を与えていたかに驚かされる。

片づけられるようになったことで、家だけでなく性格も変わり、家族のコミュニケーションが変わり、時には人生の転換点になったという例もあった。それほどまでに、片づけの悩みは深い。

「たかが片づけ」と侮ることなかれ。

【参考記事】東大生に育てたいなら、子供を「他人」と思いなさい

 
『ボケない片づけ 一生自分で片づけられる5つのステップ』
 高橋和子 著
 CCCメディアハウス



文:ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

citrusでは【1000円分のAmazonギフト券】が当たるアンケートを実施中

この記事が気に入ったらいいね!しよう

ニューズウィークの人気記事をお届けします

ニューズウィーク

ニューズウィーク

国際ニュース週刊誌『Newsweek』は米国にて1933年に創刊。その日本版として86年に創刊されて以来、『ニューズウィーク日本版』は、世界のニュースを独自の切り口で伝えることで、良質な情報と洞察力ある視点とを提供...

ニューズウィークのプロフィール
続きを読む
ページトップ