大ヒット!シルバータイムドラマ『やすらぎの郷』のファンキーモードが止まらない!

エンタメ

出典:「やすらぎの郷」公式サイトより


■予想を裏切って(?)の高視聴率

冬ドラマの低迷モードが嘘のように、話題作が目白押しの今期春ドラマ。中でも先陣を切ってスタートした『やすらぎの郷』(テレビ朝日系列)は、オンエア開始週の平均視聴率が7%を超えるなど、昼ドラとしては大ヒットと言って良い好調ぶりだ。

『やすらぎの郷』は『北の国から』シリーズや『前略おふくろ様』などの話題作を生み出した倉本聰氏が脚本を担当。主演は石坂浩二で、彼を取り巻く女優陣も八千草薫、浅丘ルリ子、加賀まりこ、有馬稲子、野際陽子、五月みどり、風吹ジュンなど「ギャラも現場の照明もエラいことになっているんだろうなあ」と、想像せざるを得ない顔ぶれ。物語も完全にR60をターゲットとした展開になっているのだが、その内容がかなりファンキーなため、最近では若・中年層をも取り込んでSNSでも話題沸騰だ。では一体、このドラマのどこが“ファンキー”なのだろうか。

舞台は海辺にある超高級老人ホーム「やすらぎの郷」。ここでは生活に関する費用はまったくかからず、老人たちはゴージャスな施設で自由にリタイア後の生活を満喫している。というのも「やすらぎの郷」を作ったのは“芸能界のドン“と恐れられた人物で、このホームにはテレビ業界に貢献し、選ばれた人間でないと入居することができないのだ。人気脚本家として数々の作品を世に送りだしてきた菊村栄(石坂浩二)は、妻(風吹ジュン)が死去したことをきっかけに施設へとやってくる。彼はそこでかつて一緒にテレビの黄金期を支えてきた女優や俳優、歌手たちと再会するのだが……。


■俳優本人にリンクさせたキャラクター

先ほど挙げた女優陣の名前を見て「あー」と膝を打ったアナタは昭和世代。そう、浅丘ルリ子は石坂浩二のリアル元妻、そして加賀まりこはその前に石坂が付き合っていたリアル元カノなのである。石坂演じる菊村が「やすらぎの郷」内のバーでふたりと再会する際、浅丘演じる“お嬢”から出た台詞は「あら、久しぶり~」。じつは石坂と浅丘、離婚以来、この撮影まで一度も会っていなかったらしい。

また、劇中で役名“菊村栄”の名をもじり石坂を「エイちゃん」と呼ぶ浅丘。石坂の本名は武藤兵吉で、俳優仲間から「ヘイちゃん」と呼ばれていたのは有名な話。多分、当時夫婦だったふたりの間でもその呼び名で通していたのだろう……倉本聰、やりたい放題である。さらに、著名な画家の下絵と思われる画が出てきた時に菊村(石坂)は「ちょっと、アンタ、確か前に“なんとか鑑定教室”とかいう番組やってたわよね」と女性陣から責められる。これはもちろん、石坂が製作スタッフとの軋轢で降板したとも言われるアノ番組をいじっているワケだ。


■御大・倉本聰の業界批判

劇中、菊村(石坂)やその仲間の老人たちが繰り出す言葉には、今のテレビ業界に対する皮肉も山盛り。「お台場の方でやってる月9? あれ、瀕死の状態らしいじゃない」「批評家なんて、自分ではものを作らないダニみたいな存在」などなど、エッジの効いた台詞がボンボン飛び出してくる。

週刊誌のインタビュー記事によると、この企画、当初はお台場の某テレビ局に持ち込まれ、一蹴されたとのこと。それにトップダウンでGOを出したのがテレビ朝日なのだ。


■恋ダンスに対抗? やすらぎ体操登場!

5月に入って唐突に流れ始めた「やすらぎ体操」。NHKのラジオ体操を彷彿とさせるコスチュームに身を包んだ若手女優二名が「人生明日は分からない」「人生100年、年金に頼らない」等、パンチのきいた歌詞の体操を繰り広げ、ところどころで老年キャストもおぼつかない振りを披露するという老年版「恋ダンス」。ラストは八千草薫演じる“姫”の「ジャマイカのポーズ」で終わるのだが、多分これ「ジャマイカ」と「じゃ、まあいいか」をかけているのだろう……って、シルバージョーク恐るべし。

そんな地上波の夜ドラマでは決して展開しない世界が月曜から金曜までガッチリ見られる『やすらぎの郷』。オンエア当初はあまりに荒唐無稽なゴージャス施設の設定に「コレ、じつは菊村が死ぬ間際に見ている夢、もしくは死後の世界じゃないの?」なんてトンデモ説も出ていたが、さすがに巨匠・倉本先生がラストでそこに落とすとは思えない。

さらに良く観ると、このドラマには老人たちの「家族」がほぼ存在しないことが分かる。子どもも孫も配偶者もいない「個」の世界。彼らは嫁・姑問題や介護、孫の進学に頭を悩ませることなく、毎日豪華な施設内で盛り上がり、時に恋の真似事をし、憎い相手を茄子に見立てて高温油で呪い揚げる。もしかしたら、「家族」という呪縛から解き放たれ、自由気ままに生きるこの老人たちの存在こそが一番“ファンキー”なのかもしれない。
 

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

上村由紀子

上村由紀子

エンタメ系ライター(主にドラマ・演劇)&ラジオDJ、MC。横浜市出身。スタジオでマイクを操りつつ「ジャニーズから歌舞伎まで」をキャッチフレーズに、雑誌・Web媒体等で執筆中(桐朋学園大学演劇科卒)。巻き髪歴2...

上村由紀子のプロフィール
ページトップ