京都女子高生マタハラ事件。「高校生のクセに妊娠するな」はいじめと変わらない

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清水なほみ

 

「京都府立朱雀高(京都市中京区)が1月、妊娠7カ月の3年女子生徒(18)に対し、卒業の条件として体育の実技をするよう求めていた」と報道されましたが、これは教育者としてあるまじき行為です。

 

働く妊婦に不適切な身体的負担のある労働を強制したり、遠回しに退職を促すようなことをすればそれは立派な「マタハラ」です。この高校は、体育の実技を強要したばかりでなく、学業を続けたいという本人の意向を無視して一方的に休学届も送り付けていたとのことですから、行っていることは「マタハラ」そのものです。何歳であろうと、何をしている人であろうと、妊娠してそれを継続したいと本人が希望すれば、安全に妊娠を継続しつつ本人の「本業」が継続できる方法を周りがサポートするのが本来の姿です。

 

例え、今回の女子生徒の妊娠が「思いがけない妊娠」だったとしても、本人が命を大切にし、育てると決めたのであれば、それは望んだ妊娠となんら変わりありません。本来であれば、学校側はできるだけ妊娠と学業が両立できるように配慮し、無事に卒業できるようにサポートしたり、若年妊娠ならではの心身の悩みに対して親身に対応すべきです。この高校が行っていることは、「自分たちの許容範囲外のものは排除する」といういじめの行為と何ら変わりはないのです。

 

 

■文科省曰く「妊娠と学業は両立できる」

若年妊娠の場合、多くは経済的理由や学業との両立が困難であるという理由から、妊娠を継続しないという選択がなされます。しかし、中には妊娠を継続したいと本人が希望し、親もそれを受け入れて十分なサポートが得られる環境が整う場合もあります。その時問題になるのが、学業か出産かの二者択一を迫る学校側の対応です。

 

今回の報道を受けて、文部科学省は「妊娠と学業は両立できる。本人が学業継続を望む場合、受け止めるべき。子育てに専念すべきとなぜ判断したか分からない。周囲の協力を得ながら育児するのは働く女性も高校生も変わらない」と批判しているとのことですが、まったくもってその通りです。妊娠を継続しながら学業は続けられます。妊娠中に行えない、ハードな運動は、他の形で単位を取得できるようにすればいいだけのことです。

 

医学部は、在学年数が長いこともあってか、学生のうちに妊娠・出産をすませるという選択をする人もいました。大学生が妊娠したからといって、大学側から休学や退学を命じられるなどということは通常はありません。今回、妊娠しているのが「高校生」だから起きてしまった問題という可能性もあります。「高校生のクセに妊娠するな」という意識が、教育者側にあるのではなでしょうか。

 

もちろん、「望まない」若年妊娠を防ぐために、正しい避妊方法を身に着けてもらえるような教育は最も重要です。該当の高校が、きちんとそのような教育を行っていたのかどうかも分かりません。しかし、どのような避妊方法も100%ではない以上、妊娠した時の対応の仕方も、「大人が」もっと考えるべきなのではないでしょうか。

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清水なほみ

女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性...

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