おぎやはぎの強烈な辛口発言は、なぜ憎まれないのか

プロダクション人力舎 オフィシャルウェブサイトより
■「悪口」と「痛快コメント」の違いは受け手側の解釈
最近、おぎやはぎさんの辛口コメントが世間の注目を集めているそうです。
・「ベッキー擁護派が少ないのは友達がいないから」
・「コネないと厳しい」(藤井フミヤ長男のフジ入社に対して)
・「AKBはこじはる以外全員ブス。乃木坂はAKBと違ってみんな可愛い」
・「今から来る子、剛力彩芽似らしいよ」(お題「ちょっとだけ不安にさせてください」)
文字にすると「大丈夫!?」と心配になるほどの毒舌っぷりですが、むしろ「よく言った!」と好意的に受け止められているのだとか。誰かに対して辛口のコメントをしたとき、「心ない悪口」とネガティブに解釈される人もいます。「痛快なコメント」とポジティブに解釈される人もいます。
言語コミュニケーション(発言の内容)から見ると、おぎやはぎさんの発言はレッドカード。話しているときの表情やしぐさなどの非言語コミュニケーションを分析しても、それを補うほどの特徴はありません。しかし同じ発言でも受け手の解釈によって意味が変わってしまうのがコミュニケーション。多くの人が好意的に捉えてしまうその理由を分析してみました。
■おぎやはぎさんの辛口コメントが注目されるのに嫌われない3つの理由
1. 自分でも意識していない不快感情をスッキリさせてくれる
例として冒頭で紹介した剛力彩芽ちゃんに関するネタについて見てみましょう。
剛力彩芽さんは個性的な美人です。それゆえに「そんなに美人?」「なんでこんなに売れてるの?」と思う人も少なくないでしょう。しかし、それを口に出したときの周りの評価などを考えると、敢えて口にする人は少数派。潜在的に抱えているモヤモヤを自覚していない人も含めると結構な数になると推測されます。
そんなところに、辛口コメントを放ってくれるのがおぎやはぎさん。「確かに」「そうだよね」という共感と共に、ある種の爽快感を感じる人も多いのでは。自分でも気がついていなかったモヤモヤをスッキリさせてくれるコメントは好意的に受け止めてしまうものです。
2. 発言者の人柄でポジティブな受け取り方をされやすいから
おぎやはぎさんはお笑いの世界で上からも下からも好かれる人なのだそう。
・「一番可愛がっている後輩」(石橋貴明さん)
・「俺の持つ芸能界の全ての力を使ってでも矢作だけは守り抜きますからね」(極楽とんぼ加藤さん)
・「矢作さんになら今すぐ抱かれてもいい」(バナナマン設楽さん)
所属する事務所のアンケートでも“尊敬する先輩”の一位にランクイン。その人柄や好かれっぷりに関するエピソードは枚挙にいとまがありません。
こういったエピソードを知った人は、おぎやはぎさんは「人柄のいい人」と感じがち。それが発言の受け取り方に影響を与えます。「そんなエピソードは聞いたこともない」という人も、彼らの人柄から影響を受けポジティブな解釈をしている可能性は否めません。
なぜなら私たちは無意識に顔のパーツから性格を類推しているからです(例:目が細い=冷たい、鼻が低い=責任感がない、唇が薄い=心が狭い……など)。
おぎやはぎさん、特に矢作さんの顔パーツやバランスは、人柄がいいと分類される要素が盛りだくさん。こういった印象が、受け手側の解釈にプラスの影響を与えることは大いにあると思います。
ちなみに、矢作さんの広い額、大きな目、小さな鼻、小さな口、小さな顎。これらはすべて幼児性特徴の典型的な例です。この特徴は、見るものに「かわいい」という感情を生起させ、保護などの行動を促す効果があります。
このような幼児性の顔特徴は成熟した顔特徴と比較して、あたたかく、正直、ナイーブ、服従的などと認知されていることも研究で明らかにされています。
特に「あたたかさ」は印象形成の核となる要素で、その人の印象にポジティブな影響を与えます。先輩から可愛がられる、なぜか受け容れられる。その理由の一つでもある矢作さんの顔魅力は、テレビなどを通じてしか接点がない人たちの受け止め方にも大いに影響を与えていると思われます。
3. 見る側が選択的な情報収集と解釈をしてしまうから
私たちは予測や期待を持つと、それに合う情報を選択的に収集し、いいように解釈する傾向があります。またこれらの情報は記憶に残りやすいことも報告されています。
おぎやはぎさんのすべての発言からみれば、辛口コメント、痛快コメントはわずかです。しかしそれを期待して耳を傾けていると、意識しないうちに偏った情報収集をし、批判的なコメントも痛快だと解釈しやすい状態になるのです。
このような状態だと、明らかに悪口に聞こえる発言については「例外」として処理しやすいことも報告されています。
モヤモヤを察する力、顔魅力、期待。いずれにしても、おぎやはぎさんは人としての魅力が高く、それが受け手側の解釈に影響を与えていると思います。
筆者は日頃、発言する内容(言語コミュニケーション)、表情や声のトーン(非言語コミュニケーション)など、発信する側からの研究をしています。しかし、受け手側の解釈で大きく変わってしまうこともあるのが、コミュニケーション。
発言が受け容れられている人にはそれなりの理由があり、そうでない人にもまた理由があります。普段、誤解されやすい人は、その理由をじっくり考えてみるといいかも知れません。人柄は変えられなくても、ちょっとしたポイントを直すだけで、相手の解釈が変わる。コミュニケーションではそんなことも大いにあり得るのです。
コミュニケーション研究家
藤田尚弓
All About 話し方・伝え方ガイド。企業と顧客のコミュニケーション媒体を制作する株式会社アップウェブを経営。言語・視覚の両面から「伝わる」ホームページやパンフレットなどの制作を通し、日々コミュニケーション...
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