【今週のTOKYO FOOD SHOCK】今レモンサワーがアツい! 進化を続けるその魅力とは?

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まさに「復権」! 長く(しかも各所で)水面下で進化を続けていたレモンサワー。その人気が爆発している。

当然と言っていい。鶏のから揚げに魚介のフライに焼き魚。皿上の主役に常に寄り添うカットレモンの実用性に触れるまでもなく、レモンと脂の乗った動物性タンパク質の相性は抜群。単体としての清涼感、爽快感にしてもビールやハイボールにもまったく引けを取らない。

兆しはあった。この10年ほど、東京都内の居酒屋やもつ焼き店、鳥料理店などで独自のスタイルのレモンサワーを売り出す店が増えてきていた。冷凍したレモンを皮ごとすりおろす店、自家製のはちみつ漬けレモンを使う店、和三盆などと合わせてオリジナルのレモンエキスを作る店……。1958年、当時中目黒にあったもつ焼き屋で生まれた「サワー」という名前の飲み物は、半世紀以上の時間をかけてゆっくりと進化を続けていた。

現在のトレンドを決定的なものとしたのは昨年3月、新宿ゴールデン街にオープンしたレモンサワー専門店「the OPEN BOOK」。

「ゴールデン街にまさかの新築新店オープン」「それもレモンサワー専門店」「レシピ考案に下北沢の気鋭店「Salmon&Trout」の森枝幹シェフが協力」「店主は作家の田中小実昌の孫、20代の田中開さん」「3Fまで吹き抜けの店内の壁には数千冊の本がずらり」など話題性も十二分。大人向けの深い味わいの一杯が話題を呼んだ。

「the OPEN BOOK」でのレモンサワーに使われている焼酎は甲類ではなく奄美の黒糖焼酎。そこに自然農法で育てた国産レモンの味と香りをランドルフィルター(クラフトビールのフレーバーづけに使われる機器)で強化し、強炭酸で割る。まさしく前代未聞のクラフトレモンサワー。この店のオープン以降、明らかにレモンサワー復権の流れは確定的なものとなった。

昨年9月には宝酒造がレモンサワー用の焼酎を発売した。他方で「ハイサワー」を製造する博水社は東急目黒線の武蔵小山や西小山駅周辺の飲食店と連携し、「ハイサワー特区」を提唱し、1杯目にハイサワーを注文した客に缶チューハイなどをプレゼントするキャンペーンを打った。

レモンサワーにはこんな逸話もある。第84代総理大臣の小渕恵三氏が焼肉の名店、足立区鹿浜の「スタミナ苑」に足繁く通っていたことは、通人の間では広く知られているが、実は小渕氏がレモンサワーの味を覚えたのもスタミナ苑だったという。


小渕氏は牛タンやハラミを好んだ。ビールの後は、この店で知ったというレモンサワー。1時間ほどで酔いが回り、大の字に寝転んでしまうのが常だったという(朝日新聞2013年7月27日付)

スタミナ苑の奥の座敷で総理大臣が大の字に……。チャーミングな時の宰相が若かりし頃に覚えたレモンサワーの味。近年では、EXILEも"公式ドリンク"として公言し、『dancyu』や『東京カレンダー』でも特集が組まれる熱狂ぶり。日に日に蒸し暑さが増すこの季節、レモンサワーで乾杯! という選択肢も捨てがたい……。が、やっぱりビールやハイボールも捨てがたい。

「乾杯に貴賎なし」。2017年現在のレモンサワーは、他の乾杯酒に引けをとらないポジションを獲得したのは間違いない。そういえば、今月号の『dancyu』も「レモンサワーは僕らのシャンパンなのだ」と言っていた。さもありなん、である。
 

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フードアクティビスト

松浦達也

フードアクティビスト/編集者&ライター 『dancyu』などの食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで、「調理の仕組みと科学」「食文化」「食から見た地方論」など幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオでの食トレンド...

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