新幹線通勤が再びブーム!? 国と自治体のバックアップは正しいのか

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新幹線通勤。この5文字を見て、会社も個人もお金があまっていたバブルの時代の話だと思っている人がいるかもしれない。しかし実は今、再び新幹線通勤が盛り上がっている。

 

背景にあるのはやはり一極集中だ。東京のような大都市に人が集まる理由のひとつは職場や学校があるからだ。地方は自然が豊かでのんびりしていて物価は安くて、暮らすにはいい場所ではあっても、仕事がなかったら生活が成り立たない。生まれ育った故郷をあとにして、東京などに出てくる人があとを絶たない理由のひとつはここにある。でももし地方に住んで東京で働けるなら、それが理想と考える人もいるだろう。それを叶えるのが新幹線通勤だ。

 

スキー場で有名な新潟県湯沢町にある上越新幹線越後湯沢駅。東京駅まで約150kmもある。とてもじゃないが通勤圏内とは言えない。でも新幹線なら各駅停車のたにがわ号でも約1時間半。時間でみれば通勤可能となる。しかもすし詰めの通勤地獄とは無関係で、ほとんどの場合座っていけるそうだし、椅子はリクライニング可能でテーブルまで付いているから、仕事場にも食堂にもなる。少し早起きする必要はあるけれど、時間はむしろ有効活用できそうだ。

 

最大のハードルはお金かもしれない。新幹線にも定期券はあるけれど、越後湯沢~東京間の通勤定期は1カ月で約15万円にもなるからだ。でも日本の会社は通勤手当を出してくれるところが多い。ひと月10万円が支給されるなら、残りの5万円は住宅ローンを含めた生活費の差額で取り戻せるかもしれない。

 

しかも自治体が新幹線代を補助する例もある。北陸新幹線佐久平駅がある長野県佐久市は有名で、驚くことに大宮の次の駅である上越新幹線熊谷駅が位置する埼玉県熊谷市も補助金を用意している。越後湯沢駅がある新潟県湯沢町もそのひとつ。2016年から、町内で住宅を購入して移住した人ならびに町内に15年以上住んだ経験があり再度転入する人を対象に、最大10年間、月額5万円を上限に、新幹線定期代と勤務先が支給する通勤手当の差額の半額を補助するという太っ腹の政策を実施しているのだ。勤務先が10万円出してくれるなら、自己負担は2.5万円で済むことになる。

 

ここまでして自治体が通勤費用を肩代わりするのは、人口流出を食い止める以外に、空き家対策という理由もある。住民がいないという点では同じでも、見渡す限り家ひとつない場所と、朽ちはじめた空き家が点在した場所を比べたら、多くの人は後者を敬遠し、前者に住みたいと思うだろう。さらに湯沢町の場合は、バブル期に建てられたリゾートマンションに空きが目立っているという問題もある。10万円という家賃並みの価格で売り出されている激安物件もある。住む場所があるのだから、できるだけ多くの人に暮らしてもらい、街が活性化してほしい。そのために東京の職場に勤めながら湯沢に住むための資金を提供しているのだ。

 

驚くことに国もこの動きをバックアップしている。平成28年度の税制改正で、給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が、1カ月あたり従来の10万円から15万円に改定されたのだ。これに合わせて通勤手当の上限を引き上げ、満額15万円を認める企業も出てきた。越後湯沢~東京間で言えば、従来は一部だった通勤手当が満額出ることになる。

 

ただ原点に立ち返って考えれば、会社や自治体が個人の通勤費用を月10万円以上も負担するというのは、異常な状況だと感じる。理想は住んでいる場所のそばで働けることだろう。対処療法ではなく抜本対策、つまり機能移転や在宅勤務を進めてもらい、大都市以外でも豊かに暮らせる社会になってほしい。

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森口将之

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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