「私、人見知りで…」は失礼? “1億総コミュ障時代”のサバイバル術

人間関係

 

星野源さんの「人見知りと伝えるのは相手に気を遣ってくださいと言っていることと同じ」という持論が話題になっているそうです(注:「あくまで僕の場合は」と、コミュニケーションで苦しんでいる人たちに配慮したうえでの発言です)。星野さんの持論に、「納得」「耳が痛い」と感じた人も多いようです。

 

皆さんの周りにも「人見知りで…」と前置きをする人たちはいませんか。筆者の周りにも、似たようなところでいうと「朝に弱くて(遅刻や午前中の失敗は許してねの意味?)」「昨日寝てなくて(なので今日はパフォーマンスが悪いですが実力ではありませんの意味?)」「最近忙しくて(準備に時間がとれなかったのは仕方がないという意味?)」といったことを伝えてくれる人はいます。

 

考えてみたら、筆者も無意識にやっていました。例えば、ゴルフのラウンド前に「ガラスの腰で…」と言ったり、テレビ番組の収録前には「一般人なので失礼があるかも知れませんが…」といった挨拶をしたり。

 

「私は○○なので…」といった前置き。私たちは、どうしてこのような言動をとるのでしょうか。

 


■「セルフハンディキャッピング」のメリットとデメリット

 

「人見知りなので…」といったように、あらかじめ前置きしておくのは「セルフハンディキャッピング」と言われる行動のひとつです。そもそも「人見知り」「朝に弱い」などの前置きには明確な根拠や基準もないのではないでしょうか。

 

この行動のメリットは、あらかじめ言い訳を作っておくことで、失敗のショックを和らげられること。確かに人見知りと宣言しておけば、初対面の人に「話しかけたほうがいいだろうか?」と逡巡することもありません。うまくコミュニケーションをとれなかった場合も傷が浅そうです。仮に上手く話すことができた場合「人見知りなのにも関わらず上手く話すことができた」と自分をより評価する材料にもなるでしょう。

 

当然ですがデメリットもあります。実力を発揮しにくくなる、苦手なことを克服する機会を逃す、周囲がモヤモヤとした気持ちになる、口にすることで本当に失敗しやすくなるなどです。

 


■そもそも「人見知り」は克服しなければいけないの?

 

星野源さんは「人見知りで」と言っていた自分を「何様?」と思うようになり、そんな自分を変えることができました。成長するって素晴らしいことですよね。星野さんの話を聞いて「自分も頑張ろう」と思う人がいるのも素敵だなと思います。しかし、人見知りは克服するべきか?というと、そうでない選択もあると思います。「自分はダメだ」という感情に苦しんでいるときには、むしろ無理をしないことをお勧めしたいです。初対面の人となかなか打ち解けられない。これは青年期の方にはめずらしくない話です。社交不安、対人緊張、恥ずかしさというのは、誰もが経験したことのある感情ではないでしょうか。星野さんのように、大人になる過程でこれを克服していけるのはよいことです。

 

しかし「人見知り」の原因が、対人恐怖感情に由来するケースもあります。対人恐怖感情は自尊感情に影響を受けるので、負のスパイラルに陥ってしまう可能性があるのです。自尊感情が低いと、対人恐怖感情が強くなる傾向があります。対人恐怖感情が強いと、対人ストレスが強くなりがちです。対人ストレスが強くなると、人間関係においてネガティブな行動をとりやすくなります。そうなると対人関係は悪化しやすく、さらに自尊感情を低めることになってしまいます。

 

「こんな自分じゃダメだ」と思っているのは、自尊感情が低い状態。この状態で無理に頑張ると悪循環から抜け出すのが難しくなるかも知れません。普段社交的な人も、尊敬する人、この人には敵わないと思っている人を前にすると、緊張してうまく話せませんよね。そんなときも、「無理に頑張り過ぎないで」と筆者は思うのです。

 


■筆者の持論「一億総コミュ障!」無理しなくてもいい

 

先日、某媒体で「コミュ障」について解説するというお仕事がありました。「コミュ障」という言葉があまり好きではない筆者が展開したのは「一億総コミュ障!無理に治さなくてもいい」という持論です。

 

(コミュニケーション障害とは、正確にはアメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5によって定義される症状を指しますが、ここではネットから派生し一般的に用いられることが多くなった「コミュニケーションが苦手な人」という意味で使用しています)

 

誰とでもうまく話す。それができない人をコミュ障と言うのであれば、話をし過ぎる人は話し過ぎ系のコミュ障。コミュニケーションスタイルの中央値に近づこうと頑張り過ぎる人も、とらわれ系のコミュ障ではないでしょうか。

 

友人に、とても気の利く女性がいます。誰とでも仲良くできて話がおもしろい彼女は当然ながら交友関係も広いです。責任感も強いのか、仕事を抱えている人をみると率先して手助けをします。しかし、そのせいで時間とエネルギーが足りなくなり、肝心な自分の仕事で成果をあげられないときもあります。相手の気持ちを読み過ぎて本音が言えないことも多いそうです。彼女のように、コミュニケーション能力が高いのに空気を読み過ぎるコミュ障の人も世の中にはたくさんいます。いろんなタイプのコミュ障の人がいるのですから「うまく話せない=自分はダメだ」と委縮しなくてもいいと思うのです。

 


■自信がない人は言い訳してもいい!

 

自分はうまく人とやれない、何の話をすれば嫌われないのだろうか、どう話を続けていいか想像がつかない……そんな悩みのある人は、「人見知りで…」といった前置き、言い訳を使うことがあってもいいと思います。

 

ある気質分布の調査によると、内向的な性格な人は全体の3割にものぼるのだとか。内向的な性格のほうが有利なこともたくさんありますし、社交的でないことに引け目を感じる必要はないと思います。

 

そもそもコミュニケーションは、相手に伝わり、解釈されるプロセスで誤解が生じやすいもの。完璧を目指すのは難しいです。あえてコミュニケーション上手を目指さない、そんな人がいてもいいのです。

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コミュニケーション研究家

藤田尚弓

All About 話し方・伝え方ガイド。企業と顧客のコミュニケーション媒体を制作する株式会社アップウェブを経営。言語・視覚の両面から「伝わる」ホームページやパンフレットなどの制作を通し、日々コミュニケーション...

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