「男の性犯罪は女のせい」という男性産婦人科医の発言に失笑の嵐

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三浦ゆえ

 

笑うしかない。とは、こういうことをいうのでしょう。6月某日、都内某所にて開催された“性と精神のあり方を考えるシンポジウム”において、ある男性が壇上で「なぜ最近、女性のスカートは短いのか。けしからん!」と滔々と述べはじめたのです。

 

 

■ツッコミどころ満載の「けしからん」

 

その男性は、昭和1ケタ生まれの産婦人科医。その業界では“権威”と呼ばれる人物の話に会場の多くの人が耳を傾けるなか、スカート以外にも昨今の女性の有り様について、

 

 ・茶髪はけしからん

 ・長い髪を結ばないのはけしからん

 ・電車内でのメイクはけしからん

 ・メイク道具が汚いのはけしからん

 ・つけまつげは役に立たないので、けしからん

 ・女性が電車内で会話すると、うるさいのでけしからん

 

と、日ごろ「けしからん」と思っていることを次々と挙げていきました。

 

電車内のマナーなど指摘されて然るべきことも含まれていますが、「茶髪にするのは、紅毛碧眼への憧憬から」「ゾウやキリンのまつ毛が長いのは砂漠で目に異物が混入するのを防ぐためであって、日本人には必要ない」などツッコミどころ満載……いやいや、ツケマ好きの女性たちはゾウやキリンの真似をしているわけじゃないですから! 

 

また女性が髪をカラーリングすることで、その医師に何か迷惑がかかっているのでしょうか。「緑の黒髪とか、髪はカラスの濡れ羽色とかいわれた黒髪こそ、日本人の誇り」という“俺の価値観”が侵害されたといわれても、知ったことではございません。

 

 

■「男性=のぞきたい動物」と断言

 

おそらく60年近くにわたって医療の現場で女性と向き合ってきた男性医師が、シンポジウムという貴重な場で話したかったのが、言葉を選ばずにいえば、こんなどーでもいいことだったとは……という失笑が会場のあちこちから起きていました。

 

が、笑って済ませられないのが冒頭で紹介した、「スカートが短いのはけしからん!」です。というのも、以下のようにつづくからです。

 

・昨今、ヒザ上20cmほどの短いスカートを穿いている若い女性が目立つ

・エスカレーターなどでは下からのぞかれるのを気にしてか、しきりにスカートを引っ張る

・引っ張るくらいなら、丈の長いスカートを穿くべきである

・なぜなら、男性は本来「のぞきたい」動物だから。下着の色、デザインなどを想像し、時には苦心して写真を隠し撮りしたくなる

・男性は女性と異なり、性衝動のコントロールがむずかしい動物的存在であるがゆえに、ミニスカの女性を見ると学歴や職業とは関係なく罪を犯して、新聞紙上で報じられることになってしまう

 

つまり、男性が性犯罪を犯すのは「女性のせい」であるというわけです。

 

ここしばらくはヒザ下~ロングスカートの流行が続いているので、そこまでミニスカートの女性はあまり見かけないように思うのですが、数が少ないから目立つのでしょうか。それとも、この医師がよほどミニスカを気にしているので、否応なく目で追ってしまうのでしょうか。

 

 

■男性産婦人科医が診てきた「女性の心身」とは何だったのか

 

という邪推はさておき、女性のスカートの中を盗撮するのは立派な性犯罪です。女性が性犯罪の被害に合うと「夜道を歩いていたから」「露出の多い服を着ていたから」「用心していなかったから」「本気で拒否しなかったから」など、女性の自己責任であるという声が必ずといっていいほど出てきます。

 

好きな服を着ていたり、帰り道がたまたま街灯の少ない道だったり、恐怖のあまり身体が凍りついて抵抗できなかったりといったことが女性の“落ち度”であるはずもありません。たとえ女性に何らかの落ち度や不注意があったとしても、それが「暴力を振るっていい」理由にはなりません。

 

こんな話が、女性の心と身体と向き合ってきたはずの産婦人科医から出てくること自体に驚きを禁じえませんでした。人前で堂々とお話になるくらいですから、よほど自信のあるお説なのでしょう。医師として疾患や不調から守ってきたはずの女性の心身が、「スカートが短い」とだけで危険にさらされることをこの医師は「それも当然のこと」「いや、むしろ女性が悪い」としました。彼にとって、半世紀以上も診てきた女性の心身とは何だったのでしょう。

 

 

■男性の理性、全否定されていますよ。

 

また、こうした論には男性も怒っていいはずです。男性とは、自分の欲望をコントロールすることが不可能で、女性のパンツがチラッと見えただけで理性が吹っ飛び、反社会的な行動に出て見ず知らずの女性を傷つける“動物”である……という決めつけに同意できない人も少なくないでしょう。

 

とはいえ、「自分たちは欲望を理性によってコントロールできる。けど、それができない男性がいるのは、女性のせいだ」とする男性もまた、多いと感じます。これでは、この医師と五十歩百歩。「自分たちは欲望を理性によってコントロールできる。けど、それができない男性の欲望について同じ男性として考え、解決策を講じよう」とまで思ってくれる男性がもっと増えてくれれば、女性も少しは安心できるのですが。

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三浦ゆえ

三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~...

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