インディ500ウイナー佐藤琢磨を待ち受けていた「殺人的スケジュール」

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世界三大自動車レースのひとつに数えられる「インディ500」で、日本人として初めて優勝した佐藤琢磨は、「実感が湧かない」とレース終了直後にコメントしていた。夢見心地はしばらく続いたに違いない。実際問題、殺人的なスケジュールが琢磨を待ち構えており、快挙を成し遂げた実感に浸る余裕などなかっただろう。


レースが終わったのは5月28日(日)の夕方である。0.2011秒差のトップでチェッカードフラッグを受けた琢磨は、そのままの流れで優勝セレモニーをこなし、オープンカーに同乗して優勝パレードを行った。


それが済むと、チームメンバーと横一列に並んで、コースの一部に埋め込まれたレンガにキスをするセレモニーを実施。インディ500の舞台であるインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)がオープンした20世紀初頭、コースがレンガ舗装だった証拠をあえて残しているのだ。全面レンガ敷だったがゆえ、IMSは「ブリックヤード」の愛称で呼ばれている。


勝利の翌日、すなわち5月29日(月)は、朝からそのブリックヤードで撮影会だ。ポーズを変え、一緒に写るメンツを変え、被るキャップを変え、笑顔を絶やさず、ひたすら被写体に徹する。午後は記者会見などのメディア対応を行った。

 

5月29日にはビクトリー・セレブレーション(表彰パーティー)に出席

その日の夕方、タキシードに着替えた琢磨はビクトリー・セレブレーション(表彰パーティー)に出席した。もちろん、主役は琢磨である。パーティーの席上で、245万8129ドル(約2億7000万円)の獲得賞金が発表された。「何だか急に友だちが増えた気がする。高額面の小切手を手にしたからだと思うけど」と琢磨はジョークを飛ばし、会場を沸かせた。


パーティーはたっぷり数時間つづく。すぐにでもベッドに倒れ込みたいところだったろうが、インディ500ウィナーを放っては置かない。その日のうちにニューヨークに移動。翌日、5月30日(火)はNASDAQ証券取引所で始業の鐘を鳴らし(たということは朝早いということだ)、多数のメディアの取材を受け、ラジオ番組やテレビ番組に出演し、エンパイアステートビルの屋上に上って記念撮影し、最上階のバーで乾杯した。

 

多数のテレビ番組、ラジオ番組の取材を受けた

5月31日(水)はテキサス州ダラスへ移動。2週間後に行われるテキサス戦のプロモーションで、アメリカンフットボール(NFL)チームのダラス・カウボーイズの本拠地を訪れ、選手と記念撮影を行ったりした。これにて長いメディアツアーは終了。


してもらわなくては困るわけで、6月2日(金)はデトロイトで次のレースの練習走行が始まるからである。しかも、ダブルヘッダーだ。6月3日(土)の予選を3番手、決勝レースを8位で終えた琢磨は、6月4日(日)に行われた第2レースに向けた予選で、2014年のデトロイト戦以来となる3年ぶりのポールポジション(通算6回目)を獲得した。


タフとしか言いようがないし、インディ500の優勝をきっかけに、ノってきたようにも見える。レースは4位に終わったが、ポイントランキングでは僅差の3位につけており、年間チャンピオンを狙える位置につけている。

 

5月30日(火)はNASDAQ証券取引所で始業の鐘を鳴らした

■本人はいないが、日本も盛り上がっていた!


佐藤琢磨のスケジュールには影響を与えないが、琢磨がインディ500に優勝してからというもの、日本も祝賀行事で大いに盛り上がった。ホンダの本社1階にある「Hondaウエルカムプラザ青山」では、琢磨のインディ500優勝を記念して、5月31日から「インディ500制覇お祝いパネル」を設置された(6月23日まで)。6月3日からはメッセージを書き込むことができるフラッグが登場している。


グリコも話題を集めた。大阪・道頓堀といえば、江崎グリコの電子看板が観光スポットとして有名だが、琢磨をスポンサードする同社は6月1日から7日まで、日没から24時まで15分おきに、琢磨のスペシャル映像(60秒)を流した。


優勝を決めた直後にマシンに乗り、両手を天に向かって突き上げたポーズも上映されたが、これがグリコのおなじみのポーズとそっくり。「左足を上げたら完璧」のツイートに対し、「今度やってみる笑」と返した。琢磨のスペシャル映像は、渋谷駅前のスクランブル交差点にあるグリコビジョンでも上映された。


6月7日の各紙朝刊にはホンダがカラーの全面広告を出稿した。いわく、

 


私たちは、佐藤琢磨選手とともに走り続けてこられたことを、
心より幸せに思う。
これからも、次の勝利を目指して走るその姿を応援し続ける。


佐藤琢磨選手、
優勝おめでとう。
そして、ありがとう。


と。琢磨フィーバー、まだまだ続きそうである。
 

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世良耕太

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全...

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