地図は自分で差し替え!? カーナビ黎明期に登場したおもしろナビたち

ライフスタイル

&GP

 

地図の自動更新、交通情報や気象情報を反映した最適なルート案内、スマートフォンとの連携、メールなどの音声入力…。カーナビの進化はとどまるところを知りません。また、スマートフォンのカーナビアプリも優秀で「本当にこれが無料でいいの!?」と思ってしまうほど。

 

目的地を入力すれば最適ルートを正確に案内してくれるカーナビゲーションシステム。一方通行が多く、細い道が入り組んでいる住宅街でも正確に案内する。カーナビがこれだけ進化したのは、そんな日本の道路事情が関係しているとも言われています。今後は来るべき自動運転社会に向け、詳細な三次元マップを使ったカーナビゲーションが登場するはず。

 

私たちがごくごく当たり前に使っているカーナビですが、ここまで進化するまでには技術者の試行錯誤や苦労がたくさんありました。今回は市販車に搭載された初期のカーナビの歴史を紐解いてみましょう。

 

 

■世界初のカーナビは、地図を手動で取り替えた

 

▲「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」が搭載された2代目ホンダアコード

道路地図を本や冊子ではなく画面で見る装置が初めて登場したのは1981年。ホンダが9月にフルモデルチェンジしたアコードに世界初搭載した「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」です。クルマに移動方向を検知するガスレートジャイロと方向センサーを搭載し、16ビットマイクロコンピューターが移動方向と移動量を計算。それを画面に表示するというものでした。

 

これだけ聞くと「なんだ、今のカーナビと変わらないじゃん」と感じるかもしれないですね。しかしこの表示方法に技術者の苦悩とアイデアを感じざるをえません。ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータの画面はなんとブラウン管。そして画面に道路地図が印刷されたセルロイドシートを載せて、画面に表示されるポイントと合成して使うというものでした。当然、走っている場所が変われば、手動でセルロイドシートを差し替えなくてはなりません。

 

▲「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」で使用された地図のセルロイドシート

ちなみに当時のプレスリリースを見てみると、まだカーナビゲーションシステムという言葉は使われておらず、「自動車専用の慣性航法装置」という表現が使われています。開発の狙いは「こんにちの道路交通状況が幹線を中心に混雑し、渋滞路などでの無駄な燃料消費、運転者の体力や神経の消耗、さらには時間的ロスなど多くのエネルギーロスを強いられている現状をかんがみて着手したもので、自動車及び運転者のエネルギーロスを未然に防ぎ、総合的な移動効率の向上に役立てるとともに地理に疎い人や未知の道路、夜間の走行などが安心して出来るなど、自動車の機能をより拡大する新しい使い方の創造を可能とするためのものである」と書かれています。

 

現在のカーナビを知っていると信じられないほどアナログなシステムですが、当時の人は度肝を抜かれたはず。ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは「第8回電気技術顕彰『でんきの礎(いしずえ)』」の受賞(2015年)や、米国に本部を置く、電気・電子・情報・通信分野における世界最大の学会『IEEE』で「IEEEマイルストーン」に認定(2017年)されるなど、その功績が評価されています。

 

 

■地図が表示されず方位を指すだけのシステムもあった

 

ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータが登場する数ヶ月前、トヨタと日産が別のアプローチでカーナビの元祖(?)的な機構を発表しました。

 

トヨタは1981年7月に登場したセリカXXに、地磁気センサーで検出した方位角と車速センサーから算出した走行距離を使い、目的地の方位や目的地到達度などを表示する「ナビコン」を搭載。

 

▲ドライブガイドシステムが搭載された日産スカイライン(R30型)

1981年8月には日産が方位センサーとマイクロコンピュータの処理により、メーター内に目的地の方向と残り直線距離を表示する「ドライブガイドシステム」をR30型スカイラインにオプション設定しました。ちなみに目的地の設定は住所検索などではなく「南へ15km」など、地図を見て目的地までの方角と距離を入力するものでした。

 

▲ドライブガイドシステムの表示部(中央の車体イラスト)

 

▲ドライブガイドシステムの操作部

どちらも地図ではなく単に目的地の方角を指すだけですが、それでも地図を見ながら目的地まで走るのが当たり前だった時代には画期的な装備だったはずです。新しモノ好きの人がこぞって飛び付いたでしょうね。

 

1986年1月には2代目ソアラがROMカセットに収録された高速道路地図をカラーディスプレイに表示する「エレクトロマルチビジョンシステム」を搭載。1987年9月にはクラウンが自立航法でCD-ROMに収録された地図をディスプレイに表示する「エレクトロマルチビジョン」を搭載しました。そして1989年8月には日産シーマに進行方向が上になる地図を表示する「マルチAVシステム」が搭載されました。

 

 

■90年代、GPSカーナビ搭載モデルが登場

 

▲世界初のGPSナビを搭載したマツダユーノスコスモ

 

ちなみにこれまで紹介したカーナビは、GPSは利用していません。GPSカーナビは1985年に三菱電機が東京モーターショーでプロトタイプを公開。その後、1990年4月にバブルを象徴するモデルのひとつであるマツダユーノスコスモが世界で初めてGPSカーナビを搭載しました。これは三菱電機と共同開発したものになります。

 

▲ユーノスコスモのインテリア。インパネ中央にあるのがナビ

さらに1990年8月には「ホンダ・ナビゲーションシステム」がオプション設定されたホンダレジェンドが登場。参照したいエリアの地図を呼び出せたり、施設を検索できる機能が搭載されました。

 

▲「ホンダ・ナビゲーションシステム」を搭載した2代目ホンダレジェンド

 

▲「ホンダ・ナビゲーションシステム」のナビ画面

GPSや信号の処理精度などが現在ほど高くなく(さらに軍事的な理由で意図的に誤差を生じさせていた)、東名高速を走っているのにマップ上ではクルマが海を走っているということがたびたびありました。また、この時点ではまだ目的地を設定しても、ナビ上では目的地の方向と距離が表示されるだけでした。

 

1991年10月。9代目トヨタクラウンにルート案内機能がついた「GPSエレクトロマルチビジョン」を世界初搭載します。さらに1992年8月には初代セルシオのマイナーチェンジでGPSエレクトロマルチビジョンに音声案内機能を搭載しました。この時点で主要交差点ではきちんと交差点名を音声案内。現代のカーナビに近い機能が実現したのです。

 

2017年6月1日、日本の準天頂衛星「みちびき」2号機が打ち上げられました。今年度中にはみちびき3号機、みちびき4号機の打ち上げも予定されており、2018年度から正式な運用が始まります。みちびきがGPSの精度を補い、今後は誤差数センチという高精度なナビゲーションが可能になると言われています。技術の進歩に驚くばかりですね。

 

▲みちびき2号CG画像(出典:qzss.go.jp)

 

(取材・文/高橋 満<ブリッジマン>)

この記事が気に入ったらいいね!しよう

&GPの人気記事をお届けします

&GP

&GP

&GP(アンドジーピー)は雑誌Goods Press(グッズプレス)がプロデュースする 家電、デジタル、スマホ、IT、クルマや乗り物、時計、靴、鞄、アウトドアなどの最新ギア、 how to、注目したい人物を紹介するwebメディ...

&GPのプロフィール
ページトップ