人手不足の今だからこそ、男性派遣社員は正社員をめざすべき理由

ビジネス

後藤百合子

人手不足の今だからこそ、男性派遣社員は正社員をめざすべき理由

■人手不足で増える工場派遣労働者
労働者派遣法改正案が国会にまた提出されています。法案そのものの是非についてはいろいろな議論があると思いますが、派遣労働者の総数は2013年7月期から再び増加傾向にあり、特に、北関東・甲信地域では昨年以降、リーマンショック以前の2008年を上回る数で推移しています。 

 

最も伸び率が顕著なのは一般事務職ですが、製造の派遣労働者も増加しており、上記の統計では、2014年末で2008年の約2倍となっています。アベノミクスにより経済全体に動きが出てきたのと、団塊世代の退職により労働人口が絶対的に減少しているのが相まって、最近の中小企業経営者の間では、どの業界でも「人手不足」の話題でもちきり。特にサービス業や製造業では、深刻さの度合いが増しています。

 

■空前の売り手市場の今こそ、正社員をめざす
企業が人手不足に悩むということは、働く人にとっては「売り手市場」だということです。実際、今年の春の大学生の就職率は97年の調査開始以降、リーマンショック直前の2008年春についで史上2番目の高水準の97.5%だそう。「就職氷河期」という言葉が遠い昔のことに思えるほど、新卒人気は高まっています。

 

同様に、中途採用でも企業の採用意欲は旺盛で、有効求人倍率はじわじわと上がっており、4月の有効求人倍率は1.17倍となっています。逆に、完全失業率は3.3%と3月に比べても0.1%下がっています。

 

景気は変動しますし、それにつれて企業の採用意欲も上下しますので、売り手市場の今こそ、派遣社員が正社員の職を獲得する絶好の機会といえると思います。

 

 

■派遣と正社員では正社員の給料はがくっと下がる

しかし、現状、派遣で働いている人たちの最大のネックは給料でしょう。

 

関東・東海地域の男性対象と思われる工場派遣の求人をみていると、だいたい時給が1,300~1,400円程度から。未経験でも1日8時間、週5日働けば額面で20万円~25万円程度になるように設定されています。

 

しかし、これが正社員となると月給16万円くらいからにがくっと下がります。上限は45万円などというのもあるのですが、その仕事に必要な資格をいくつももっているなど、よほどの実力か夜勤シフトなどの重労働がなければ不可能でしょう。未経験で専門知識もなければ、正社員はまず高卒程度の月給から始めるケースがほとんどといえると思います。

 

■正社員より時給が高いのに、なぜ企業は派遣社員を雇うのか?
男性派遣社員の時給が1,300円の場合、受け入れ企業はだいたい1,800円~2,000円程度の時給を派遣会社に支払います。仮に1,800円としても、8時間/日×20日/月で28万8,000円。高卒男性社員の初任給が16万円とすると、派遣社員にかかるコストは正社員の1.8倍もの金額になります。

 

しかし、この正社員の給料に、社会保険料や、雇用保険料、労災保険料(約15%)、交通費(仮に1万円とします)、ボーナス(仮に4か月として月あたり0.33か月分)を足すと、25万4,720円となり(実際にはボーナスの保険料率は低いのでこれより若干下がります)、派遣労働者との差はたった3万3,280円/月に。さらに、正社員にはこれ以外に教育費用がかかりますし、有給休暇や福利厚生費費、退職金積み立てなども必要ですので、実際には派遣社員に時給1,800円払っても、新卒社員にかかるコストとほとんど変わらないのが実情です。

 

さらに、派遣社員の場合は景気が悪くなって受注が減れば契約を打ち切りることができますが、正社員は簡単にリストラするわけにはいきませんので、不況時で仕事がないのに給与を払うコストも考えに入れれば、「派遣のほうが安い」という計算になるのです。

 

 

■月給20万円の正社員に企業が支払うコストは時給2,000円

このように、企業にとっては月給16万円(時給1,000円)の新卒社員も、時給1,300円(実際に企業が支払うのは時給1,800円)の派遣社員もコスト的にはほとんど変わらないのですが、実際に派遣で働いて給料をもらっている人たちはそうは思わないことが多いようです。

 

その結果、時給1,300円で1日8時間、月20日労働で20万8,000円になるので、正社員でも「20万円以上」の仕事を探してしまうのです。しかし、月給20万円の正社員を上記の計算方法で計算すると、企業にかかるコストは月31万5,900円、時給換算すると約2,000円となり、派遣会社に支払う金額よりも高くなってしまいます。高い知識やスキルがあれば別ですが、未経験でゼロから教育しなければならないとなれば、この給料は高すぎると感じる経営者は多いでしょう。

 

我が社でも生産管理等、数年以上の経験者を対象に月給20万円以上で何度か正社員を募集したことがありますが、応募してくる方は40代以上、未経験の派遣社員経験者が非常に多く、ほとんどの方は書類審査だけでお断りしていました。

 

■スタート時の月給が新卒並みでも正社員のほうが最終的には得をする
いっぽう、正社員ではスタート時の給料こそ低いものの、教育や福利厚生など直接的なメリットは大きくなります。また、リーマンショック後の不況時でも、派遣社員の多くは派遣切りなどで失職したにもかかわらず、正社員では雇用調整助成金などを活用してほとんどの企業が雇用を維持しました。さらに、アベノミクス以降は中小企業でも、スキルはあまり上がっていなくても定期昇給をする会社が増えてきていますし、一つの職場でじっくり腰を落ち着けて仕事をすれば、否が応でも着実に仕事のスキルは上がってくるものです。

 

もしも現在の自分のスキルに自信がなく、将来の雇用に不安があるのであれば、今もらっている給与レベルを数万円落としても正社員の職を探すべきだと私は思います。特に40代、50代で長年派遣社員をされている方は、現在のアベノミクス景気がひょっとしたら最後のチャンスになってしまうかもしれません。中高年の社員は新卒に比べ、やはり新しい知識や技能を吸収するのに時間がかかることが多いので、できるだけ早く行動を起こすことが大切だと思います。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

後藤百合子

大正5年創立、今年で100周年を迎える繊維会社の4代目社長。 日本語、英語、中国語(北京語と広東語)のトライリンガル。現在、シンガポールでも会社を経営中。 ツイッターアカウントは@sinlife2010

後藤百合子のプロフィール&記事一覧
ページトップ