「結局、女なんてバカ」に固定する、マスコミ男性社会の罪

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「結局、女なんてバカ」に固定する、マスコミ男性社会の罪

女性活躍推進の号令のもと、2020年を至近目標に様々な政策や企画が走っている。女性活躍推進を進める行政の一端、あるいはマスコミの一端にいながら、「女性活躍推進」の言葉を巷のあちこちで耳目にするにつれ、そのワードへの認識が広まったことを実感する日々だ。

 

でも、そんな勢いに乗った女性活躍推進へのバックラッシュとして、ぬぐいがたい「だけどしょせん女なんて」の声もまた、そこかしこで耳にするのだ。

 

一度自宅に帰ったらジャージ姿でお笑い観ながらラーメンにビールが至福という、もっさり丸まったオーバー40のBBA生活を送る私だが、カッコつけているわけでも尖ったふりをするわけでもなく、「女性向け」と銘打たれたようなサイトの記事を、まず読まない。女性ゴシップ誌も読まない。主婦向けカテゴリの日中の帯番組も観ない。単純に、それらには興味がなくて他の(同じように『気軽』で『くだらない』けれど私は大好きな)メディアで情報を得る習慣だからだ。で、たまに「女性向けメディア」を目にすると驚く。

 

「有用な情報が山盛りじゃないか!……いかに日本のマスコミが『しょせん世間の女なんて(主婦なんて)この程度のもので喜ぶんだろう』と思ってコンテンツを制作しているか、の調査サンプルとして!」

 

安くて見栄えのいい「人に自慢できる」何かしらのノウハウとか、誰と誰がくっついたとか別れたとか出産したとか不倫だとか、いじめとかママ友のナントカとか、「あんな立派そうな人の裏の顔」とか「なんか最近ちやほやされてる『やり手の女』がムカつくから褒めるふりして足を引っ張る情報」とか、皇室とかダイエットとか通販とか。

 

なにそれ、昭和のまんまじゃん! 戦後脈々と受け継がれる、「女が興味持つものなんてそんな程度」のオンパレードじゃん! マスコミ何一つ成長してないんじゃん!? えっ、「成長してないのは読者/視聴者の側だ」だって?

 

 

視聴率低下にあえぐテレビ局が、女性視聴者をターゲットにした番組を制作しようとアンケート調査をしたら「女性の興味がみんな結局そんな結果だった、女性なんて結局そんなものなんだと愕然とした」とこぼすのを耳にした。

 

いや、それは、

 

(1)あなたの局が、またはいまの地上波テレビがそういう「いまだにテレビで情報収集する」視聴者のプールを相手にしていて、「テレビ外の世界」にいるいろいろな場所のいろいろな女を知らないから

 

(2)それにそういう視聴者はご自身(テレビ)が数十年手塩にかけて育ててこられたんですよね

 

(3)あるいは世間がテレビに求めているものはそんなものに過ぎないという、メディア選好による淘汰なのかもしれませんよ

 

という言葉を飲み込んで聞いた。オーディエンスをバカにしている制作者の姿は、オーディエンス側から丸見えだ。「その程度だろ」と思ってコンテンツ作りをする場所には「その程度」のオーディエンスしか残らない。

 

電波だろうが紙だろうが、心あるメディア人は読者/視聴者を育てる試みをしてきたはずなのだ。しかし「読者/視聴者育成」なんてのは文化育成だから、そんな簡単には数字に直結しないし、短期的にわかりやすい劇的な結果が出ない。「スピード」を言い訳に哲学よりも目先の利益利便性でコンテンツ作りを行うタイプのマスコミにとっては、それゆえに女性読者/視聴者はむしろそのままの姿、価値観で、とにかく数さえ多くいてくれれば都合が良かった。その意味でも、女性という領域は先進国日本がどこか意図的な怠慢さで手付かずに残してきたもの、最後の資源なのだ。

 

 

いみじくも、メディア側にいる女性の間から、そんなメディアのあり方に疑問を持つ声が上がってきている。

 

「ママタレと呼ばれる女性たちが日に日に増えていく芸能界で、彼女たちをネタにした記事も増える一方です。妊娠で太った、出産でやせた、育児で疲れている、言動がおかしい、ノイローゼ気味だ小さい子を連れて暑い中(寒い中)外出している……などなど。

 

でも経験者が読めば、

 

『妊婦になればいくら元モデルだって太るだろう』

 

『いや、出産で痩せるとかって、それフツウのことだから……』

 

『育児で疲れてノイローゼ気味なんてよく言ったもんだ、疲れて当たり前だっ!』

 

とスルーする内容だったりするわけです。育児疲れによるノイローゼでも、妊婦になって劇太りした姿を世間に晒された後でも、美しく華麗に表舞台に復帰する頑張り屋の姿やプロ根性としては描かれずに意地悪な視線で叩かれる。

 

女性政治家にもいろいろ泥がつきます。グラドル出身だとか、有力者への媚や癒着だとか、『たらし』だとか……。実力を好意的に評価される女性政治家なんて一人もいません。

 

こういうとんちんかんな記事が平気で世の中に露出してくるのは、この手のトピックを取り上げたり執筆したりするのが、やはり、男だから、なんじゃないだろうかと思うわけです。出産や育児やあるいは、教育、ママ友問題なんか実際に見たことも聞いたこともない独身男子か、女性活躍など本音では一ミリも興味などなく、家事育児も奥様に任せきりなオジサマか。どちらも、たちが悪いですが……」

 

ウェブは、新聞よりも雑誌よりもテレビよりもさらに加速したスピードを要求されるメディアだ。そこに生息する制作者が、スピードに目を眩まされてオールドメディアの轍を踏み、「その程度だろ」の姿勢で書いていたら、ウェブも結局、いつまでたっても「その程度」でしかないだろう。「その程度以上」の女性読者、視聴者がいまどこにいて、何を考えているのか。ひょっとしたら非常に男性的なメディアの片隅で、モノセクシュアルな世界観にため息をつきつつ、片目をつぶりながら情報を集めているかもしれない。

 

政治も経済も家事と同じ当然のレベルで興味があり、実践し、統計データや論理構築に親しみ、もちろん感情や共感といった女性界の通貨も豊富に持っている女性読者/視聴者は、確実に存在する。そんな彼女たちに向けた言葉と視点を手に入れているメディアが、「オールドメディアの外」に住む彼女たちを獲得する、あるいはすでに手にし始めているのかもしれない。

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コラムニスト

河崎 環

河崎環(かわさきたまき)/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭学園中高から転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Web...

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