魅力なのか詐欺なのか!? 「人たらし」な男にはまる女たち

人間関係

 

先日、覚醒剤で逮捕された高知東生容疑者について、周辺からは「生来の人たらしだった」という声が出ている。「人誑し」とは、本来は人を騙す人間のことを指すが、一般的には「愛嬌があって憎めないタイプ」「なんだかわからないけど魅力がある人」として使うことが多い言葉かもしれない。確かにこういう男はいる。

 

人たらしという言葉は、女性には使わない。どちらかというと強面で厳格なタイプの男性が、にこっと笑うと非常に愛嬌があって魅力的なときに使う。俳優の緒形拳さんが亡くなったとき、「彼は本当の意味で人たらしだった」と使われ、この言葉がいいイメージを持った。日頃は決して饒舌ではなく、真摯に役に取り組み、だが自分がどうしても譲れないときに魅力的な笑顔で人を説得してしまう。そんな「深い魅力」を言い当てた表現だと思う。

一方で、「軽いチャラ男」にも使われることがある。ただ軽いわけではなくて、なんとなく自分の雰囲気に巻き込んでしまうという意味があるのだろうが、こういう男性は女性にとって危険だ。

 

 

■「軽いけど悪い人ではない」という魅力

 

「こういう男とつきあったことありますよ。結婚詐欺一歩手前でした」

マサコさん(36歳)は苦々しい顔でそう言う。7年前、仕事関係で出会った1つ年下の男がそうだった。彼女が映画が好きだというと、早速、映画デートに誘われた。車で送り迎えをしてくれ、しゃれたレストランを予約しておいてくれた。いつの間に買ったのか帰りには花束をくれ、「花を抱くきみを見たかった」とキザなセリフを吐いた。

「いちいち女心のツボにはまるというか。ちょうど前の彼にひどいフラれ方をしたので、この人なら私のことを大事にしてくれるかもと思ってしまったんですよ」

 

ひとり暮らしの彼女が風邪を引いたといえば、すぐに家に来ておかゆを作ってくれたり洗濯をしてくれたり。恥ずかしがる彼女の身体を拭いてくれたりもした。

「恥ずかしがることはないよ。他人じゃないんだから」

「こうやって一緒に暮らしていきたいね」

彼女の身の回りの世話をしながら、実質的なプロポーズと思える言葉も多々口にした。

彼女がすっかり心を許したころ、彼が別れを口にした。

「私には別れる気なんてないから、どうしてと尋ねたら、田舎の母親がガンになったと。家や土地、有価証券はたくさんあるけど、オレは現金を持たないほうがいいと言っていたから高額医療費を払えない。これから自分ももうひとつ仕事をして母親にいい医療を受けさせたい。時間がなくなるから会えないと思うって。今ならおかしな話だと思うけど、当時はすっかり真に受けて、それならと彼に200万円を渡してしまったんです。どうせ結婚するんだしという気持ちもあった」

受け取った彼は涙を流して喜んでくれたという。

 

それからもつきあいは続いた。彼女が仕事で悩むと彼はいつでも真摯に聞いてくれたし、会いたいと言えば駆けつけてくれた。

「私の父が倒れたときは、いつも私を車で病院まで連れていってくれたし、父が退院するときも車を出して実家まで父を連れ帰り、家の中のことまで手伝ってくれました。母もすっかり彼のファンになって……。ただひとり、弟が『あの男はなんだかうさんくさい』と言っていましたが」

 

彼があまりにいろいろやってくれるので、貸したお金のことは言えなくなっていた。つきあって1年たったころ、彼に別に女がいるという噂を聞いた。

「それを問いただすと泣くんです。『オレがきみ以外の女性に心惹かれるはずがないじゃないか』って。ぼろぼろ涙を流してしがみついてくるから、ついこっちが悪いことを言ったような気持ちになってしまう」

だが、結果的に彼は三股をかけていた。それがわかると、彼とは連絡がとれなくなった。仕事も辞めていたという。

「あとからお金持ちのお嬢さんと結婚したと聞きました。ただ、数年で別れたみたいですが。ああいう男はまた別の女性を見つけてうまいことやっていくんじゃないでしょうか」

 

 

■愛憎相半ばする思い

 

結局、彼からは半分の100万円しか戻ってこなかった。今、冷静になったマサコさんは言う。

「お金と浮気のこと以外は、本当にいい人なんですよ。お金だって半分は返ってきているので、だまし取るつもりがあったのかなかったのかわからない。つきあっている間は本当に大切にしてもらったという思い出もある。結局、彼は私とつきあいながらも、自分にとってもっと得な関係を探していたんでしょうね」

今も彼の笑顔を思い出すと、愛情と憎しみが同時にわいてくるのだという。

 

結婚後、夫の浮気にさんざん苦しめられているのに、憎みきれずに別れられない女性がいる。もちろん、夫を好きならそれはそれでしかたがないのだが、彼女の話はいつも夫の愚痴ばかりでとても楽しそうに生きているとは言えず、友人たちも彼女から離れつつある。

だがそういう男はおそらく、マサコさんの彼のようなタイプなのだろう。ヤキモキさせられ、浮気が発覚するたびに夫が土下座して謝り、自分への愛を誓ってくれる。しばらくは大事にもしてくれる。だが浮気はやまない。結局、妻は常に不安定な関係にさらされているから、「自分は夫を愛しているのだと勘違いさせられてしまう」のではないだろうか。

 

人として他者に深い理解と共感をもつことと、自分が嫌われないために愛想よくすることとは違う。後者の「エセ人たらし」には気をつけたほうがいいかもしれない。

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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