3児の母がズバリ指摘!「おとう飯(はん)キャンペーン」が炎上したワケ

ライフスタイル

藤原 千秋

 

「“おとう飯(はん)”……またダジャレか……。」


6月12日に発表された、内閣府男女共同参画局の「“おとう飯(はん)”始めよう」キャンペーン。その報道を翌13日の朝、つけっぱなしだったテレビでチラ見した筆者(成長期の豚児3人を抱える働く母)は、「ダジャレか」以上の感慨を抱くことなくテレビを消し、仕事に出た。正直、さほどの印象的も残らなかったので、そのままこの件は忘却していた。なので、本稿の依頼をもらうまで実情をまったく知らなかった。

 

 

■飯炊きの「待ったなし感」がなさすぎる

 

そこで付け焼き刃的に、これ「『“おとう飯”始めよう』キャンペーンの実施について」(内閣府男女共同参画局)とか、これ「『おとう飯』キャンペーンって何? 『夫も料理を』への風当たり」(J-CASTニュース)とか、このあたり「『パパ、手抜きでいいからメシ作れ』って励まされても...政府の『おとう飯』推し、色々ズレてる気がする」(ハフポスト)の記事を読み、概要を把握。で、まあ燃えたと聞けば、「なんだかなぁ〜」「まあ、そりゃそうだろな〜」というのが、率直な感想だった。

 

別にダジャレだから悪いというわけではない。お役所のキャンペーンやプロジェクト名に、こうしたダジャレ(おとう飯)ないし謎の略称(イクメン)あるいは意味深な横文字(SHINE!)が多用されるのはなぜだ? というそもそも的な問いはあるが、じゃあそれ以外に案があるのかと言われれば別にない。
 

ないんだけど、なんだろうか、この微妙に軽んじられている感……。言語化が難しい。たとえばあのポップな書体で綴られている、このキャンペーンのコピーからにじみ出る、リアリティの絶望的な欠如をどう表現したらよいのだろう。そこには、子育て中の日々の飯炊きにかかる「待ったなし感」「必死さ」はない。

 


■豚ひき肉1キロ、コメ20キロが「瞬殺」

まず「おとう飯(はん)」でも「おかあ飯(はん)」でもなんでもいいけれど、子育て中のご飯作りの負担感はとにかく半端ないということを現場からは強く言ってみたい、と思った。

 

さかのぼれば、三度三度どころか日に8~10回にものぼる授乳、授乳に加えての離乳食作り、それらを与えることに果てしない時間、手間暇がかかり……。か・ら・の、豚ひき肉1キロが一食で消え、目の覚めるようなスピードで20キロのコメが消える事態(筆者の現況)!

 

そこまでが一続きのノンストップ育児だ。よほどのことがない限り1日たりとも休めない、そういう必死な感じがあのコピーからはどうも伝わらない。立派な料理がーとか、見てくれがどーとか、言っていられることに、あまりリアリティは感じられない。とにかく作っては食べさせ、作りきれなければ買ってきて、足りなければ袋ラーメンを茹でて食わせ、積み上がる食器、尽きるコメ、うなぎのぼる食費、止まらない「ご飯まだぁ?」のユニゾン、に応えて作って、作って、作って……。
 


■「手間かけなくていい」と真っ先に伝える相手は…


つまり、率直に言うと「ぶっちゃけ実際毎日ご飯作っている人って、この発案に関わってないでしょ〜?」と思えてしまうのだ。めっちゃ当事者ジャナイ感。超「ニワカ感」……が、かのコピーからそこはかとなくどうしようもなくあらわれ出ている。気がする。そしてあの「“おとう飯”なら、いいんです!」の、「なら」が示す許諾のニュアンス、そのほんのり「上から目線」感……。

 

そう、この「なら」のおかげで、「おとう」のみならず「おかあ」の立場も微妙になった。で、返す刀で、当然複雑で手間かけた見目麗しい飯を作るのが“おかあ飯”だと言われているも同然なわけなのだけれど、えええ……ええ…………そうなの……? 複雑で手間かけた見目麗しい飯を作るおとうさんはどうなの? そういう人にはちょっと失礼だったりしないの?


作るのが誰でも、食べるのがどこでも、「美味しいご飯」の場に欠かせないのは、オーガニックで高価な材料でも細やかな手間でもない。ご飯を「美味しい」と感じられる、作る人、食べる人、皆の「心のゆとり」以外にない、と筆者は思うが、どうだろうか。
 

「ちゃんと作らなきゃ」というプレッシャーを排除したい――。そんなキャンペーンの意図が筆者の考えとまるで合致しないわけではない。ただ、「簡単でいい」「手間をかけなくていい」と先に伝える相手は、もっと他にいたのではないだろうか。そう思えてならない。

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藤原 千秋

大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主に住宅、家事まわりの記事執筆を専門とするライター・アドバイザー&コラムニストとして活動。著・監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新...

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