ボヤキも意図があってのこと。組織に役立つノムさんの言葉。 「叱っていい人」と「そうでない人」の差は?

人間関係

ダ・ヴィンチニュース

日本で国民的スポーツとして人気を博してきた野球。「トップバッターは誰だ?」「代打を頼む」「うちの四番です」――。思えば「十八番」など多くの歌舞伎用語が私たちの日常に浸透しているように、長年親しまれてきた野球も、その用語が一般社会でも使われている。

 

野球には、スポーツを超えた“組織論”や“リーダー哲学”といった、ビジネスの世界に通じるメソッドが詰まっている。繰り広げられる試合は、“ドラマ”に満ちているだけでなく、時に見る者の“人生”に重なり、チームプレーはあらゆる組織に通じる。

 

エースがマウンドで孤軍奮闘していたかと思えば、仲間が必死に食らいついてピンチを救い、局面を打開する。指揮官はチームのため、時に冷淡に采配をふるいつつも、一人ひとりの個性を把握し、育成に心を砕く。組織のため、それぞれのため。

 

こうした組織論やリーダー哲学について語らせたら、野球界でノムさんこと野球評論家の野村克也氏の右に出る者はいない。その野村氏が『一流のリーダーになる 野村の言葉』(新星出版社)を上梓した。これまで数々の名言を生んできた野村氏による、組織論とリーダー哲学とは。新人、中堅、ベテランをどう扱うのか。リーダーはどうあるべきか。

 

含蓄に富んだ野村氏の言葉は、野球や組織という枠組みを越え、どんな人にもずしりと響く。

 

 

■「叱る」と「怒る」では大違い。人間学に基づき、成長を促す

 

野村氏は同書で繰り返す。「人を育てるには愛情が不可欠」。それぞれが新人か中堅かベテランか、どんな性格なのか、あらゆる側面から考慮を重ね、指導しなければならない。緻密で懐が深い元名捕手は、「叱る」と「怒る」の違いをこう説明する。

 

「叱る」ことは愛情であるが、「怒る」は愛情ではなく、感情を爆発させているに過ぎないのだ。

 

上に立つ者は、結果だけを見て叱ってはいけない。なぜそうなったのか。根拠があるなら責めるのではなく、その根拠が正しい判断だったかを話し合えばいい。叱るのは、やるべきことをやらなかった時で、その場合も理路整然と叱ることが必要と説く。

 

また、褒めるのは「たまに」でいい。褒めて育てるのが主流のように語られる昨今。同氏は一概には言えないとしながらも、やはり「褒めてばかりでは人は育たない」と明言する。いわく、褒めていいのは新人のうちだけで、数年が経ったら、慢心や妥協の気持ちが生まれないよう、厳しく接するのだ。それにより、つまらないミスは減り、成長につながるのだと。

 

緊張感なくして成長はない。今も野村節は健在で、時に教え子にメディアを通じて苦言を呈することがあるが、いずれも愛情あってのことなのだ。

 

 

■「叱り方」も相手によって変える。古田氏との壮絶バトル

 

「叱り方」も相手によって変えていたという野村氏。育ってきた家庭環境やそれぞれの性格もある。叱られても大丈夫な人、意気消沈してしまう人は、同じように叱ってはいけないと念を押す。

 

中でも興味深いのは、「人前で叱っていい人」の例。気持ちが強く、反論してくるような選手で、野村氏が東京ヤクルトスワローズで監督を担っていた時、捕手を務めていた古田敦也氏が、これにあたる例だったという。

 

並の選手なら怖じ気づいてしまうような場面でも、彼はまったく臆することなく意見を主張することができたので、私は投手の配球に限らず、チームのタガが緩んだと見るや、必ず古田をやり玉にあげては叱責し、チーム全体の空気を引き締めていた。

 

これができるか否かも慎重に見極めなければならない。豪快に見えても実は繊細だったりと人は見かけによらないからだ。

 

叱り方ひとつ取っても、愛情と考察に満ちている。それでも野村氏は、「人を育てることの難しさ」を痛感し、「あの時の指導は正しかったのだろうか」と自問自答を繰り返す日々だったと明かす。人間教育、人材育成に即効性はない。だからこそ、根気よく指導し続ける「努力」が必要なのだと。「もっとよくなってもらいたい」という情熱ほど大事なものはないと。

 

こうした野村氏の熱い思いを知れば、ノムさんのボヤキ節もまた一段と深く響く。

 

文=松山ようこ

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