なぜ日本人は粗悪品のチャイルドシートに手を出してしまうのか?

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チャイルドシートに関する、ちょっと驚くべき発表が、先月下旬に相次いで2つあった。


ひとつは警察庁とJAF(日本自動車連盟)が合同で行ったチャイルドシートの利用率や取り付け、着座状況の調査。もうひとつは国土交通省が実施したインターネット通販で販売されているチャイルドシートの安全性検証だ。


前者は4月20日から30日まで、全国99か所で6歳未満の子どもが乗る約1万台に対して目視あるいは聞き取りで確認を行なったとのこと。その結果チャイルドシートの利用率は64.1%で、10年前の46.9%よりはるかにアップしているものの、昨年の64.2%と比較すると0.1%ではあるが下がっていた。


年代別では1歳未満が87.1%なのに対し、1歳~4歳は65.6%、5歳は40.9%と、子どもが成長するにつれて使用率が低くなっていたというデータもある。非装着事例のうち、1歳未満では10%が保護者の抱っこ、5歳では34%がシートベルト非装着だったという。


全国16ヶ所、423シートを対象に行った取り付け状況調査では、正しく使用されていないミスユースも59.3%と半数以上に上っており、腰ベルトの締め付け不足が目立っていたことが判明。634人の子どもに対して実施した着座状況調査では、51.9%がしっかり着座していないことが分かった。


一方のインターネット通販チャイルドシートの安全性検証では、安全基準にパスしたマークが表示されていない、いわゆる未認証のチャイルドシートが販売されているという情報を受け、実際に販売されている7製品を購入して検証したところ、国の安全基準に適合していないことが確認された。


具体的には本体の大部分が布製で、事故などの際の衝撃を吸収する機能がなかったり、衝突実験を行ったところ固定金具が壊れてダミー人形が前方に放り出されてしまったりという、恐ろしい結果が報告されている。

 

 

■激安ツアーバス問題と構造は同じ


日本でチャイルドシートが義務化されたのは2000年のこと。欧米と比べて極端に遅いわけではないし、つい最近のことでもない。スマートフォンが出る前から装着しなければいけないことになっている。


ではなぜ装着率が伸びず、使い方も完璧にはならず、粗悪品が出回ったりしているのだろうか。やはりこの国の移動に対する安全意識の低さに尽きるのではないかという気がする。


もっとも分かりやすい例はバスだろう。規制緩和という原因もあったけれど、とにかく安くという一部のユーザーの要望を受ける形で、旅行会社が中小のバス会社と低料金での契約を結び、激安バスを走らせた。その結果、バス会社の運転士などにしわ寄せが行き、大事故が何度も起こった。


乗用車の安全装備にも似たような傾向は見られる。たとえば軽自動車の廉価版には、いまだに後席ヘッドレストを持たない車種がある。メーカーもユーザーも、価格を下げるためにはそれでいいと思っているようだ。


認証マークが付いたチャイルドシートは1万円以上する。それに比べるとインターネットの未認証製品は3千円前後が多い。安全よりも価格が優先されている構図はバスや軽自動車と同じだ。


取り締まりも、飲酒運転や速度違反に比べるとユルいような気がする。自転車マナーもそうだけれど、取り締まりの対応がイマイチな分野は安全レベルが向上しないことが多い。


筆者には子どもがいないのでチャイルドシートの使用経験はないけれど、2輪車のヘルメットは似たような状況にあると思っている。購入時は実物を見て、高価ではあっても安全基準に適合したものを選ぶ。ノーヘルはもちろんあり得ないし、装着時はしっかりあごひもを締める。


幸いにしてヘルメットの性能を試す機会はないけれど、だからといって安全より価格を優先しようとは思わない。なので今回の2つのチャイルドシートの調査結果は、驚きでしかないというのが正直な気持ちだ。
 

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森口将之

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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