なんでもアリの狂乱時代!? バブル時代に起こっていた現象と人々の生活に迫る【インタビュー】

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芸人・平野ノラの「しもしも~」「ぶっとびー!」などのバブルフレーズは浸透しきった感があるが、その語源はご存じだろうか。「しもしも~」はたんに「もしもし」を逆にしたものだが、「ぶっとびー!」は1990年に放送されたドラマ『いつも誰かに恋してるッ』(フジテレビ系)で、宮沢りえが演じたヒロインの口ぐせだったものだ。

 

 ……と、こうして文字にしてみると気恥ずかしさのあるバブルの頃(だいたい80年代半ばから90年代初頭)だが、一体、どんな時代だったのか。『1985-1991 東京バブルの正体』(マイクロマガジン社)著者の昼間たかしさんは「『狂騒』で『狂乱』、でも『明るい』『面白い時代』だったと語る。バブルの正体とは何だったのか。昼間さんにお話をうかがった

 

 

■バブル=イタリア料理で仲直りできた時代?

 

1975年生まれで高校まで岡山県で育った昼間さんには、バブル時代のリアルタイム記憶はあまりない。小学生の頃にバブルに沸く東京の姿をテレビで見るにつけ「街が賑やかそうだから早く上京したい」と思っていた程度。だからこそ、昨今あやふやなイメージで語られることの多いバブル時代に強い興味をもった。

 

「バブル時代は日本の戦後史のひとつなのに、それをまとめた本は意外となくて。それ以上に多くが、『適当に自分の視点でバブルを語っている』ことが気になっていたんです。もしかしたら、当時全然イケてなかった人が『俺も六本木をブイブイ言わせてたなあ』とか語っているのではないかと思って。思い出話は自分に都合の良いことが語られるというか、話を盛るところがあると思うので、『あの頃の自分は』みたいな話よりも、当時の雑誌など、生の声をしっかり検証して、当時の熱気の本当の姿を再構成してみようと思ったのです」

 

当時の女性のライフスタイルを語る上で重要な、マガジンハウスのHanakoやan・anなど、女子大生やOLがこぞって読んでいた雑誌で語られていたことを見てみると、なかには「え?」と思うようなものもある。

 

たとえば1989年のnon-noには、当時「イタめし」と呼ばれていたイタリア料理について、西麻布にあったレストラン「ヴィノッキオ」のシェフの

 

たとえ、恋人同士がけんかをしていても、ひと口イタリア料理を食べただけで、仲直りしてしまうような雰囲気がありますね(『non-no』1989年10月20日号)

という言葉が載っている。

 

「イタめしを食べれば、ほ~ら誰でも仲直り」するのであれば、簡単に世界は平和になってしまう。今の感覚からすると意味がわからないが、その後完全に定着したイタリア料理が、それほどまでに“トレンディ”だったことがわかるだろう。とはいえ昼間さんによると、別に皆が皆西麻布のレストランで舌鼓を打っていたわけではなく、その恩恵にあずかることもなく、鬱屈した日々を送っていた人も確かにいたという。

 

「当時は給与が急激に上がり、どんなに安くてもアルバイトの時給は800円以上が当たり前になりました。しかし、ライブハウスなどバブルのまっただ中でも600円程度が相場の業種もあった。恋愛をユーミンで学ぶ女性たちが多くいた中、『死にたいくらいに憧れた花の都“大東京”』(『とんぼ』)と歌った長渕剛は、上を見てもがきながら生きる市井の人たちに支持されました。儲かっている人ばかりではなく、寂しく金のない毎日を送っている人もいたんです。でも、今の若者からは十把一絡げに『バブル世代むかつく!』と言われてしまって(苦笑)。ただ、毎日忙しく大して儲かっていなくても、『頑張ればそのうち自分も』と思える明るさのあった時代だったとは思うので、若い世代の嫉妬もまた正しいといえるのですが」

 

 

■SNSがない分、コミュ力が総じて高かった!?

 

しかし1990年代初頭にバブルははじけ、以来この20年あまりは「頑張るのが当たり前で、頑張ってもほとんどが報われない」時代になってしまった。これではバブル時代を「あの頃は良かった」と、羨望や嫉妬をまじえて眺めたり、思い返したりするのも無理はない。

 

「だからこそ今、80年代から90年代について取り上げたいと思ったんです。当時の『宝島』(宝島社)は勢いがあったし、バブル崩壊後の話ですが、94年に『GON!』(ミリオン出版)や『クイックジャパン』(太田出版)が創刊されました。サブカル界に面白いこと、新しいことを始める人が続々現れたのを見て、僕も『自分も何かやってみたい!』と思わされたんです。これらの新しいこと、面白いことが生まれた背景には、バブルという時代があった。そういう意味でこの本は、20代や30代の人に読んでほしいと思います」

 

何が流行り、人々は何を着てどこに出かけていたかについては同書を読んでほしいが、今と決定的に違うのは「スマホとインターネットがない」ことだろう。だから会いたい人には会いに行っていたし、やりたいことは情報収集の前に「とりあえずやってから考えて」いた。恥ずかしい経験をSNSで晒されることや、失言を見ず知らずの相手からネット私刑されることもなかった。

 

「『SNSだと驚くほどガラが悪いのに、会うといい奴』みたいな人、最近多いですよね。でも僕は『ネット弁慶をやめて、直接ぶつかったり話したりしよう』と言いたいんです。バブルの頃はナンパに励んで失敗しても『次にいこう』と思えていたのに、今はストーカーをしたり、SNSで嫌がらせをしたりする男性もいますよね。当時は人間関係がフラットで、“コミュ力”なんて言葉はなかったけど、総じてコミュ力が高かった気がします。なぜなら、相手に会わないと話にならないから。また今ではその辺で知らない人に声をかけたら変人扱いですけど、バブルの頃は新しい出会いが、新しい世界をもたらすことも多かった。浮かれた時代とバカにする人も多いけれど、陰湿で疲弊した時代よりもいいと思うんですね。そういう意味で『バブル時代よもう一度』と、声を大にして言いたいんです」

 

あの頃ぶっとんでいた宮沢りえも40を超えた今では、同じようにぶっとぶことはできないかもしれない。でもぶっとびたくなる気持ちは、いつだって持つことができる。ネタにされるばかりのバブル時代だが、良かった点を今、振り返ってみてもよいかもしれない。

 

著者の昼間たかしさん

取材・文=今井順梨

 

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