【小物王のつぶやき】出身者が語る「色々あるけど何もない」佐賀っぽさ

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佐賀には何もないと言う人は多い。多分、それは間違っていないし、5歳から18歳まで佐賀で暮らし、現在も母親を訪ねて年に1、2度は帰省する私も、人に聞かれるとそう答えると思う。

 

もちろん、細かいことを言えば、色々ある。友人と佐賀に行けば案内する場所だって、食べさせたいものだってある、佐賀に帰れば、東京の友人に持って帰りたいお土産だってある。松原川の河童、中原の「あんころ餅」、北島の「花ぼうろ」、佐賀城趾、旬菓房ふりあんの「ふりあぼうろ」、有田の窯だって、呼子の烏賊だって、そこら中にいるカササギやシロサギだって、村岡屋の「佐賀錦」だって、WRSBだって、文雅のカレーだって、目の前にいる友人になら胸を張って自慢できる。伊万里には河童のミイラだってあるし、鳥栖駅のホームのうどんもお勧めだ。鳥栖駅は焼売だってうまい。

 

しかし、無いものも多い。田舎だから無いというなら、それはしょうがないのだけど、佐賀の問題は、田舎らしささえ、あまり無いという所だと思う。まず、街中には驚くほど緑がない。公園的なものもとても少ない。私が子供の頃でさえ、凧揚げが可能な場所さえなかったのだ。正月に、子供が凧揚げしている姿なんて、ほとんど見たこともなかった。郊外に行っても、田圃や畑はあっても街路樹は貧弱だし、休日には最近でこそ、郊外型大型ショッピングセンターが増えたから良いけれど、のんびり遊ぶ場所なんて、ほとんど無いのだ。都会的なものも少ないけれど、田舎的なものも少ない。だから、印象は「何もない」なのだ。福岡から車や電車で佐賀に向かうと、鳥栖を過ぎたくらいから何もない状態になる。ボブ・ディランに言わせれば「Beyond Here Lies Nothing」だ。

 

だから、佐賀に実際足を運ぶと、意外に面白いところだという印象を持つ人もいるだろう。イメージとして「空白」だから、細部には何だか色々あることが面白く映ったりする。

 

佐賀移住希望者を優待 引っ越し料など111業者が割引 県が会員カード

 

Yahoo!ニュースに、こんなのがあったが、この手の、よくある移住希望者優待カードに、協賛業者が100を越えるのが珍しいという、その感じが佐賀にはあるのだ。チマチマと面白い。佐賀市内だけでなく、県内の様々な場所で、私の高校時代からの友人がやっているスプロケッツというバンドは、月に何度も何かというとライブをやっている。つまり、そういう催しはそこら中でやっているのだ。

 

ビールのお供の高級おつまみでもある「ワラスボ」の形態に県外の人が注目しているっぽいと思えば、「WRSB」などと言って、変なイメージビデオを作ったりするのだ。

 

いや、ワラスボって結構高いから、普通の家庭で普通に食べられているものでもないし、佐賀というか有明海ではムツゴロウやらシャコやらアゲマキやらの、あまり見目麗しくない生き物が当たり前にいるせいか、ワラスボの干物の見た目なんかには子供も驚かなかったりするのだけれど、この悪ノリを真面目にやってる感じは、佐賀っぽいなあと思う。どこまで本気で、どこまで冗談なんだか分からない、あまり都会にもいないけど、田舎にもいないタイプの人間が多いのだ。その割に、ケチ臭かったりもするから、派手に何かを打ち出すようなこともない。武雄の図書館だって、組んだのがTSUTAYAだったからニュースになったけれど、やってることは、カフェ付きの田舎の図書館というだけで、地味といえば地味だ。ただ、ニュースだけ見てると「変なことやってるなあ」と良くも悪くも思う。

 

佐賀弁という言葉は、基本的には福岡、長崎に近い言葉で、単語などもあまり変わらないのだけど、強いイントネーションがないため、標準語に変換するのがとても楽なのだ。商人の言葉として端切れの良い博多弁に比べて、淡々としている。「ガバイ」とか言うので、激しさや荒さをイメージするかもしれないが、よほどのことがない限り「ガバイ」でさえ、イントネーションは平坦なのだ。代表的な佐賀弁で、「じゃあねー」的な意味の「そいぎー」という言葉があって、どうやら佐賀には「SOIGI Tシャツ」も売ってるらしいけれど、これも平坦に言うのだ。特に、どこかにアクセントを付けることもなく「そいぎー」と言いながら、三々五々帰っていく。

 

グイグイ来る県民性ではないのだと思う。ご近所付きあいみたいなものも、あまり濃くない。地域のお祭り的なものは、東京の方がよほど盛んだ。「何もない」印象は、そういう県民性からも来ているのかもしれない。だから、来てもらうしかないのだろう。イメージで売るものが、本当に無いのだ。奥ゆかしいわけではない。むしろ厚かましいと思う。でもまあ、都会に行きたければ博多まで30分くらいだし、田舎らしさも長崎方向に行ったり熊本方向に行ったりすれば、濃厚な面白さに出会えるから、普段は佐賀でぼーっとして、小さなことを面白がっているというのは、悪くないと思わないでもない。

 

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小物王

納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

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