『ひよっこ』『あまちゃん』『あさが来た』なぜ朝ドラの登場人物は“失踪”するのか

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視聴率10%を超えればヒット作と呼ばれる民放ドラマに対し、日々厳しい数字のジャッジにさらされているのがNHKの朝ドラだ。現在オンエアされているのは有村架純主演の『ひよっこ』。昭和39年からの約10年間、主人公・谷田部みね子の半生を描くという構成で、視聴率は回によって20%の壁を超えたり超えられなかったりという状況。

 

『ひよっこ』が近年の朝ドラに比べて新しいのは“主人公が大きな夢や目的を持たず普通に生きる女性”であること。例えば『あまちゃん』(’13年)のアキは海女さんやアイドル、『あさが来た』(’15年)のあさは女性が学べる大学の創設、『まれ』(’15年)のまれはパティシエ、『とと姉ちゃん』(’16年)の常子は生活に役立つ雑誌の編集と、主人公たちはそれぞれに夢を持ち、それに向かってまい進していった。

 

それに対して『ひよっこ』のみね子は奥茨城の村から上京したものの、夢や野望があったワケではない。彼女は東京に働きに出たまま失踪した父親を捜すため、また実家に仕送りをするため、必要に迫られて東京に出てきたのである。

 

オンエア開始から1か月も経たないうちに失踪し、その後はみね子の心の声で語られるだけになってしまった父・実(沢村一樹)。そう言えば朝ドラでは主人公周辺の人物が“失踪”することが比較的多い。これには一体どんな理由があるのだろうか。

 

 

■朝ドラの登場人物が“失踪”する理由

 

朝ドラの登場人物が“失踪”するワケ…それは出演者の“朝ドラ撮影と他の現場のスケジュールが重なっていること”が理由のひとつと予想できる。例えば『まれ』で事業に失敗し失踪した主人公の父・津村徹を演じた大泉洋は、撮影期間中に自身が所属するユニット「TEAM NACS」の舞台公演『悪童』に出演していたし、『あさが来た』で妻を残して失踪する眉山惣兵衛役の柄本佑は同時期に上演された新国立劇場『桜の園』に出演。また、失踪とは少々異なるが、『あまちゃん』で郷土料理のまめぶを全国に広めるために旅立っていった安部ちゃん役の片桐はいりも撮影時期と同じころに向井理との舞台『小野寺の弟・小野寺の姉』に出演していた(同じく『あまちゃん』で失踪したユイの母には、ストーリ上の必要性があったが)。

 

特にNHKのドラマでは舞台で活躍する俳優を主役の周りに置く傾向も強く、大体2年前には上演スケジュールが決まっている舞台作品との兼ね合いで、主人公周辺の人々が良く失踪したり旅立ったりする事態が起きるのである。これが死亡にまでいたらないのは、朝一番に観るドラマ=朝ドラという性質と、失踪や旅なら他の仕事がひと段落したころに、NHKの撮影に戻れるという意味合いもあるからだろう。

 

 

■『ひよっこ』登場人物たちの“事情”とは

 

その視点で『ひよっこ』をちょこっと深掘りしてみると、みね子が働く赤坂の洋食店「すずふり亭」のホール担当・高子が奥茨城の農家の長男と一度会っただけで唐突とも思える結婚を決めたのは、高子役の佐藤仁美が出演する舞台(片岡愛之助主演『デストラップ』)の上演時期と撮影スケジュールとが重なったこともひとつの要因であろうし、10月からの舞台『リチャード三世』に主演する佐々木蔵之介も次第に出演場面は減ってくると思われる。また、みね子の初恋の人・島谷だが、彼が彼女の伴侶となる可能性は限りなく低い。なぜなら島谷役の竹内涼真は7月からオンエアが始まった『過保護のカホコ』(日本テレビ系列)にヒロインの相手役として出演中だからだ。

 

と、語ってしまうと夢も希望もないのだが、じつはみね子の父・実を演じる沢村一樹に関しては、舞台出演の情報がない。この時期、映画等の撮影が重なっている可能性も捨てきれないが、もしかしたらこれまでの朝ドラにはない、とんでもない展開が待っているのかもしれない。なんせ父・実はメインキャストでありながら、登場回数が異常に少ないキャラクターなのである。

 

今のところ、本当の意味での悪い奴や嫌な人間がひとりも出てこない『ひよっこ』。どうやら記憶を失っているらしい父・実に「早くすずふり亭のカツサンドを食べて家族のことを思い出してー!」とやきもきしながら、オープニングのクレジットに沢村一樹の名前を探す日々……なのである。

 

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小姑系エンタメライター

上村由紀子

エンタメ系ライター(主にドラマ・演劇)&ラジオDJ、MC。横浜市出身。スタジオでマイクを操りつつ「ジャニーズから歌舞伎まで」をキャッチフレーズに、雑誌・Web媒体等で執筆中(桐朋学園大学演劇科卒)。巻き髪歴2...

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