日本人が世界に伝える、長寿の秘訣としての「生きがい十戒」

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<長寿大国ニッポンの不思議に魅せられたスペイン人ふたりが著した『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』。沖縄の長寿の里でインタビューし、本や資料を読み漁ってたどり着いたその秘密とは>

 

厚生労働省によれば、日本は人口10万人当たりの自殺者数が世界でワースト6位、女性に限るとワースト3位になる。若い世代(15〜39歳)の死因のトップが自殺であるのも、先進国では異例だという。

 

その一方で、肥満率の低さや、健康で幸せな長寿大国として世界的に知られているのも事実だ。やはり、不思議の国ニッポンである。

 

後者の不思議を解き明かそうと、ふたりのスペイン人著者が著したのが、新刊『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』(筆者訳、エクスナレッジ)だ。

 

著者のひとりであるエクトル・ガルシアは、2004年から東京に住んでいる自称オタク。彼が日本のポップカルチャーを主として紹介している「kirai」は、スペイン語による日本紹介ブログとして根強い人気があり、書籍化もされ、日本語にも翻訳されている(『コモエスタ・ニッポン! 世界で最も読まれているスペイン語ブログのひとつは日本ガイドだった』宝島社)。

 

一方、共著者のフランセスク・ミラージェスは、バルセロナに住むジャーナリスト/ライター。スペインの主要紙エル・パイスの別冊『エル・パイス・セマナル』誌に心理学系記事を寄稿しているほか、日本の精神文化を取り入れた自己啓発書や小説など、多数の著書がある。

 

そんなふたりが本や資料を読み漁り、長寿者率が世界一で「長寿の里」として知られる沖縄県大宜味(おおぎみ)村まで出かけていって、村の高齢者にインタビューを行った。そうしてたどり着いた「長寿ニッポン幸せの秘密」は――地元の産物や清水が流れる自然環境などよりむしろ――「生きがい」だった。

 

この日本語をスペイン語の原書でもそのまま、不思議なことば Ikigaiとして紹介。「人生を通して自分を導き、美しいものや役立つものを地域社会や自分自身のために生み出そうと思わせる、積極的な心構え」であり、「生きていくためのエネルギー」だと説明している。

 

本書には、自殺することなく前を向いて生きていくべき理由(すなわち、人生の意味)を探求するよう促す「ロゴセラピー」や、生きる目的を見つける手助けをする「森田療法」などが紹介されているが、これらも要するに「生きがい」探しを手助けするものだという。

 

【参考記事】老化はもうすぐ「治療できる病気」になる

 

 

■わび・さびから諸行無常、レジリエンスまで

両著者は、侘(わび)・寂(さび)、一期一会、簡素美、諸行無常といった非常に日本的な概念を、日本文化をよく知らない読者にわかりやすく説明しながら、「生きがい」に収束させている。

 

さらに、マインドフルネス、フロー、レジリエンス、アンチフラジャイルなど、いま話題の概念も、(盛り込みすぎたきらいはあるが)すべて「生きがい」へとつながっていく。

 

「長寿の里」大宜味村で100人を超える高齢者を対象に行われたインタビューで得られた、シンプルで味わいのある言葉に触れられるのが特にいい。当たり前のことを当たり前にたゆまず続けること、感謝と笑顔で人生を楽しむことの大切さを再認識させられる。

 

回答の一部はそのまま紹介されているほか、「『生きがい』十戒」として本書のおわりにまとめられている。ここで簡潔に紹介しておこう。

 

●「生きがい」十戒

 

1.すっかり隠退してしまわず、常に活動的でいる。
2.穏やかに生活する。
3.満腹になるまで食べない。
4.よき友人に囲まれる。
5.次の誕生日までに体調を整える。
6.微笑む。
7.自然に還る。
8.感謝する。
9.「いまこのとき」を生きる。
10.自分の「生きがい」に従う。

 

【参考記事】チャリ通は長寿の秘訣。がんや心臓疾患のリスクが4割減

 

 

■印象的なセンテンスを対訳で読む

以下は、『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。

 

●Los japoneses son buenos uniendo naturaleza con tecnología; no es el hombre contra la naturaleza, sino la unión de ambos.
(日本人が自然とテクノロジーを一体化させるのが得意なのは、人と自然が対峙するのではなく、結びついているからだ)

 

――日本の職人技を説明している箇所。仕事に没頭してフロー状態に入り、作業対象と一体化することに特別な側面があるのは、神道では森にも木にもモノにも「カミ」(霊、神)が宿っているから、と論じている。「対象に命を吹き込む」べく、自然を常に敬いながらも上手に活用することが、ものを作り出す人間の責任だという。

 

●La comida no alarga la vida, el secreto es sonreír y pasarlo bien.
(食事で寿命が延びるわけじゃないのよ。長生きの秘訣は、笑顔で人生を楽しむこと)

 

――大宜味村で著者ふたりを食事に連れて行ったユキコさん(88歳)のことば。このようなことばがほかにもいろいろ紹介されている。

 

●La vida es pura imperfección, como reza el wabi-sabi, y el paso del tiempo nos demuestra que todo es efímero, pero si tienes un ikigai definido, cada momento albergará tantas posibilidades que es como una eternidad.
(「侘・寂」のことばどおり、人生は不完全そのものであり、時の流れは諸行無常を示している。それでも、はっきりした「生きがい」があれば、どの瞬間にも多くの可能性があり、永遠とも言える)

 

――すべての逆境には成長の可能性が潜んでいる。打撃を受けるたびに強くなる方法を見出せるはず。要するに、打撃を不運ととらえるか、「いい経験」ととらえるかの違いだという。

 

 

逆境も成長の機会ととらえ、前を向いて生きていくための、あなたの「生きがい」は何だろうか。

 

『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』
エクトル・ガルシア、フランセスク・ミラージェス 著
齋藤慎子 訳
エクスナレッジ

 

トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。
http://www.trannet.co.jp/

 

齋藤慎子 ※編集・企画:トランネット

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