世知辛すぎる! 「シェア禁止」を掲げるラーメン店の勘違い

話題

 

「世知辛すぎる!」

 

編集部から「次はこんなお話どうでしょう」と送られてきたURLを開いて思わず、そうつぶやいてしまいました。以下のお話です。

 

「取り分けるために大盛りにしないでよ!」それはお店の勘違い…でも取り分けに対する本音って?

 

タイトルだけだとちょっとわかりにくいのですが、要は両親+2歳児の3人でラーメン屋に入り、2杯頼んで2歳児に取り分けようとしたら店主に叱られたというお話です。トピ主の主張に沿って詳しくシチュエーションを解説すると……。

 

1. 夫は大盛り(大盛り有料)、妻は並盛りを注文。

2. 頼んだら、子どもへの取り分け用の茶碗とフォークなどは出してくれた。

3. 取り分けようとしたら「取り分けるために大盛り注文しないでよ!」と店主に怒鳴られた。

(4. ちなみに取り分け元は夫の大盛りではなく妻の並盛りから)

 

という事案が起きて、ネット界隈で話題になった模様です。この記事執筆時点(8月2日夜)ではてなブックマーク(はてブ)669、FBシェア2,224という破壊力で、はてブで見る限り、母親を擁護するコメントが多いようです……が、問題なのは上記の点ではありません。もちろん客を怒鳴る店主は論外ですが、この母親(夫婦?)が気にしているポイントもちょっとズレています。

 

この問題は論点が幾重にもすり替わっています。1.「基本的なルールを取り違えている店」なのに、2.「怒鳴られたせいで」、3.「取り分けのルール」の話だと思い込まされてしまっています。

 

そもそもこの話は、銭湯に来て裸で浴室に入ろうとしたら、番台から「水着を着ろよ!」と怒鳴られたとか、もしくは市民プールに来て、水着を着てプールに入ろうとしたらプール監視員に「脱衣所でちゃんと脱いでこいよ!」と怒鳴られたというような話で、社会の共通認識の基盤が崩壊したのかと思うくらいアレな話です。

 

 

■大衆店はいつから高級レストランになったのか

 

今回、唯一最大の問題は注文(もしくは入店)時に「(2歳の)子どもへの扱いを明らかにしなかった」店側の対応です。2歳児が自分で注文ができるわけも、1人前を平らげられるはずもありません。特に説明なしに注文を受けた時点で、店はこの客を受け入れたと解釈するのが自然です。客が「大盛りじゃなく並盛りから取り分けようとしたのに」「大盛りは有料なのに」と説明をする必要はもちろん怒鳴られるいわれもどこにもありません。

 

客がどの店を選ぶか自由なように、店側にも本来、客を選ぶ自由はあります。しかし注文を受けた品を提供してから、掲示もしていない禁則事項を持ち出して客を怒鳴りつけるというのはいかがなものかという気がします。

 

大人が社交に使うような高級店や、行列のできる繁盛店ならともかく、地域に根ざした街場の店が子どもの入店を拒否するなどという、いま以上に公共の場が子ども連れに狭量な社会になったらほどなく国は滅ぶでしょうし、それよりも前にこの店が滅亡するのは避けられません。

 

そういえば去年でしたか。ちょっと似た事案が僕の周囲でもありました。最近は東京にも博多などにあるような飲み屋使いもできる、ラーメン店があります。近所にそうした店ができ、少人数でよく通うようになりました。ラーメン中心の人はビールやサワーを少し飲んだ後、ラーメンを食べ、酒呑みの僕はつまみとともにビールを何本か。僕は最後にラーメン組から、麺をひとすすりもらうというような使い方をしていたのです。ところがある日、飲んだ後のラーメンのターンになって「すみません……。実はラーメンをシェアするのを、先日から禁止させていただいておりまして」と断られたのです。

 

 

■狭量な大衆店に未来はない

 

「えっ!?」と驚いたのですが、聞けば、近所にある大学の学生がラーメンを1人1杯頼まないばかりか、数名で1杯だけ注文して替え玉を注文するようになり、「シェア禁止」というルールを設定したそうです。

 

僕としては腑に落ちません。僕はビールやサワーを2杯+300円程度のつまみ×3~4品を注文し、2人のときは4000円弱、3人なら5000円ちょっと。「ビール+おつまみもどうぞ」と書いてある店で、ラーメンの注文自体は人数分に満たないとはいえ、1人あたりラーメン2杯分くらいの会計にはなっているはず……。どうにもすっきりしなかったので、その後、足が遠のいてしまいました。

 

店の立場もわかります。先のように「替え玉込みの一杯を数人でシェアし、席を専有する」という人もいる以上、店にも何らかの対策が必要なのでしょう。傍若無人に振る舞う「神のごとき客」への対応に苦慮した揚げ句、本来必要のなかったルールが設定されてしまう。この社会からもう『一杯のかけそば』のような物語は生まれてこないのかもしれません。

 

「世知辛い」とは本来、「こざかしくて抜け目がない」ことの指すのだそう。江戸時代の吉原を舞台にした随筆『吉原雑話』には「近年は、人の心せちがらくなりてより、馬鹿らしき事をする者もなく」というフレーズも登場します。結局、せこい輩のおかげで暮らしにくくなるのはいつの時代も同じということのよう。世知辛いので、本日も自力で世の中を楽しくすべく、街に繰り出したいと思います!

 

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松浦達也

松浦達也

フードアクティビスト/編集者&ライター 『dancyu』などの食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで、「調理の仕組みと科学」「食文化」「食から見た地方論」など幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオでの食トレンド...

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