「57万円の高級トイレ」は高いのか? 意外と知らない「モノの値段の決まり方」

ライフスタイル

出典:TOTO製品サイトより

 

例えば、こういうニュースがあった。

 

つぼのような「真の一体形便器」 57万円のトイレ発表(朝日新聞デジタル)

 

一方で、こういう話題もあった。

 

1本3000円でも売れる、芯が出続けるシャープペン ぺんてる「オレンズ」が進化して高級に(日経トレンディネット)

 

モノの価格というのは、これが中々難しくて、イメージと価格が合わないと、高いとか安いとか思いがちだけれど、形がある「モノ」については、価格はそれなりの基準に基づいて設定されていることが多い。ただ、こちらに十分な知識がないから、実際のモノとのバランスが悪いように感じる。

 

 

■モノの値段はどうやって決まるのか?

 

例えば、私は「Note Me!」という取材に便利なノートケースを考案して、スーパークラシックさんで製作・販売してもらっているのだけど、これが8800円する。とてもとてもシンプルな革製のケースだから、時々、「革じゃなくて良いから、もっと安くならないのか」と言われる。しかし、この製品を形にするにあたって、革じゃなかったら、とてもじゃないけど、この価格では作れないし、もし安く作ろうとしたら、何万という数の在庫を抱え込む事になる。PPなどで作れば、確かに1個あたりの価格は安くなったかも知れない。でもそれは、何万という数を作ればの話であって、こんなプロ仕様の道具がそんなに売れるわけないのだ。

 

そういう場合、数十個単位くらいで作れる革製品だと、品質が高いものを少ない初期投資で作る事が出来るし、在庫を置くスペースも少なくて済む。量産品は設備も製品の型も作る必要があるから、そう簡単に手を出せるものではないのだ。私だって、「Note Me!」のような製品、きっとどこかが作ってくれると思って待っていたら、全然出てこなくて、しょうがないから自分で作っただけだ。で、どうせ自分が好きなように作れるのならと、ペン挿し部分は経年変化するブッテーロを使うなど贅沢するから、さらに価格は高くなる。それでも、この世になかった製品なのだから、安いと思うし、全然、暴利をむさぼってもいない(本当にプロくらいしか買ってくれないから、それほど売れもしないのだ)。

 

 

■「コスパ」という言葉のあいまいさ

 

事程左様に、価格というものは一筋縄では行かない。m+という、とても優れた革製品を作るブランドがある。そこの「ストラッチョ」という財布は、とても考えられた、ミニマムの極みのような小型財布で、個人的には小型財布の中で使い勝手では抜きんでていると思っているのだけど、これが、そのアイディア、デザイン、機能、質感などなどの素晴らしさの割に、妙に安価なのだ。コストパフォーマンスという言葉は、個人差が激しい上にケチ臭く、何の基準にもならないのに、何となくお買い得的なムードだけを作るので好きではないが、それでも、これがこの価格でいいの? と本気で心配したら、m+のデザイナー村上氏は「だって、これ作るの簡単だから」と照れたように言ったのだ。何故、そこで照れる、と思いつつ、しかし、モノの価格って難しいなあと思った。まあ、買う側にしてみれば安いのが有り難いのも事実だ。

 

 

■57万円の便器は決して高くはない?

 

冒頭の、57万円の便器も、それだけ聞くと高いけれど、そもそもウォシュレット一体型の便器は安くない。TOTOのサイトで見ると、安いもので23万円、基本30万円前後はするものなのだ。その上で、57万円の「ネオレストNX」を見れば、その凹凸や隙間、角などがない、つまり汚れが溜まりにくく掃除しやすい形状と見た目のカッコ良さがきちんと両立していて、そのくらいの価格が、驚くほどでもないような気がする。

 

トイレにデザインの考えを導入するというと、まるでデザインを付加価値とした製品のようだけれど、便器のような水の流れや使い勝手を限られたスペースの中で考慮する必要がある製品は、既に「デザイン」された製品なのだ。もっとも、時々駅のトイレなどで見かける、男性用便器の、一体この便器で何を隠したいのか分からない、尖った逆三角形みないな形の便器は、見た目だけでデザインしたな、と思うのだけど、そういう、いわゆる「デザイン便器」の方が少数派だろう。

 

ぺんてるの「orenznero」にしても、シャープペンシルとしては、確かに高額かも知れないけれど、海外製のシャープペンシルなんて、普通に数万するものもあるし、「orenznero」を作る工程の多さを考えたら、むしろ安い製品。「わざと生産量を少なくしてるわけじゃないんです」とメーカさんも申し訳なさそうに言っていた。最初から、そこに魅力を感じてくれる人に向けた製品だから、本来、高いとか安いとか言うようなモノではないのだ。

 

「モノの価値が分かる」人の事を、かつて「目利き」と呼んでいたけれど、まあ、そういう呼称が付くくらい難しいものだったりするのだ。センスと膨大な知識と勘と経験を持っていて、それらを上手い事結びつけられる才能があって、初めて「目利き」になれるわけで、「俺、売れるか売れないかの予想が結構当たるんだよね」とか言ってる奴とは全く違うのだけど、世間的に重宝されるのは目利きじゃなくて予想屋の方だったりするし、ヒット作と名作が往々にしてズレる一因になっているのだった。まあ、全ては500万円以下くらいの世界の話。それ以上になると、価格自体が意味と価値を持ち始めるから。

 

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小物王

納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

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