タクシーの「事前確定運賃サービス」は、ライドシェア排除の布石?

ライフスタイル

 

今月7日、タクシーで新しいサービスの実証実験が始まった。これまでは目的地に着くまで分からなかった運賃を事前に確定する「事前確定運賃サービス」だ。参加するのは日本交通、国際自動車、大和自動車交通、第一交通産業の4つの事業者グループ44社。実験は10月6日まで行われる。

 

すでにいくつか用意されているタクシー配車アプリをダウンロードして乗車地と目的地を指定し、条件が合致したら運賃が表示されるので、あとは「利用する」ボタンをタップすればタクシーがやってくる。途中で渋滞にはまって時間が掛かっても運賃は変わらない。日本のタクシーではあまりないだろうが、外国人にとっては言葉が伝わらないことで料金を吹っ掛けられることもないという利点もある。

 

このうち日本交通では、子会社のジャパンタクシーが今年3月から、これとは異なる新しいサービスを展開している。ジャパンタクシー・ウォレットというのがそれで、国内最大級のタクシー配車アプリ「全国タクシー」の新機能として登場した。アプリにクレジットカードなどの支払い情報を事前に登録しておき、タクシーの後席に備え付けられたタブレットで専用ボタンを選び、表示されたQRコードを読み取ると、目的地に着く前に自動的に運賃が支払われる仕組みだ。つまり降りる時の現金の受け渡しやクレジットカードのサインなどが不要となるので、さっと降車できる。領収書は後ほど専用サイトからダウンロードできるという。日本のタクシーしか知らない人の多くは、この2つのニュースを見て「タクシーも進化したなあ」と思うかもしれない。しかし筆者はまったく逆の感想を抱いている。

 

 

■利用者にとって意味のない意地の張り合い

 

このコラムでわが国におけるタクシーとライドシェアの対立問題について書いたのは1年前。過疎化や高齢化に悩む地方の移動手段としてライドシェアは有効と書いたが、タクシー業界は「危険な白タク」として認めようとしない。タクシーの事故率が全自動車平均の1.5倍以上になることを自分たちの団体のウェブサイトで公表しつつ、危険を理由に排除しようとしている。

 

しかし最初に紹介したタクシー業界の新しい試み、具体的には運賃の事前確定や自動決済は、どちらもライドシェアが何年も前から導入していることだ。それをまったく新しいサービスと宣伝している。どうしてもライドシェアを評価したくないのかもしれないが、日本のガラパゴス社会もここまで来たかと逆に感心してしまう。

 

それに事前確定運賃サービスの実証実験を行うのは東京23区と武蔵野市、三鷹市だけ。昨年の初乗り料金値下げに続いて、またも東京限定だ。おまけに3000円以上でなければ事前確定が適用できないという、なんとも高飛車な態度を取っている。全国タクシーのジャパンタクシー・ウォレットも、アプリの名前からすると全国展開しているように見えるけれど、ウェブサイトの説明を見たら、現段階では東京都23区と武蔵野市、三鷹市で運行されているタブレット搭載済の日本交通車両約4100台となっている。やはり東京オンリーなのだ。

 

今のタクシーが大都市でしか満足なサービスを提供できないことは、今回紹介した新しいサービスと実証実験も見事に証明している。なのにタクシー業界は、これらがやがて全国展開されていくと匂わせることで、全国規模でのライドシェア排除を叫び続けている。

 

ウーバーのシステムを活用した自家用有償旅客運送事業、つまりライドシェアは、京都府京丹後市に続いて北海道中頓別町にも実証実験の形で導入された。どちらが地方の移動問題に向き合っているか、説明するまでもないだろう。

 

利用者にとって意味のない意地の張り合いは今すぐ止めて、大都市はタクシー、地方はライドシェアという二元体制を確立してほしい。

 

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森口将之

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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