なぜ「奇形が生まれる!? コンビニ弁当」というエセ記事が生まれてしまうのか?

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桑満おさむ

なぜ「奇形が生まれる!? コンビニ弁当」というエセ記事が生まれてしまうのか?

■日本における奇形児の出産頻度が増加している、とデマを流す人がいる

先日、妙な説(乳製品の発がん性や寿命を短くする)をネット上の記事として披露していた方の著作を読み返したところ、

 

「奇形が生まれる!?コンビニ弁当」

 

という見出しに続いて、

 

「人間でも増えている奇形児出産」

 

という派手な小見出しが記されていました。

 

一次ソースあるいは引用した論文があるはずなのに論文のタイトルを明記しない、食品系の専門家の健康記事(ブログではありません、記事です)に対する批判をブログを書きました。

 

関連エントリー:「フードプロデューサーさま、健康に関する異説を唱えるなら、せめて1次ソースを調べてからにしてくださいませ。

 

この奇形児出産頻度が高まるというセンセーショナルな内容が書かれた書籍『じつは怖い外食』(南清貴著、ワニブックス、2014年初版)では、しっかりと元ネタを表記していた著者(妙な説を記事にした方と同一人物)。その姿勢に心の隅で「ごめんね、キツイことブログで書いて」と反省しました。でも、やっぱりこの著者は疑似科学・ニセ医学の常套手段を上記の著書の中でも使っていることに気づいてしまいました。

 

注意:「奇形児」という言葉は医療現場では通常使用しません。また、この言葉で苦しんだり、悲しい経験をした方・親御さんもいらっしゃるでしょう。今回取り上げた本の著者がしきりに使用しているため、不本意ながら使用します。

 

 

■1999年は1.48%、2010年には2.31%と上昇している奇形児出産頻度!?

確かに、フードプロデューサーさんが著書の中でおっしゃるように日本産婦人科医会先天異常モニタリングによれば、奇形児の出産頻度は上昇傾向にあります。このフードプロデューサーさんの見解によると、コンビニ弁当に含まれる保存料や酸化防止剤、着色料、グルタミン酸ソーダ(味の素とか)などの添加物、高脂質食が影響しているとは考えらえないだろうか?ということです。

 

www_jsog_or_jp_PDF_59_5909-246_pdf

(前述論文より。確かに年々先天異常出産の頻度は増えていますけど……)

 

このグラフに2010年のデータは含まれていませんが、横浜市立大学先天異常モニタリングセンターがその後のデータを公表して、確かに頻度は2.31%になっている……余談ですが、私の出身校です。

 

でも、フードプロデューサーさんである著者さんの見解についてですが、

 

「コンビニ弁当は先天異常出産頻度に影響していません!!」

 

その理由は単純で論文中にも原因がはっきりと書かれています。発生率が上昇した大きな理由として医学の進歩があります。赤ちゃんはもちろんのこと、母体に対しても影響の少ない画像診断技術の発展により、1997年以降は心臓血管系の形状異常が多数発見されるようになったのです。

 

「画像診装置を使用しての検査が普及したことによって異常を見つけやすくなり、その結果1999年以降は先天異常と診断される出産頻度が増えただけ」

 

ってことです。フードプロデューサーさんは著書で、コンビニ弁当を餌にした豚は頭が2つある、尻尾が3本ある赤ちゃん豚を出産したという風説が書かれており、人間においても奇形児の出産というと、見た目でわかる奇形を想像させる流れで文章は綴られています。しかし、もとの論文は「先天異常児の出生状況」を調査したものであり、見た目の「奇形児の出生状況」ではありません。本当か嘘かわからない豚の奇形を読者にイメージさせる文章構成は悪質です。

 

 

■ニセ医学に騙されないための女性向けの記事がありました

「mamanoko」という、子育て中の女性あるいは出産前・妊娠中の方向けのサイトがあります。記事で「危険な『ニセ医学』にだまされないで! 覚えておこう、家族から幸せと健康を奪う『ニセ医学』の4つの特徴」というものがあり、ニセ医学の特徴として、

 

特徴1.ものいいが極端で扇情的

特徴2.かんたんに断言する

特徴3.精神論が多く、親を責める

特徴4.ふつうの医学を否定する

 

と要点をうまくまとめています。マーティン・ガードナー、ロバート・アーリック、カール・セーガンなどが疑似科学・ニセ医学の見破り方を著作に書いています。「mamanoko」はぜひ多くの方に知っておいてもらいたい、ニセ医学を見破るコツをスッキリまとめています。

 

フードプロデューサーさんの著書では、特徴1の「極端で扇情的」、特徴3の「親を責める」手法を使用しています。加えて、さらなるインチキ医療の特徴である、

 

「疑似科学を主張する方は自分に都合の良いデータだけ採用する」

 

という手法も見事に使っています。

 

 

■お約束の「遺伝子組み換え農産物」もしっかり批判しています

疑似科学・ニセ医学方面の方はなぜか「遺伝子組み換え農産物」を非科学的な論法で一方的に嫌っています。確かに自然界の一般的な進化の過程以外で、新しい遺伝子構造の生物が生み出されることに対して不安・恐怖を抱くことは普通の反応です。

 

「遺伝子組み換え」といえば槍玉にあげられるのがモンサント社です。遺伝子組み換えトウモロコシを餌として与えられたラットに乳がんなどの異常が多発したという、多くの方が一度は目にしたと思われる写真があります。恐怖を誘う写真を添付して読者の興味を引く記事を二次・三次利用することは疑似科学・ニセ医学一派が情報拡散するときの常套手段です。

 

悪貨は良貨を駆逐する的にインチキ話は真実より拡散されがちです。

 

ニセ医学のさらなる特徴として、

 

「擬似科学・ニセ医学の権威とされている方って、なぜか古い論文を使用する傾向があり」

 

その論文が現在どのような評価を受けているかさえ調べていないことが多いです。

 

その異常が発生したラットのショッキングな写真の元となった、遺伝子組み換え食品でラットが発ガンしたという話のソースとされている論文は「Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize」(Food Chem Toxicol. 2012 Nov;50(11):4221-31.)です。この論文、変な点に気づきませんか? “Retraction”と記されていますよね。つまり「撤回」されているんです。

 

実験結果が間違っているならば、それはそれで問題ですけど、

 

「疑似科学・ニセ医学論の方の特徴である、統計学が不得意だった」

 

ということに「論文撤回」は起因しています。この研究では遺伝子組み換えではない餌でも、しっかりとガンが発生していて、遺伝子組み換えの餌を食べたラットと統計学的に差がなかったんです。STAP細胞の件で話題になった小保方晴子さんがそうでしたが、論文の取り下げってかなり珍しいことで、論文を掲載した医学雑誌を多数発行しているElsevier社の査読システムの問題も指摘されています。合計200匹のラットを実験に使用していますが、各々の条件を変えた場合異常が見つかったラットは10匹にしかならないという実験で統計学的な処理をしようとしたSeraliniさん、苦しい言い訳をしています。

 

「論文が載ったFood and Chemical Toxicologyの内部にモンサント社に勤めていたい人がいたんで、その圧力で論文を取り下げられた!!」(前記CBS NEWS記事内のより抜粋した文章の大意)……疑似科学・ニセ医学系の方がこれまたお得意とする「自分が認められないのは巨大陰謀組織の圧力で」って台詞ですね。じゃあ、最初から他の学術誌に投稿すればよかったじゃん、Seraliniさん。

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桑満おさむ

「地元密着型」というコンセプトで1997年目黒区で開業。 専門は泌尿器科ですが、専門以外の病気であっても「五本木クリニックに相談しよう!」と思っていただけるクリニックを日々作りあげています。 美容皮膚科・美...

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