3割の社会人「同僚の反応が気になり」休めない…あれ?「有給取得」って法律で定められてるんじゃないの

ビジネス

 

 

皆さんは年次有給休暇を取得できていますか? 皆さんの周りの人はどうでしょうか? 先日『同僚の反応気になり「有給」取れない 社会人の3割』という記事がネットで話題となり「そりゃそうだろう」というコメントを集めました。

 

なかには「3割どころでは……」という声もありました。実際のところ、厚生労働省が毎年実施している「就労条件総合調査」によると、年次有給休暇の2016年の取得率は48.7%と半分以下に留まっています。

 

年次有給休暇は、使用者が労働者に与えなければならないと労働基準法(39条)で定められており、違反した使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。法律で定められ罰則まであるのに、なぜ取得率が5割にも満たないのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の弁護士がご説明します。

 

 

■有給休暇取得率が低いのは「周囲への配慮」が原因?

 

年次有給休暇を労働者に与えることは使用者の義務です。一方、取得させる義務はありません。つまり“年次有給休暇を与えたが取得されなかった場合”は、使用者には責任はないのです。

 

なぜ労働者はせっかく与えられた年次有給休暇を取得しないのでしょうか。独立行政法人労働政策・研修機構が2010年に実施した「年次有給休暇の取得に関する調査」によると、年次有給休暇を取り残す主な理由のトップ3は次のようになっています。

 

1.    病気や急な用事のために残しておく必要があるから:64.6%

2.    休むと職場の他の人に迷惑になるから:60.2%

3.    仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないから:52.7%

 

1以外は、いずれも職場に遠慮して取り残していることがうかがえる結果となっています。そして、取得率の高い事業所ほど1の割合が高く、取得率の低い事業所ほど1の割合が低いという結果になっています。
なお使用者は“年次有給休暇を取得するタイミングの問題で事業の正常な運営が妨げられる場合”は、その日の年次有給休暇の取得を拒否することができます。これを「時季変更権の行使」といいます。しかし調査結果をみる限りでは、時季変更権の行使が、年次有給休暇の取り残しに与えた影響は見受けられません。

 


■使用者に「有給休暇を強制的に取らせる義務」はない

 

そうすると、やはり労働者が空気を読んで年次有給休暇の取得を自重しているということなのでしょう。使用者は労働者が有給休暇を気兼ねなく取得できるようにする努力義務を負わないのでしょうか? 取得しにくい雰囲気を作ったことに対する罰則はないのでしょうか?

 

この点について、使用者は「有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と定められています。この規定は使用者の努力義務を定めたものであって、この規定に反して不利益な取扱いが行われた場合、直ちにその取扱いが無効となるわけではありません。

 

しかし「不利益な取扱いが全く無効にならないか」というとそういうわけではありません。その措置の趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱など、諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、労基法が労働者に年次有給休暇を取得する権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合、無効となります。

 

先に紹介した調査結果の他の回答には「上司がいい顔をしないから(33.3%)」とか「勤務評価等への影響が心配だから(23.9%)」という点が、有給休暇取り残しの理由として挙げられています。
不利益な取扱いを行う制度があるわけでも、実際にそういう取扱いを受けたわけでもなく、不利益な取扱いを受けるかもしれないと心配して年次有給休暇を取り残す労働者がいるからといって、その使用者が違法であると考えるのは難しいでしょう。それでは、年次有給休暇の取得率を上げるために労働者に出来ることはあるのでしょうか。

 

 

■秋の臨時国会に注目──実現すれば年間で「5日」休日が増える?

 

法的な側面からいうならば、とにかく取得してしまうことに尽きます。説明したとおり、法的には労働者が自重して取り残すことは問題となりません。取得したら不利益を受けたとか、不当に取得させてもらえなかったというような場合でなければ年次有給休暇を取得する権利を侵害されたとはいえません。

 

もっとも、その「とにかく取得する」ができないことが最大の問題であることも理解できます。旅行サイトを運営するエクスペディア・ジャパンの調査によると、2016年の日本の年次有給休暇取得率は、世界主要国の中で最下位のようです。ここにも日本人の「常に周囲への配慮を怠らない奥ゆかしい国民性」があらわれているといえるでしょう。

 

日本人のマインドが切り替わらないのであれば、法改正が必要です。実はいま(2017年8月時点)、労働者に年次有給休暇を取得させることを使用者に義務付ける改正労働基準法案が審議されており、秋の臨時国会で継続審議されることになっています。

 

この改正法が成立すれば、年10日以上の年次有給休暇が発生する労働者について、そのうち、5日については年次有給休暇が発生した日(基準日)から1年以内に、労働者ごとに、使用者が時季を定めて年次有給休暇を付与しなければならないようになります。

 

「たった5日?」と思われるかもしれません。しかし、年間の休日が5日増えると考えてみてください。実現すれば、働き方を変える大きな一歩となることは間違いありません。

 

監修:リーガルモール by 弁護士法人ベリーベスト法律事務所 

 

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弁護士

河合淳志

弁護士。法科大学院卒業後、弁護士法人ベリーベスト法律事務所に入所。「お客様本位、お客様目線、迅速な対応」を職務信条とし、常に手続や交渉、訴訟等の経過は速やかに報告し、依頼者の意向を確認しつつ、助言を行...

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