FAXはもはや“産業遺産”なのか──日本国内で見られるガラパゴス的な進化
FAXっていま必要? そんな素朴な疑問を確かめるべく、日本におけるFAXのニーズをシトラス編集部が調査しました。改めて歴史を振り返りつつ、国内で大きなシェアを占める、パナソニック、ブラザー、シャープの3大メーカーに取材。その結果わかったことは、日本のFAXはガラパゴス化していた!ということでした。
■現在、誰がどう使っているのかメーカーに聞いてみた
近年のFAXの利用状況を総務省の平成27年度版の情報通信白書を参考に調べてみました。平成26年の時点で、41.8%の世帯がファクシミリを保有していることがわかります。グラフで見てみると、ピークを迎えていた平成21年の57.1%から、保有率は下降傾向にあります。
取って代わるように保有率を伸ばしているのがスマートフォン。平成22年から26年のあいだで、6倍以上の伸びを見せています。
下降傾向にある、とはいえ未だ半数近くの家庭がファクシミリを保有しているようです。米国では、その普及率は1ケタ台とも聞きますが、それに比べると底堅い需要を維持している印象です。
それでは、なぜ日本の世帯でファクシミリが必要とされているのでしょうか? 実際に、誰がどのように使っているのか、直接メーカーの方々に話を聞いてみたところ、それぞれが同様の認識を持っていました。
スマートフォンを所有しないご年配の家族と連絡を取ったり、不動産屋での図面確認や花屋での発注手続きなど個人事業主によるニーズがあります。また、簡易的なコピーとしてご利用いただいていることも多いです。(パナソニック)
SOHOや店舗といったビジネスでのニーズが底堅いです。ブラザーの家庭用ファクス複合機は、コピー・プリント・ファクスに加えて電話機能を1台にまとめることができる点から、家庭からビジネスまで広く利用されています。(ブラザー)
高齢者層の通信手段として、通信販売や地域サークルでの連絡手段としても活用されています。また、店舗や病院、小規模な事務所などでの需要も底堅いものがあることから、急激にFAXに対するニーズがなくなるとは考えておりません。(シャープ)
これまで日本で使われてきた方法が、高齢者の多くに未だ根づいていることが大きいようです。また、個人事業主にとってはこれからも欠かせないビジネスツールと言えるかもしれません。
■FAXが振り込め詐欺を防ぐ?
ファクシミリの新製品情報について、聞いたことはありますか? テレビCMでちらりと見かけることはありますが、iPhoneの新機種情報ならいざ知らず、最近のファクシミリがどう変わったのか詳しくを知っているものは編集部内にはいませんでした。
そこで今回、取材をお願いしたメーカーから新製品の情報も教えてもらいました。2010年代のファクシミリのトレンドはどうなっているのでしょうか。
Panasonic|パナソニック
オレオレ・振り込め詐欺を撃墜! 社会問題と向き合う家庭用ファクシミリ
KX-PD102 series
http://panasonic.jp/fax/
パナソニックが現行でラインナップしている機種には「迷惑電話対策機能」が全機種に標準装備されています。高齢者需要に照準を定め、液晶の画面も大きくハッキリ視認できます。さらに上位機種は、送られてきたファクシミリの紙面をスマートフォンに画像データとして転送できるなど“スマホ連携”も徹底的に強化しています。
Brother|ブラザー
クラウドやアプリと連携する“ビジネスクラス”な一台
MFC-J5820DN
http://www.brother.co.jp/product/printer/inkjet/mfcj5820dn/
こちらは個人事業主の方々におすすめしたいモデルです。独自のアプリ「Brother iPrint & Scan」でスマートフォンとファクシミリ間のデータ共有をスムーズに。さらにDropboxなどのクラウドサービスにもファクシミリのデータを転送できるので、同僚と共有、外出先でタブレットなどからも確認ができます。
SHARP|シャープ
セキュリティと使いやすさは業界随一! 高齢者の視覚・聴覚を徹底サポート
UX-AF91CL-2
http://www.sharp.co.jp/fappy/
振り込め詐欺対策機能を搭載したファクシミリの上位モデルとして、シャープは「迷惑電話フィルタ」を備えたモデルを販売中。警察や自治体などから提供された迷惑電話番号情報のデータベースを活用し、自動で着信拒否の設定ができます。さらにディスプレイの文字表示の大きさ、聞き取りやすい着信音など、高齢者が使ううえで便利な機能が充実しています。
スマートフォンへの連携はファクシミリ本来の機能からイメージしやすいですが、振り込め詐欺対策だなんて、とてもガラパゴス的な機能だと思いませんか? 米国と比較して日本でいまだ根強いシェアを誇っているのは、メーカーがユーザーとしっかり向き合ってきた企業努力が大きいのかもしれませんね。