能力が低い人ほど自信たっぷりな理由、それは…

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社会に出てから気づいたのは、自信満々なやつほど、仕事ができないということだ。特に、セルフブランディング、人脈自慢、ソー活、自己啓発など、自分磨きに精を出す「意識高い系(笑)」はその最たるもの。ポジティブに自信たっぷりに振る舞うことは決して悪いことではないはずなのに、どうして、自分自身の能力を過信している人ほど、同じようなミスを連発するのだろう。

 

心理学博士・榎本博明氏の『薄っぺらいのに自信満々な人』(日本経済新聞出版社)では、自信過剰な人に見られがちな仕事上の問題点を指摘している。榎本氏によれば、もともと人間は、自分の能力を過信してしまう生き物だという。それも、その傾向は能力が低い人ほど、顕著に現れるらしい。2000年にイグノーベル賞を受賞した英国のダニングとクルーガーは、このことをある実験により証明した。彼らは被験者に対して、論理的推論のセンスなどのテストを実施し、同時に、テストの結果について自己評価させた。すると、下位4分の1に属する底辺グループの平均得点は、下から12%のところに位置するものだったが、底辺グループの自己評価の平均は下から58%、「自分には平均以上の能力がある」と思い込んでいたという。最優秀グループでは、そのような過大評価はみられず、むしろ逆に自分の能力を実際よりも低く見積もる傾向が見られた。能力が低い人ほど、自己を高く評価していることがわかったという。

 

能力の低い人は、ただ何かをする能力が低いというだけでなく、自分の能力の程度を把握する能力も低い。このため、仕事のできない人ほど自分の仕事に自信を持っているようにみえるという不思議な現象が起きてしまうのだ。物事を理解する能力の低さが自己認知も妨げるため、自分の能力が低いという事実にも気づかないのだろう。これは、「意識高い系(笑)」にも同様にいえる。

 

「意識高い(笑)」人々は周囲からどう見られているかを気にしながらも、自分が人からどう見られているかには鈍感である。よく見られたいという思いが強過ぎてかえって、みっともない姿をさらしてしまう。自分の言動が適切だったかどうかを自身で判断する「セルフ・モニタリング」が働いていない。今はSNSを使って安易に発信をしやすい環境であるため、「セルフ・モニタリング」できていない彼らの行動は、過剰な承認欲求に振り回されていて周りの失笑を招く。

 

榎本氏によれば、“できる”人ほど、悲観的であり、“できない”人ほど楽観的である傾向にある。これは、“できる”人ほど、あらゆる可能性を想定しているためだ。いろんなケースを頭の中でシミュレーションし、最悪の事態まで想定するから、“できる”人は不安にかられる。一方で、楽観的な思考の人はそれができない。さらに、“できる”人は自分より上の能力の人と自分を比べる「上方比較」をし、自分もそこに到達できるように努力するが、“できない”人は下の能力の人と比べて見下す「下方比較」をして安心しまう。このため、彼らの能力にどんどん差が生まれていく。人は劣等感を受け入れることによって成長していくといっても過言ではないのに、能力のないものは劣等感すら持っていないのだ。

 

では、能力がない自信満々な人と仕事をすることになった場合、一体どうすれば良いのだろうか。ダニングとクルーガーは自信過剰な人の認知能力を鍛えるトレーニングをさせる実験も行っている。認知能力が向上すると、成績下位グルーブの過大評価傾向は弱まり、底辺グループのひとたちの著しい過大評価傾向は改善されることになった。つまり、能力を高めるようにトレーニングさせれば、自然と自分の能力の低さに気づくことになるようだ。自分の実力をあまりに過信することで致命的なミスを繰り返す者には、鍛練あるのみ。自分の能力を高めるほど、自信を失っていくとは何という皮肉だろう。果たしてそれが幸せなことなのか不幸なことなのかは議論が分かれるところだが、表面的な「意識が高い(笑)」行動をやめさせ、仕事に真剣に取り組ませるより仕方ないようだ。

 

文=アサトーミナミ

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