ドライバーにもパートナーにも愛想を尽かされたホンダ。もはや信じて待つしかないのか…

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F1世界選手権第12戦ベルギーGPでの出来事だ。10番手からスタートしたマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソは、好ダッシュを決めて7番手まで順位を上げた。


ハイライトはここまでと言ってよかった。あとは為す術もなく後続の車両に追い抜かれ、(44周レースの)12周目以降は入賞圏外、すなわち11番手以下を走っていた。アロンソは「みっともない。本当にみっともない」と無線に向かって叫んだ。


レースが中盤に差し掛かる頃、チームメイトのストフェル・バンドーンがピットに入る旨の報告がアロンソにあった。するとアロンソは、「なんでそんなことするんだよ。唯一追い越せるクルマなのに」と不平を漏らした。とんだ皮肉である。


それから少しして、「雨は降るのか?」とアロンソは無線でチームにたずねた。ベルギーGPの舞台であるスパ・フランコルシャンは山間にあるため、天候が急変することが多い。そうなれば、路面状況の変化によって混乱が生じ、たとえ下位を走っていたとしても上位に食い込むチャンスが生じる。だから、アロンソは淡い期待を抱きつつ「雨は降るのか?」とたずねたのだ。


しかし、チームからの返答は「ノー」だった。「レーダーには何も映っていない」と、ピットウォールに陣取るエンジニアは告げた。するとアロンソは、「エンジンに問題がある」とチームに報告した。そう報告されれば、「ピットに戻って来い」と指示するしかない。


レース後、ホンダはピットに戻って来たマシンを調べたが、エンジンに問題はなかったという。「こんな遅いクルマ、乗ってられるかよ」ということだろうか。激しく叱咤されるより、冷淡に突き放される方がツライ。

 

 

■ホンダに冷淡なのはアロンソだけじゃない


2015年、2年残っていたフェラーリとの契約を捨て、アロンソはマクラーレン・ホンダに移籍した。「チャンピオンになるため」だ。開幕戦を控えたアロンソは「ホンダの新しい時代を一緒に始めたいと思った。マクラーレン・ホンダは父の夢だったし、僕の小さい頃の夢でもあった。チャンピオンになるためのベストな組み合わせだ」と熱く語った。


あの頃のアロンソは一体どこに行ってしまったのだろうか。3年経っても不甲斐ないパフォーマンスしか見せることができないホンダに、嫌気が差してしまったのだろうか。

 

アロンソは当初「ホンダの新しい時代を一緒に始めたい」と語っていた


冷淡なのはアロンソだけではない。タッグを組むマクラーレンからもホンダは冷たくされている。「マクラーレン・ホンダの名を再びF1で輝かせ、継続していく決意」をしたはずなのだが、そう語った当時のチーム代表はとっくにチームを去っている。いつまでもパフォーマンスが上がらないホンダに別れを告げ、新しいパワーユニットコンストラクター(ルノー?)と手を結ぶ準備をしているとも伝わる。

 


マクラーレンとホンダは互いに引かれ合ってパートナーシップを結ぶことになったはずだが、いまは家庭内別居のような状態に陥っている。ホンダ側はマクラーレンと一緒にやっていく覚悟を決めているようだが、マクラーレンの気持ちは離れているようだ。向こうから一方的に別れを告げられたら、ホンダはF1に居場所がなくなってしまう。F1に留まる意思はあるのに、使いたいと申し出るチームがないのだ(トロロッソと調整中とも伝わるが……)。

 

 

■来年以降の契約も反故にされ…


4月30日、ホンダはカスタマーパワーユニットを2018年からザウバーに供給する契約を結んだ。マクラーレンに加えてザウバーに供給することになれば、得られるデータは倍になり、開発は加速度的に進むはずだった。ところが7月27日、「双方の合意」により、ザウバーへのパワーユニット供給プロジェクトは白紙撤回された。ザウバー側の体制が変わった影響を受け、袖にされたのが実状だ(ザウバーはフェラーリを選んだ)。


元凶はホンダがマクラーレンに供給するパワーユニットのパフォーマンスが、決定的に不足していることにある。圧倒的なパフォーマンスを披露していたら、引く手あまただろう。マクラーレンだって冷淡にならないし、ザウバーだって一旦は結んだ契約を反故にすることはなかったはずだ(F1では政治的な力学が働くので一筋縄にはいかないが)。


パフォーマンス不足の原因は開発期間の不足にある。競合するメルセデスやフェラーリ、ルノーは入念に準備して現行パワーユニットを開発しているが、ホンダの開発は見かけ上1年、実質的には数年遅れている。進化の早いF1にあっては決定的なハンデで、このハンデを取り戻すために17年のホンダは、3作目のパワーユニットに大胆な設計変更を施した。それが裏目に出て、アロンソやマクラーレンの冷淡な態度を招いてしまっている。

 

相思相愛でパートナーシップを結んだマクラーレンとホンダだったが…


F1は結果がすべての世界であることは、ホンダも重々承知しているはずだ。悪いのはアロンソでもマクラーレンでもなく、F1という百鬼夜行の世界での立ち回り方も含めて、ものにできていないホンダにある。100%責任があるとは言わないが、不甲斐ない状況を招いたのは、他の誰でもなくホンダ自身だ。


自分で蒔いた種は自分で刈り取るしかない。ファンにできるのは、強いホンダが戻ってくるのを信じて待つことだけだ。
 

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世良耕太

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全...

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