駐車料金までノンストップでキャッシュレス。進化するETC、次の一手はカードレス?

車・交通

 

自動運転と並んで、最近自動車業界で話題になることが多いのがコネクテッドカー、つながるクルマだ。ただしコネクテッドカーという言葉が生まれたのはたしかに最近だけれど、つながるクルマという考えそのものは20年以上前からあった。その名はITS。Intelligent Transport Systems、つまり高度道路交通システムの略で、最先端の情報通信技術などを用いて人と道路と車両とを一体のシステムでつなぎ、安全で環境に優しく便利な交通社会を作っていこうというものだ。

 

ここには自動運転のように現在研究開発中の技術も含まれるが、すでに実用化されているサービスもある。そのひとつがETCだ。日本でETCの研究が始まったのは1993年。初めてのITS世界大会がパリで開かれた前の年になる。4年後には実験が始まり、2001年に正式に導入された。

 

そのETCが最近になって2.0に進化した。こちらは2010年から始まっていたITSスポットサービスを4年後に名称変更したもので、料金所のアンテナと交信するだけだった従来型と比べて、はるかに高速かつ大容量の双方向通信を実現。多彩な運転支援サービスを受けることができるようになった。

 

自動運転の世界では、車両が多く道路も複雑な都市部での安全性を高めるべく、他車やインフラの情報も取得する動きがある。これらはV2X(ビークルtoエブリシング)と呼ばれていて、自動車同士を通信でつなぐV2Vと車両とインフラをつなぐV2Iがある。ETC2.0はこのうちV2Iを世界で初めて運転支援に活用したシステムと言われている。

 

効果は徐々に出はじめている。たとえば2016年4月からは、それまで別々の料金設定だった首都圏の首都高速道路と東名高速など周辺の高速道路が連携した。従来の料金体系では、首都圏への交通集中を防ぎ環境悪化を食い止めるために作られた圏央道(首都圏中央連絡自動車道)のほうが割高になることが多く、存在意義が薄れていた。これをETC2.0を活用することで、圏央道の料金が首都高以下になるように設定したのだ。

 

さらに高速道路を走行中に休憩したいときに、インターチェンジの近くにある道の駅で休み、1時間以内に再び高速道路に戻れば、インターチェンジで出入りせずにそのまま走り続けたときの料金が適用されるという実証実験も行っている。今後は渋滞を回避するために別のルートを使った場合に料金を割り引くなどの制度も予定しているそうだ。

 

高速道路以外でのETC活用も始まった。その代表が駐車場の料金をETCで決済するというものだ。NEXCO東日本および中日本と首都高速が導入を考えており、NEXCO中日本では今年7月に静岡県で試行運用を行い、11月からは愛知県でも同様の試行運用を始めると発表した。駐車場料金の支払いもETCカードでできるようになれば、高速道路と同じように料金所で停止する必要がなくなるので、入口渋滞や出口渋滞が減る。スポーツ施設やコンサート会場など多くのクルマが一斉に会場から出るようなシーンで効果を発揮するだろう。早めの導入を進めてほしい。

 

ただし気になることもある。社会のトレンドはキャッシュレスからカードレスの時代に差し掛かっているように思えることだ。

 

たとえば鉄道の世界では、JR東日本のSuicaはカードを用意しなくても、スマートフォンに入れることでサービスが使える。自転車シェアリングでは3ヶ月前にこのコラムで紹介したように、中国の事業者がスマホのアプリで自転車利用可能なシステムを実用化している。飛行機だって搭乗券のQRコードを画面に表示してセンサーにかざせば乗ることができる。

 

ETCを含めて今のITSが直面する最大の課題はここにあると認識している。スマホ社会があまりにも急に訪れたからだ。セキュリティを考えれば専用カードを使ったほうが良いだろうが、多くの人はコネクテッドの主役はスマホと考えている。このトレンドにETCはどう対峙していくのか。次の一手を見守りたい。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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