パッシング専用だと思ってない? 実は多くの人が知らない「ハイビーム」の正しい使い方

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警察庁から2017年上半期 (1〜6月)の交通事故の状況が先月発表された。交通事故死者数は昨年同期に比べて減少しているものの、死亡事故の状況をくわしく分析したデータも発表されており、いろいろ参考になる内容があった。

 

まずシートベルトでは、当然ながら着用していない人の死亡率が高い。チャイルドシートについても同様だった。続いて警察庁が取り上げていたのが、薄暮時間帯の死亡事故が多いこと。特に日没時間が早くなる10〜12月に死亡事故が増えていた。夜間を含めると、昼間と比べて自動車対歩行者の事故の割合が高いことも分かった。

 

その中で興味深かったのは、ヘッドランプを上向きにしていれば事故を防げた可能性が高い事故が、実に半分以上の約56%に上っていたことだ。この資料では、ハイビームでは100m先まで照らすことができるのに対し、ロービームでは40mに留まることから、薄暮時や夜間に道路を横断する歩行者などの発見が遅れがちになり、それが事故に結びついていると報告している。

 

この結果を受けてインターネットでは「ハイビームのまま走り続けていたら歩行者や対向車が眩しく感じるから事故を誘発するのではないか」という書き込みが多く見られた。しかし法律上は、ヘッドランプはハイビームが基本である。ロービームの正式名称は「すれ違い用前照灯」、ハイビームは「走行用前照灯」とされていることからも分かる。日本特有のルールではなく、国際的にそうだ。警察庁のウェブサイトには、「ハイビームの上手な活用で夜間の歩行者事故防止」というタイトルのページがあり、そこには次のように書いてある。

 

「夜間、街灯が少ない暗い道などを走行する時は、前照灯を上向き(ハイビーム)にすることで歩行者などを遠くから発見することができ、早期の事故回避措置が可能となります。

 

 ただし、ハイビームは他の車両等を眩惑させるおそれがありますので、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか下向き(ロービーム)に切り替えてください。

 

交通量の多い市街地の道路などを通行するときは、前照灯を下向き(ロービーム)に切り替えましょう。」

 

つまり基本はハイビームであるが、歩行者や対向車、先行車などがいる場合はロービームに切り替えて使うというのが正しい使用法なのだ。

 

たしかに筆者のように東京23区内で生活していると、道路上に歩行者や対向車、先行車がいないという場面は、深夜・早朝を除けば皆無に近い。だからロービームで走り続けるというのは正しい。しかし日本中の道が東京と同じ状況ではない。地方の山道に入り込んだりすると、10分ぐらい歩行者はおろか対向車にも出会わないというシーンだってある。筆者はハイビームとロービームを使い分けることは知っているので、そんな場面ではハイビームで走り続ける。でももしかしたら、ハイビームはパッシング専用だと思い込んでいて、誰もいない山道でさえロービームで走り続けている人がいるかもしれない。

 

それ以上に恐れているのは、一部でハイビームかロービームかという二者択一の議論になっていることだ。これはクルマの世界に限ったことではなく、最近の日本では至る場面で見られる。政治家でさえ国会質問などで「イエスかノーかどちらかで答えよ」と平然と言ってのける輩がいるのだから呆れる。日本人の多くがスイッチ化しつつあることを恐れている。

 

人生はスイッチを切り替えるように、なんでもかんでも二者択一で決められるほど単純なものではない。クルマの運転も同じ。運転中に遭遇する場面は無限にある。それぞれの状況に合わせて的確に認知・判断・操作をしていくことが安全運転の基本だ。

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森口将之

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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