マライア・キャリーの炎上コメントから学ぶ「黄色信号でブレーキを踏む勇気」

人間関係

写真:ロイター/アフロ

マライア・キャリーの、ラスベガスで起きた銃の乱射事件へのコメント映像が炎上しているそうです。事件について追悼の意を表し、神妙に語るマライア。しかし、彼女がソファに横たわってコメントしていたこと、服装が真っ赤なボディコンだったこと、背景にクリスマスツリーがあったことから、批判のツイートが殺到しました。

 

 

■「サービス精神」が裏目に? マライアが陥った状況とは

 

話した内容(言語情報)と、表情や姿勢など(非言語情報)にギャップがある場合、私たちは非言語情報のほうを本心だと感じます。「ふざけている」「クリスマスツリーをバックに、何を言っても嘘くさい」といった批判が出るのも、ごもっともだと思います。一報を聞いた筆者も最初は同様に思いましたが、実際の動画を確認して考えが変わりました。そこには黄色信号で危険を回避できなかったような、私たちも日常のなかでやってしまいそうな状況が透けて見えたからです。

 

銃撃のニュースは、マライア・キャリーがイギリスでのクリスマスショーのプロモーションを行う予定の時間に速報として飛び込んできたそうです。彼女はラスベガスでもショーを行っていたため、番組側は事件についてコメントを依頼。サービス精神のある人だったら、貴重なプロモーションの時間を削ってでもOKすると思います。

 

こういった状況にあったことが知られても「せめてソファに座ったら?」という批判が出ました。その意見も、ごもっともでしょう。しかし、この夏ラスベガスで本物のマライアを見た筆者は「座らなかったんじゃない、座れなかったんだ……」と、当時の衝撃を思い起こしながら感じたのです。

 

 

■マライアは痩せて見えるよう最大限の努力をしていた?

 

 

ラスベガスでまず驚いたのは、マライアのポスター(写真上)。激太りしていることを事前に知らなかった筆者は、イメージとのギャップに驚愕しました。とはいえ、くびれたウエスト、セクシーさを強調した衣裳で「見ようによっては豊満に見えるかも……」という感想を持ちました。

 

しかしステージ上のマライアは、ヒールで歩くのも辛そうなほどの太り具合で、往年のファンである筆者にさえ、セクシー系の衣装が痛々しく見えました。あのポスターは、最も痩せて見えるポーズを研究しつくした結果の構図だったのでしょう(もちろん多少の加工もあるでしょうが……)。このショーはネットで話題になり、激太りしたマライアに対するネガティブな書き込みが殺到しました。

 

年齢と共に体重コントロールが難しくなった筆者も、人から太ったことを指摘される→ダイエットを試みる→うまくできない自分を責めて傷つく、といった悪循環を繰り返しているので、マライアの気持ちは多少わかります。おそらく彼女は大バッシングの後、ダイエットはもちろん、当面の対処として痩せて見えるメイクやポーズをプロとして徹底して研究したはず。

 

今回の炎上映像でマライアは、ポスターにも採用されていた「くびれが見える痩せポーズ」をとっていました。あのくびれを出す体勢は決してラクではないでしょう。不遜な態度でコメントしたのではなく、スタッフからOKが出た本番用のポーズを崩さないよう耐えていたというのが、本当のところではないでしょうか。

 

せめて座りなおせと思う人の気持ちもよくわかります。しかし、あんなボディコンシャスなニットを着た状態で座ったら、お腹の肉が段になるのは明白。プロとしても、女性としても勇気がいる行動です。

 

ラスベガスで筆者が観たコンサートでは、ダンサーが手をとる、抱え上げて運ぶという演出が多く、自分で動くのも辛そうだった印象があります。もしかすると、彼女は、あのときソファから起き上がるのも辛い状況で困惑していたのかも知れません。今回の事故に巻き込まれた人たちの気持ちを考えると、それでもやはり失礼だろうと思いますし、周りのスタッフの皆さんに「このままで大丈夫?」と気づいてほしかったという気持ちもありますが……。

 

 

■話す人の“背景”が私たちの認識に与える影響は想像以上に大きい

 

今回炎上した映像では、コメントをするマライアの背景にクリスマスツリーがありました。視覚が認知に与える影響は思っているよりも強力です。鎮痛な感想に対して「嘘くさい」と感じた人がいるというのも、ごもっともなのです。

 

筆者は、テレビに出演させていただくとき、事務所で撮影することも少なくありません。場所は決まって「本棚の前」。本棚の前に座ると“専門家”というイメージが強くなり、コメントの信憑性が強まるのを、スタッフの人たちは長年の経験でわかっているのでしょう。今度テレビで専門家が解説するシーンがあったら、ぜひ背景を確認してください。ほとんどのケースで、背景に本棚があるのを確認できるはずです。

 

 

■あなたは黄色信号で咄嗟にブレーキを踏めるか

 

今回のマライアの騒動では「せめて座るべきだった」という意見が多くありました。しかし、私たちは咄嗟(とっさ)に、勇気が必要な選択ができるものでしょうか。筆者がマライアの立場だったら……急な依頼を断ることも、スタッフさんたちが苦労して作ってくれたポーズを崩すことも、三段腹を晒しても座り直すことも、流れを止めて仕切り直すことも、できなかったでしょう。「あれ、このままじゃマズいかも!?」と気づいても「どうしよう!?」と思いながら、そのままにしてしまうのです。

 

黄色信号で止まれない──そんな状況は、ある日突然やってきます。そのときに、素早い判断をして、思いきって仕切り直しをすることが、あなたはできるでしょうか。今回の騒動では、勇気ある軌道修正の大切さを学びました。そして、炎上を目の前にしても「もしかして事情があったのかも」と、立ち止まって考える余裕を持ちたいと思いました。これもなかなか難しいのですが……。

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コミュニケーション研究家

藤田尚弓

All About 話し方・伝え方ガイド。企業と顧客のコミュニケーション媒体を制作する株式会社アップウェブを経営。言語・視覚の両面から「伝わる」ホームページやパンフレットなどの制作を通し、日々コミュニケーション...

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