“人間ドライブレコーダー”登場で身近になるカメラ…撮影が犯罪となるのはどんな場合?

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メガネ型や腕時計型など、身につけて持ち歩く「ウェアラブルカメラ」にもさまざまなタイプが登場しています。いまや“人間ドライブレコーダー”さながらに、目の前の風景を撮影し続けることも可能になりました。撮影という行為は、シャッターを切ったり録画ボタンを押したりと、特段の挙動を要するものでなくなってきています。

 

気軽に撮影できることは便利ですが、反面、写り込んだ人の権利を不当に侵害してしまうおそれがあります。今回は、みなさんにもっとも身近であろうスマートフォンのカメラの使用で考えられる、違法になってしまう場合とそうではない場合について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が説明します。

 

 

■カメラでの撮影が犯罪となる場合は?

 

ひとくちに違法と言っても、刑事の場合と民事の場合があります。刑事的に違法な行為は「犯罪」となり、刑に処せられる可能性があります。民事的に違法な行為は損賠賠償や差止を請求される可能性があります。

 

撮影に関して、主に問題となるのは次の4点です。

(1)迷惑防止条例違反

(2)軽犯罪法違反

(3)名誉毀損罪

(4)侮辱罪

それぞれについて説明しましょう。

 

 

■服を着た状態での撮影でも“卑わい”ならば罪に問われる

 

まず(1)の迷惑防止条例違反について説明します。条例は地方公共団体ごとに制定されており、条例の内容は地方公共団体によって異なります。例えば、東京都では次のとおりです。

 

何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。(5条1項柱書)

 

公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。(5条1項2号)

 

前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。(5条1項3号)

 

また、北海道の場合は、次の通りに定められています。

 

何人も、公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、正当な理由がないのに、著しくしゅう恥させ、又は不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。(2条の2第1項)

 

衣服等で覆われている身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。(2条の2第1項2号)

 

写真機等を使用して衣服等を透かして見る方法により、衣服等で覆われている身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。(2条の2第1項3号)

 

前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。(2条の2第1項4号)

 

何人も、公衆浴場、公衆便所、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態の人の姿態を、正当な理由がないのに、撮影してはならない。(2条の2第2項)

 

いずれの条例にも「卑わいな言動をすること」という項目が入っていますが、北海道では、これによって、着衣したスボンの上から臀部(尻のあたり)を撮影した者が有罪となった事例があります。この場合「裸を撮っているわけではないのだから」という話は通用しません。

 

 

■公共の場所でない場合、軽犯罪法違反の可能性あり

 

次に、(2)の軽犯罪法について説明します。軽犯罪法では撮影を直接禁止するような条項はありませんが、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」(1条23号)を処罰する規定があります。条例との違いは、条例では公共の場所での行為であることが要求されているのに対して、軽犯罪法では要求されていないことです。

 

 

■名誉を毀損する画像や侮辱する画像をSNSにアップすると犯罪に

 

(3)名誉毀損罪(4)侮辱罪については、撮影しただけではこれに当たることはないでしょう。名誉毀損罪にあたるのは、土下座している人をスマートフォンなどで撮影しSNSにアップしたような場合です。侮辱罪に関しては、撮影した写真に写った人を、侮辱するコメントとともにSNSにアップしたような場合などに成立する可能性があります。

 

 

■損害賠償や差止請求が認められるのは?

 

次に、損害賠償請求や差止請求が認められる場合についてご説明します。前述の犯罪に当たる場合は、不法行為に基づく損害賠償請求が認められるでしょう。また、その画像を公表していた場合には差止請求も認められる可能性があります。この他、肖像権、プライバシー権、著作権などの権利を侵害するような撮影や、撮影が禁止されている場所での撮影は、損害賠償請求が認められる可能性があります。

 

肖像権が問題となる場合は、その人物をフォーカスして撮影したような場合です。画像を公開しなくても、撮影しただけで肖像権の侵害に当たる可能性があります。なお、雑観の中にたまたま写り込んだような場合は、肖像権を侵害していないと判断されることもあります。

 

著作権は、芸術作品などの著作物を撮影した場合です。こちらも撮影しただけで著作権の侵害にあたる可能性があります。その他、高級レストランなど撮影が禁止されている場所で撮影を敢行した場合、店側から債務不履行に基づく損害賠償を請求される可能性があります。

 

 

■法律を覚えなくても常識に照らしてマナーを守れば大丈夫

 

法律からルールを覚えるのは大変なことだと思います。ひとつアドバイスさせていただくならば、常識的にNGだと思われるケースは法に抵触することが多いと覚えておきましょう。当然の話ですが、適切な常識感覚を身につけマナーを守って撮影することが一番の回避策です。

 

しかしいま、スマートフォンの登場で写真撮影から公開まであまりにも手軽にできるようになってしまいました。スマートフォン登場以前の常識を、デジタルネイティブの人たちは窮屈に感じることもあるでしょう。そのために昨今の盗撮や著作権侵害が絶えないならば「法律で禁止されているんだよ」と伝える機会は必要なのかもしれません。

 

 

監修:リーガルモール by 弁護士法人ベリーベスト法律事務所

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山田耕平

山田耕平

弁護士。法科大学院卒業後、弁護士法人ベリーベスト法律事務所に入所。「誠心誠意」を職務信条とし、依頼者の不安や負担に対して真正面から向き合い、お客様目線を忘れず、最良の解決方法の提供に努める。趣味はサッ...

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