「ロングセラー=良い商品」ではない!? 30年前のシャーペン「スマッシュ」が売れるワケ

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出典:「ぺんてる スマッシュ」公式サイトより

例えば、ヴィンテージのギターには、とても良い音が鳴るものがあるように、何にせよ、昔のものだから今のものより劣るということはない。もちろん、昔のものが何でもいいなんてことはないのも当たり前だ。ヴィンテージだからといって必ずしも良い音がするとは限らない。

 

 

■30年前の製品が大人気のワケ

 

ぺんてるのシャープペンシル「スマッシュ」が、30年前の製品なのに、今の中高生に大人気というのも、別に驚くような話ではない。ノック式シャープペンシルを開発し、製図用シャープペンシルの名作をいくつも作っているぺんてるが、製図用シャープの良さを一般向けにリチューンした、言わば、勉強のプロたる学生のために作ったシャープペンシルなのだから、その基本性能が違うのだ。そして、「書く」という行為は30年前も今も、やっていることは同じ。ならば、それが昔に作られたものでも関係なく書きやすいし、当時から丈夫だったのだから、今でも当然丈夫だ。優れた道具というのはそういうもので、だから、長く使えるし、ずっと使いたいと思える。

 

 

■売れ続けている=良い製品、とは限らない?

 

しかし、面倒くさいのは、ロングセラーだからといって、必ずしも良い製品だとは限らないというところだ。何となく、長い間売れ続けているから、当然凄い製品だと思いがちだけれど、そうでもない製品もいっぱいある。それは、沢山売れているから良い商品とは限らないというのと同じで、何となく、多くの人が、使いにくさとかを感じながら、でも他に良いものがあることを知らなかったり、そのジャンルの中では一番ましな製品だったりで、使い続けてしまうということは、意外によくあるのだ。そうでなくても、他に良い製品はいっぱいあるけれど、どうしてもそれでなければ、という人がいるから、作られ続けているというモノもある。

 

実際、私たちは「良い」から使うとは限らないのだ。「馴染んでいる」から使う、「他に知らない」から使う、「いつも手元にある」から使う、モノを使うというのは、案外、そういう事だったりする。私は中学生の頃、家にあったクラシックギターを使ってフォークソングを弾こうとして、あまりにも上手くいかず挫折した経験があるが、その時、フォークギターを使えば、もっと簡単に弾けるなんて考えもしなかったのだ。知らないというのは怖いことだし、逆に、クラシックギターでせっせと練習したから、後でフォークギターを持ったら凄くうまく弾けたという人だっているから、知らないということがいい方に回ることもある。

 

例えば、カッターナイフは、それはそれは凄い日本の発明品なのだが、その便利さを知らない人も多い。あらゆる刃物は、使っていると切れなくなるから、研いだり替えたりと、メインテナンスが必要。しかし、カッターナイフは切れなくなったら刃を折れば、あっという間に新品の刃になる。最近は、刃を厚くして、折らなくてもある程度は切れ味が持続するタイプも出ていて、それはそれで良いけれど、しかし、カッターナイフの愛用者は、30年、40年前の製品をずっと使い続けている人が多いし、オルファ、NTカッターといった専門メーカーも、当時のままの製品を出し続けている。機能的な完成度が高い道具は、新しいものも古いものも、出来る事は変わらないから、手に馴染む方を選ぶわけだ。

 

 

■復刻されても、実は買わない消費者

 

ただ、私たちは勝手だから、例えば、昔の名品が良かった、復刻してくれれば買うのにとか言う割に、本当に復刻したら、買わない人が多くて、結局、また入手できなくなるというケースも多い。かつて、秋本治著「こちら葛飾区亀有公園前派出所」で、GIジョーの説明をしている両さんがいきなり怒りだすシーンがあった。「復刻したら欲しい欲しいと言っていたくせに、お前らが買わないから!」というようなことが、しっかりと描かれていた。

 

結局のところ、「良いもの」が欲しいという人は少ないのだ。「スマッシュ」のヒットは、現役の学生に人気だから、本気で使いたい人が買うから、きちんとヒットになる。でも、どれだけ便利な製品であっても、今使っている「これ」でもいいやと、多くの人が思う。

 

現行製品よりカッコよくて、使える製品なんて、実際はいっぱいあるけれど、それを復活させても大して売れないのが実情。それは、古書価格が高騰している本を復刻してもベストセラーになるわけではないのと同じ。でも、だからこそ、大ヒットを狙うのでなく、良いモノを残して欲しいと思うし、合理化と効率化のためのマイナーチェンジには慎重になって欲しいと、メーカーにはお願いしたい。意外に、作ってる人たちが分かってなかったというケースだってあるのだ。ラミー「サファリ」のクリップが銀になったの、今でも、なんだかなあと私は思っているよ。

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納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

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