日本有線大賞、50年の歴史に幕──国民的ヒット曲が生まれない時代の寂しさ

エンタメ

 

1968年に始まって以来、長く日本の音楽シーンの道標だった賞レース『日本有線大賞』が50回目となる2017年の開催をもって終了する。その大きな要因は「視聴率の低下」。

 

日本有線大賞はその名の通り有線放送のリクエスト件数を基準にして授与される賞。有線放送の特性上、どちらかと言うと最新のポップス的な楽曲よりは全世代で共有できるような演歌、歌謡曲に重きがおかれる傾向にあった。

 

 

■賞レースの数はむしろ増えている

 

同じく有線放送のリクエストを軸にする賞レースだった『全日本有線放送大賞』および後継の『ベストヒット歌謡祭』も2007年に有線放送会社『USEN』が手を引いて、読売テレビ単独主催となった後「音楽表現が多様化し、従来の基準で優劣をつける審査はふさわしくない」と内容を大幅に変更している。

 

今回『日本有線大賞』が終了したことをもって有線放送系の音楽賞レースは消滅してしまったわけだ。2017年は国民的なヒット曲というものがついに登場しなかった。ランキング1位になった曲でも、そのアーティストの熱心なファン以外はまったく知らない。

 

有名人の不倫や、相撲取りの内輪もめばかりが取り沙汰され、音楽は何の話題にもならない風潮だ。たしかにこんな時代に“国民にもっとも支持された曲”を選出するなんてナンセンスなことなのだろう。

 

とは言え、けっして音楽賞レースというもの自体が無くなりつつあるわけではない。一般の認知度は別にして『ビルボード・ジャパン・ミュージック・アワード(※1)』(2009年~)、『CDショップ大賞(※2)』(2009年~)などここ10年ほどの間に、賞レースの数はむしろ増えている。

 

(※1)ビルボード・ジャパン・ミュージック・アワード:米国4大アワードのひとつである“Billboard Music Awards”の日本版。米国同様各チャート年間1位の楽曲を表彰する「チャート部門」と週間チャートにおいて1位を獲得した100組以上のアーティストを対象に行われた一般投票において、上位を獲得したアーティストに贈られる「アーティスト部門」などで構成

 

(※2)CDショップ大賞:メジャー、インディーズを問わず、CDショップの現場で培われた目利き耳利きを自負し、選考に際して個人的な嗜好に偏る事なく、店頭から全国に向けて発信出来るような賞をきっかけにブレイクが期待される“本当にお客様にお勧めしたい”作品を“大賞”として選出

 

それぞれが、ジャンルの分類や対象となる層が非常に細やかに設定されていることが特徴だ。

 

昔のように国民的なスターやヒット曲を顕彰しようというものではなく、リスナーに寄り添った音楽、商業的な価値観のもとでは埋もれてしまいがちな音楽に焦点を当てようという内容の賞レースが増えているのだ。

 

これはこれで善いことだと思う。しかし、かつての賞レースが持っていた国家的なスケールの一体感や晴れがましいセレモニー感がよみがえることは……よほどの動乱があって社会が再構築でもされない限りもうないだろう。

 

「歌は世につれ世は歌につれ」

 

という時代は終わった。昭和の歌謡曲を愛し、それを生業にする僕としては寂しいことこの上ないが。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

シンガーソングライター/音楽評論家

中将タカノリ

シンガーソングライター、音楽評論家。2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。深い文学性と、歌謡曲、アメリカンポップスをフィーチャーした音楽性で独自の世界観を構築している...

中将タカノリのプロフィール&記事一覧
ページトップ