選択的夫婦別姓を嫌う女性は「自分と同じ苦労を味わわせたい」無痛分娩反対論者と同じでは?

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後藤百合子

 

先月、サイボウズの青野社長が、選択的夫婦別姓を求めて東京地裁に提訴する方針を発表しました。

 

また、来年最高裁判所の判事に就任予定の宮崎裕子弁護士が旧姓使用を表明。「旧姓を使うことは当然だと思っています」とコメントしたとされ、選択的夫婦別姓制度議論が再燃の兆しを見せています。

 

結婚によって苗字を変えた経験がない男性が「妻に旧姓使用を認めたら離婚が簡単になって将来捨てられてしまうかもしれない」という不安を抱えて反対するというのならはまだわかりますが、一部の女性までこの制度の導入に反対する理由が私にはずっとわかりませんでした(「選択」できるわけですから、変えたい人は同姓でいいのです)。

 

これについて、友人のFacebookである方(男性)が「みんな我慢しているのにお前は何だ」という感覚ではないか、とコメントをしたのを読み、ああ、そういうことかと、妙に納得しました。

 

そこで思い出したのが、日本における無痛分娩の普及率の低さです。

 

この記事によると、日本における無痛分娩の割合は諸外国と比べて圧倒的に低く、フランス80%、アメリカ61%に対し、2.6%しかありません。アジアですとシンガポール16%、香港9%と欧米に比べて低くなっていますが、シンガポールでも香港でも、産科のベッド数が少なく空きがない、長期入院すると高額になる、風水で縁起のいい日を選びたいなどの理由で計画的帝王切開が多く、香港の私の知人は全員帝王切開で子供を産んでいました。それを考慮すれば、日本の2.6%という数字がいかに低いものかわかると思います。

 

上記の記事では、なぜこれほど無痛分娩の出産率が低いのか、の疑問に対して「産科麻酔医が不足していることと、日本人特有の「痛みに耐えてこそ美徳」という考え方があると言われています」と回答しています。需要があれば麻酔医の数も増えるでしょうから、「痛みに耐えてこそ美徳」が先であるのは自明でしょう。

 

どれだけお産が大変だったか、どれだけ痛かったか、という話を延々と語られた経験が私にも何度かありますが、彼女たちの多くは「これだけ大変な思いをして産んだ私」にとても満足しているようにみえました(もちろん「もうこんな痛い思いをするお産はこりごり」という人もいました)。

 

そして「やっぱり痛い思いをしなくっちゃ本当に子供を産んだことにならない」という一部の出産経験のある女性たちの無言の圧力が、多くの未出産女性に積極的に無痛分娩を選ばせない選択をさせているような気がします(ひいては少子化の原因の一つになっていると思っています)。

 

青野社長のインタビューによると、結婚による改姓でメリットは何もなく、デメリットばかりだったと言います。私も最初の結婚で改姓して(夫が前の結婚で婿養子として改姓して離婚したため「もう二度とあんな思いはしたくない」と譲らなかったので私が改姓)やはりデメリットしか感じませんでした。

 

現在の夫は外国人のため改姓の必要がなく、結婚を決めた際に姓の問題でまったくストレスがありませんでしたし、子どもと私は苗字が違いますが、それで子供が不幸な思いをしたことは一度もありませんので、夫婦別姓のメリットしか感じません。

 

逆に、もしも選択的夫婦別姓より夫婦同姓制度のほうが合理的でメリットが多いと考える人のほうが多ければ、他の国でもそうなっているはずです。これは自然分娩にも共通して言えると思います。

 

「私がこれだけ大変な苦労をしたんだから、あなたもするべきだ」という毒母かひと昔前の姑いじめのような意識から抜け出し、「若い世代の女性たちにはこんな苦労をさせたくない」と考える女性が増えれば増えるほど、選択的夫婦別姓制度の実現性も、無痛分娩の出産率も高まるのではないでしょうか。

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後藤百合子

大正5年創立、今年で100周年を迎える繊維会社の4代目社長。 日本語、英語、中国語(北京語と広東語)のトライリンガル。現在、シンガポールでも会社を経営中。 ツイッターアカウントは@sinlife2010

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