【弁護士が明かす】裁判官が「お金を払え!」と判決を出しても、お金が払われないことが多い現実

マネー
【弁護士が明かす】裁判官が「お金を払え!」と判決を出しても、お金が払われないことが多い現実

依頼者「勝訴すれば相手はお金を払ってくれるんですよね?」

 

弁護士「払ってくれないこともありますよ」

 

依頼者「ええっ!? でも相手の財産を差し押さえることができますよね?」

 

弁護士「どこに、どんな財産があるかご存知ですか? 知らない場合は探さないといけないですよ。見つからなければ、差し押さえはできませんよ」

 

依頼者「ええ~~~!!」

 

弁護士と依頼者さんとの間でよくある一コマです(本当によくあります)。

 

裁判で金銭を支払えという判決をもらっても、相手方が任意に支払わない場合は、強制的に支払わせることはできません。裁判所は、判決で「払え」と命令するしか権限がないからです。これに応じるかは相手次第です。ただし、「払え」の判決がある場合は、強制執行の手続きをとることができます。これは、相手の意思に関わりなく、裁判所が強制的に財産を差し押さえたりしてくれる手続きです。

 

しかし、そもそも相手に財産がなかったり、あってもどこにあるか不明な場合は、強制執行すらできません。また、国や裁判所は相手の財産を探してくれるわけでも、情報を提供してくれるわけでもありません(財産開示という財産内容をオープンにさせる手続きもありますが、これも相手の自己申告に任せざるをえません)。これが日本の現状です。ちなみに、判決で「払え」と命令してくれる金銭のなかには、交通事故などで発生する損害賠償金、売買代金、給料、養育費といった色々な性質のものがありますが、基本的にはどのような性質の金銭でも現実は先に述べたとおりです。

 

なぜ、判決をもらっても回収できない事態が発生するのでしょうか。

 

 

結局、相手が、

 

(1)支払意思がない
(2)支払う能力がない

 

からです。

 

(1)の支払意思がない場合は、強制執行をして回収することになります。しかし、上記のとおり、相手の財産の在り処が分からないと強制執行の申し立てをすることができません(ただ、分からないけれど、例えば相手が口座を持っていそうな金融機関の目星をつけて強制執行することはあります。運良くヒットすることを狙うわけです)。財産の在り処を調査する方法は、弁護士にお願いする弁護士会照会、先ほど触れた財産開示手続き等があります(他には興信所に依頼する方法もありますが、個人情報である財産の在処を直接調べることは不可能です)。しかし、いずれの方法も不十分な部分が多いのが現実です。

 

(2)の支払う能力がない場合はどうしようもありません。日本の制度では、そのような人を強制的に労働させることもできません。まさに「無い袖は振れない」「カラの袋は真っ直ぐには立たない」のです。

 

このような現状を前提として、金銭の支払いを求める場合、どうすればよいでしょうか。

 

 

まず、相手が支払うと言っているタイミングを逃さないのは大事です。交渉や裁判の中で例えば相手が半分だったら払いますと言ってくることがあります。「半分? ふざけるな!!」という気持ちはいったん抑えて、最終的に回収の可能性があるのかどうかよく考えて交渉すべきです。

 

次に、支払いを求める前にしっかりと調査することです。支払いを求めて紛争になると、相手は財産を隠そうとします。そうなる前に少しでも情報収集しておくのです。

 

さらに視点を少し変えて、紛争になる前段階、つまり契約を締結する場合などでは、相手に保証人を付けてもらったり、担保権(不動産などの財産から優先的に回収する権利)を設定しておくといったことも考えるべきです(もっとも、個人間の取引で担保権まで設定するのは現実的でない場合が多いですが……)。

 

ところで、紙幅の関係で詳しくは説明できませんが、養育費の場合は他の権利と違って厚く保証されていたり、給料債権は先取特権(「サキドリトッケン」と読みます)という優先弁済権があったりします。また、法律上相手のみではなく、その周辺の人々(勤務先、親、共同不法行為者等々)に対しても請求することができる場合があります。

 

このように、お金を請求するという一見単純なことでも、様々なことを考える必要があります。自己流ではなく弁護士さんに相談しながら進めて行くのが大事です。

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弁護士今西順一

弁護士今西順一

港区新橋にあるリーガルキュレート総合法律事務所に所属する弁護士。 徒然とマイペースにブログを書きながら、世間様にお役に立って貰えるような弁護士になるべく、日々精進してまいる所存です。

弁護士今西順一のプロフィール
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