板谷由夏・42歳のエイジング論

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美しさが、凄みを増している。若い頃も綺麗だったけれど、今年42歳になる彼女の風貌には、大人の華やかさと、知性と、品格が加味され、何より生命力に溢れている。それは、日々を重ねることを心から楽しんでいるからこその成熟。彼女の話を聞いていると、知性と経験こそが、女にとっての最高の美容液だとわかる。

 

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「身体の声を聞くようになった」板谷由夏が美しい秘密とは?

 

 

■この子は、友達とさよならすることはないんだな

 

 

物事の終わりを、さよならの瞬間を、常に心の片隅で想像してしまう。そんな子供時代を送ったおかげで、由夏さんの心にピッタリと張り付いてしまったセンチメンタリズムは、子供ができたことで消えたりすることはなかったのか。そのことも聞いてみた。

 

「結婚して子供を産むまでは、なんとなく地に足がついていないというか、どこかフワフワしている感覚はあったんです。友達にもよく言われました。『由夏って凧みたい。手を離したら、すぐどこかに飛んで行ってしまいそうな感じがする』って。小さい時に転校を繰り返したおかげで、ずっと同じ場所にはいられない体質なのかも、なんて自分でも思ったりしました。

 

でも、長男が、小学校に入ってからずっと同じ学校に通っているのを見ると、『ああ、この子は、仲良くなった友達とさよならすることはないんだな』なんてしみじみしてみたり。今ちょうど、根付いた土地が故郷になっていく感覚が、私にも出てきたところです。

 

もともと、私にとっては、故郷っていうのは、お父さんとお母さんがいる場所で、地名じゃないんです。でも、息子たちには今住んでいる場所が故郷になる。それを考えると不思議だし、私も、子供が生まれたことで、今住んでいる場所に根が生えていくような、そんな予感はありますね。まだ実感じゃないところが、残念なんですけど」

 

生きていくための自問自答は、今もまだ続いている。まるで性癖のように、切なさと刹那の瞬間を愛してしまう彼女は、圧倒的な幸福を体験した瞬間に、それがいつか失われてしまうことを想像して、泣きそうになる。

 

「子供と一緒にいると、本当に楽しくて幸せな瞬間というのが、たびたび訪れます。でも、私の場合、『あー、幸せーっ』って痺れるような幸福を感じながら、次の瞬間に、『あ、でもいつかこの幸せを手放す時が来るんだ』って気づく。そうすると、『はーっ……』って、幸せと同じぐらいの悲しみが押し寄せるんです(苦笑)。だから、今一番苦しいのは、家族との幸福な思い出が増えること。

 

言葉で説明してもわかってもらえないかもしれないけど、私の中には常に、相反する二つの感情が共存するんです。幸福が大きければ大きくなるほど、悲しみも大きくなる。だから苦しい。……本当に、自分でも面倒臭い女だと思います(苦笑)。そうは見えないから、そこも厄介で。でも、しょうがないんです。そういう性格なので。幸福だけにどっぷり浸かることは、さすがにもう諦めてます……。ふぅ(苦笑)」

 

文字にすると、つい(苦笑)が多くなってしまうけれど、そこは笑い上手の由夏さん。ややこしい話をしても、別段重たい雰囲気にはならず、揺れる感情の表現には、ちょっとした一人芝居を見ているような華やかさがある。結局、想像力や感情の振り幅の大きさは、俳優として役を演じるために不可欠な才能でもあるのだ。そして、それは子供時代のタフな環境をサバイブしていくために培われた能力だったとも言える。

 

「子供たちのおかげで、私の中にある孤独が軽減されたということはないけれど、毎日、私が生きる意味はもらっている気がします。というのも、子供たちの日常が、私が生きてることの代弁になっているから。私が朝ごはんやお弁当を作って、衣類を洗濯して、子供たちと会話する中で、子供はすごいスピードで成長していく。それが、私の毎日を表現してくれている。子供たちを見ていると、私の毎日はムダじゃないって思えるから、それはすごく私にとっての励みになっています」

 

 

■40歳になる時、受け身じゃない何かを始めていたかった

 

シャツ¥18000、パンツ¥25000/ともにシンメ その他スタイリスト私物

由夏さんは現在、SINMEというファッションブランドをプロデュースしている。30代も後半になった時に、彼女は思った。年齢を重ねることに抵抗はない。でも、今の受け身な自分のまま、40代を迎えてしまったら、自分は成長できないのではないだろうか、と。

 

「40歳を迎えたときに、何をやっているかを考えなきゃって思ったので、その時は、ちょっと焦りました(笑)。でも、38で2人目を産んで、子育てをしている時も企んではいたんです。そろそろ次の一歩を進まないとダメだぞ、って。

 

女優の仕事は常に受け身で、台本を渡され、プロデューサーや監督やスタッフの方の仕事で、ゼロから何かを生み出したことがないのはよくないと思った。じゃあ何が自分にできるだろうと考えた時、浮かんだのが洋服だった。

 

洋服は、小さい頃からずっと好きで、雑誌も好きで。私が10代の頃はスーパーモデルブームだったから、奮発して洋雑誌を買っては、ケイト・モスの瞳の奥に、フォトグラファーやメイクさんが映っているのを見つけて、『このたった一枚の写真を、どんな風に撮影しているんだろう?』って、あれこれ想像していました。身長も、ケイト・モスが170cmだっていうから、『それくらいなら、私もありますけど』って思って(笑)。

 

まずは自分ができそうなモデルから入ったんですが、もともとファッションが好きなだけではなく、裏方志向でもあるんです。それで、40になったらファッションブランドをやろうと決めて、ファッションで、昔から変わらず好きなのは何かなと自問したら、ジーンズとシャツに行き着いた。ジーンズとシャツなら、70になっても80になっても着られますよね。それで、『いくつになっても “新芽” が出ますように』という想いを込めて、ブランド名を、“SINME” としました」

 

ムクムクと湧き上がってきたエネルギーを、具現化するパワーが生まれたのは、ある意味年齢の賜物であると由夏さんは言う。

 

「若い頃は、具現化する術を知らなかったのか、単にパワーが足りなかったのか、人間力が足りなかったのか。そこはよくわからないですが、40というのが、自分が本気でやりたいと思ったことを形にできる年齢なのは確かです。周りの友達にも結構いるんですよ。それまでは、上司の庇護のもと、上の人に引き合わせてもらったり、引き立ててもらう立場だったのが、年下の仲間や部下を従えて、自分たちでお店を始めた人が。面白い年齢になってきたと思います」

 

さて、リアルな年齢の話が出てきたところで、由夏さんに、今月のFRaUのメインテーマである、「アンチ・アンチエイジング」について、どう思うかをストレートに聞いてみた。由夏さんは、やや、眉間にシワを寄せながら、「私はそもそも、エイジングに抵抗はないですし、美容に関して、“アンチエイジングしなきゃ” と意識したこともないです。具体的にはどこをどうやってやるの??という感じ」とこれまた申し訳なさそうな表情で言った。

 

「私も、“アンチ” なんて強い言葉は使わないですが、アンチエイジングに賛成ではないことは確かです。だって、私が扱っているシャツだって、ジーンズだって、ある程度の時間を経てからのほうが絶対いい味が出るんです。宝石だって、靴だって。新品のピカピカなものに価値があるわけではない。女だって、同じだと思う。

 

年齢を重ねていくことは楽しいし、私は、歳をとればとるほど心が自由になる自分を実感しています。これからまだ感性が磨かれたり、人間力が増したりするのではないかしら。そんな期待もしているんです。私、そういう点では強欲なので(笑)」

 

WOWOWの『映画工房』という番組でMCを務める由夏さんは、今年の2月にアカデミー賞授賞式をレポート、その模様を番組内で紹介した。

 

「『ELLE』で主演女優賞にノミネートされたイザベル・ユペールが、すっごく素敵なおばあちゃんだったことが印象的でした。64歳の彼女は、映画では、47歳の役を違和感なく演じていましたが、実際に見たらすごくシワシワで、それがカッコいいの。

 

ああいう大人の女性を見ると、歳を取ることはマイナスじゃないどころか、むしろプラスしかないと思いますね。だって47歳の役を演じるに当たって、もし候補に47の女と、64の女がいたら、私が監督なら、絶対に64の女を起用します。もちろん、47と言って通用する印象であることは前提だけれど。どう考えても、64のほうがうまいに決まってるから(笑)!」

 

由夏さんが苦手そうなちょっとややこしい質問をぶつけてみたら、また、いい音が鳴った。最初から最後まで、一度も、聞いたことがある音はなく、由夏さんが、年齢を重ねてますます余人をもって代え難い、オリジナルの存在感を身につけていっていることに気づかされて、一緒にいるだけでワクワクする。

 

彼女が、日常生活の中で一番好きな場所は、キッチン。ご飯を作る時だけでなく、ものを考える時も、キッチンに立つ。そこで自問自答すると、スーッと心が澄んでくる。

 

「故郷を持たない私の、絶対的な居場所として気持ちが落ち着くのは、何と言ってもキッチンです。それに、私の役割にはベースに “母ちゃん” があるので、子供たちにご飯を作らないといけないし(笑)」

 

ジーンズは、時間を経てからのほうがいい味が出る。宝石だって、女だって、それは同じ(笑)。

 

 

■PROFILE

板谷由夏 Yuka Itaya
1975年生まれ。’94年からモデルとしての活動を開始し、’99年に『avec mon mari』で映画デビュー。その後多くの映画・ドラマで女優としての経験を積む傍ら、『NEWS ZERO』(日本テレビ系)ではキャスターを、『映画工房』(WOWOW)ではMCを担当。最近では『セシルのもくろみ』(フジテレビ系)での演技が話題に。また、’15年には自身のファッションブランド『SINME』をスタート。私生活では2児の母でもある。

 

※FRaU2017年11月号より一部抜粋

 

●情報は、FRaU2017年11月号発売時点のものです。
Photo:Saki Omi Hair&Make-up:Haruka Yuki Stylist:Hirohiko Furuta Text:Yoko Kikuchi Composition:Sachico Maeno

 

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