【中年名車図鑑|5代目 マツダ・カペラ】欧米でMazdaの知名度を高め、国内の販売台数を押し上げた、マツダブランドの立役者

車・交通

大貫直次郎

マツダの中核ミディアム車であるカペラは1987年にフルモデルチェンジを敢行してGD/GV型系に切り替わる。ボディタイプは4ドアセダンと2ドアクーペ(C2)、5ドアハッチバック(CG)、5ドアワゴン(カーゴ)、5ドアバンと豊富にラインアップ。さらに最新の車速感応型4輪操舵システムやコンプレックス型スーパーチャージャー付ディーゼルなど、独自の先進機構を積極的に採用していた。今回は教習車としてお世話になった人も多いであろう、第5世代のカペラで一席。

 

 

【Vol.50 5代目 マツダ・カペラ】

 

車両レイアウトをFF方式に一新し、1982年9月にデビューした第4世代のGC型系マツダ・カペラ。当初は好調なセールスを記録したものの、クルマのハイテク化が急速に進展した1980年代中盤になると、市場における同車の存在感はやや薄れつつあった。次期型カペラには、他社にはないハイテク機構を積極的に組み込む必要がある――。そう判断したマツダの開発陣は、走行性能に磨きをかける先進システムを精力的に企画していく。さらに、ボディタイプや内外装の演出にも徹底して工夫を凝らした。

 

 

■先進技術を積極的に導入

 

1987年に登場した5代目マツダ・カペラ。6ライトウィンドウを組み込んだ欧州風のスタイリッシュボディが特徴的

基本骨格については、入念なモーダル解析を行ったうえで新設計したスーパーモノコックボディを採用する。ホイールベースは従来比で65mmほど延長(2575mm)して居住空間を拡大。また、前後トレッドも広げて走行安定性を向上させた。懸架機構には専用セッティングの4輪ストラットを基本に、コーナリング時に後輪の台形リンクがトーアウトを打ち消すSS(Self Stabilizing)サスペンションをセット。上級モデルには舵を切るフロントタイヤに対してリアタイヤを電子制御で同・逆位相に動かし、高速安定性(同位相)と小回り(逆位相)の両方を高める車速感応型4WS(4 Wheel Steering)を設定する。また、工場出荷時に当たっては4WSの全数を検査する体制を整えた。


搭載エンジンにも新機構を組み込んだ。従来型で好評を博していたRF型1998cc直列4気筒OHCディーゼルには、量産エンジン初のコンプレックス型スーパーチャージャー=PWS(プレッシャー・ウェーブ・スーパーチャージャー)の過給器を装着。82psにまで出力アップすると同時に、従来のディーゼルエンジンにはなかった回転のスムーズさと力強いパワーの盛り上がりを実現する。ガソリンエンジンについても、可変慣性吸気システムのVICS(バリアブル・イナーシャ・チャージング・システム)を採用したFE型1998cc直列4気筒DOHC16V(140ps)やTICS(トリプルポート・インダクション・コントロール・システム)を組み込んだF8型1789cc直列4気筒OHC12V(EGI仕様97ps、キャブレター仕様82ps)、熟成を図ったB6型1597cc直列4気筒OHC(73ps)を設定した。トランスミッションには5速MTと4速AT(上位モデルはEC-AT)をラインアップ。駆動機構にはFFのほか、プラネタリーギアードセンターデフとリアビスカスLSDを組み合わせるフルタイム4WDを採用した。


エクステリアに関しては、滑らかな曲線を多用した欧州調のスタイリッシュなデザインで構成する。空力特性も重視し、国産車初のインナーサッシュドアを採用するなど優れたフラッシュサーフェスボディを実現した。ボディタイプは6ライトウィンドウを組み込んだ5ドアハッチバックと4ドアセダン、スポーティな2ドアクーペを用意。また、時期を遅らせて発売する予定の5ドアワゴン/バンの開発も着々と進めた。内包するインテリアについては、外装と同様にラウンディッシュな造形のインパネやドアパネルなどを採用して上質かつシックなデザインで仕立てる。シートの演出にも凝り、グレードごとにラグジュアリー/高級ルースクッション/スポーティといった仕様を用意。ワゴンについては5名乗りの2列式シートのほかに、格納式サードシート(進行方向とは逆向きに着座)をラゲッジ部に備えた7名乗りをラインアップした。

 

 

 

■ワイドバリエーションで市場デビュー

 

CG(City Gearの略)と名付けられた5ドアハッチバック。4WS、電子制御サスペンション(A.A.S.)など斬新なメカニズムも採用された


第5世代となるカペラは、GDの型式を付けて1987年5月に登場する。当初のボディタイプは前述の3種類で、市販時は5ドアハッチバックがCG(City Gearの略)、2ドアクーペがC2(Composite Coupeの略)のネーミングを冠した。注目の新メカである4WSは、CGのFE型エンジン搭載モデルに装着車が用意される。また、上位グレードには電子制御サスペンション(A.A.S.)も設定した。市場に放たれたGD型系カペラは“ベーシック&アドバンス”のキャッチフレーズのもと、斬新なメカニズムやヨーロッパ調のスタイリッシュなルックスなどで好評を博す。4WSの走りに関しては、コーナリング中にややクセの強い動きが出たものの、その先進的な走りは大きな注目を集めた。

 

2ドアクーペはC2(Composite Coupeの略)のネーミングが与えられた。アメリカでは「Mazda MX-6」として販売


マツダの新世代ミディアム車として市場から認知されたGD型系カペラは、デビュー後も着々と進化の道筋をたどる。1988年2月にはC2やセダンにも4WS装着車をラインアップ。同年3月には、ステーションワゴン/バン仕様のGV型系カペラ・カーゴを追加設定し、アウトドア志向のユーザーから人気を集めた。同年6月にはC2をベースにチューンアップを図った「∞(アンフィニ)」を300台限定でリリースする。1989年6月になるとマイナーチェンジを敢行。FE型エンジンは使用燃料のハイオク化および圧縮比の引き上げ(9.2→10.0)などを行い、最高出力がMT150ps/AT145psへとアップし、F8型エンジンはDOHC16Vヘッドやシーケンシャルインジェクションの採用などによって最高出力が115psへと向上した。


国内市場で意欲的に改良を施す一方、5代目カペラは海外マーケットでも重要な役割を担った。アメリカでは竣工したばかりのMMUC(マツダ・モーター・マニュファクチャリング・USA・コーポレーション。後のAAI=オート・アライアンス・インターナショナル)でカペラC2=「Mazda MX-6」を生産し、市場での売れ行きも好調に推移する。また欧州市場、とくに西ドイツではカペラ=「Mazda 626」がミディアムクラスの人気モデルに発展。auto motor und sport誌が行った読者が選ぶインポート・カー・オブ・ザ・イヤーでは連続選出され、これに驚いた日本の販社らがツアーを組んで現地に赴き、ドイツの道を走るカペラの多さに感心したという逸話が残っている。

 

 

■カーゴをメインモデルに据えて長寿命車に昇華

 

ステーションワゴン/バン仕様のGV型系カペラ・カーゴは1988年3月に登場。「カペラ・ワゴン」へと改称しながら1997年まで販売された


日本では1990年10月になると、市場の高性能4WDワゴン人気に即したカーゴGT-4WDを設定する。FE型エンジンにセンターデフ&リアビスカスLSD式のフルタイム4WD、強化した4輪ストラットサスペンション、フルカラーのバンパーおよびブラック塗装のウィンドウモールなどを組み込んだハイパフォーマンス版のGT-4WDは、リゾート型スポーティサルーンとしてRV志向のユーザーから好評を博した。その後も特別仕様車の発売などを敢行した5代目カペラだったが、1991年10月になると車種設定の大変更が行われる。マツダの販売網の拡大および同クラスの新型車の増強(クロノス/アンフィニMS-6/MX-6など)により、GD型系カペラのCG/C2/セダンがカタログから外れたのである。残ったのは、当時大ブームに発展していたワゴン人気に対応するためのGV型系カペラ・カーゴだけだった。


1994年8月になると、バブル景気崩壊後のマツダの車種戦略の見直しによってカペラのセダン(CG型系)が復活する。一方、カーゴに関しては従来型を継続生産。1994年10月にはマイナーチェンジを実施し、ワゴン仕様の車名を「カペラ・ワゴン」に改称する。そして、カペラ・シリーズ全体が全面改良する1997年まで、細かな改良を加えながら販売が続けられた。


1980年代終盤から1990年代初頭にかけてのマツダの躍進を支え、欧米市場でも“Mazda”ブランドの知名度を大いに高め、バブル景気崩壊後は地道にブランドの販売台数を押し上げた第5世代のカペラ。その存在意義は、マツダの沿革に燦然と輝いているのである。

 

 

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大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バ...

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