受験サバイバルにつながる…? 雑音の中で勉強すると、子供の集中力は上がるのか

最近よく聞く、子どもが食卓で勉強する「リビング学習」、その背景には、子どもたちを雑音に慣れさせるという配慮があるのだそうです。戦後、子ども部屋が普及し、静かな部屋で勉強することに慣れた子どもたちが、試験本番で会場内の雑音で気が散り、力を出し切れなくなってしまったことへの対抗策だとか。今は、小学校でも黒板のついた壁を教室間のパーテーションにして同じ空間のなかに数クラスを同居させるなど、オープンルームタイプを取り入れているところもあるようです。
「あえて雑音が多い環境に身を置き、集中力を高める」というこのようなやり方の背景には、集中力は育つものという考えがあります。
■集中力は本当に「育つ」のか?
一方、心理学の研究では、生まれつき注意の逸れやすい人と逸れにくい人がいることも分かっています。いわゆる「特性」や「気質」の部分です。つまり、集中力の有無は、ある程度、遺伝要素が強いという考えです。
これまでに色々なお子さんを見てきた経験を踏まえると、もともと持って生まれた特性に経験が上乗せされていくので、集中力があるタイプの子は、多少の雑音の中でも気が逸れにくいものの、気が散りやすいタイプの子は、軌道に乗るまでに時間がかかる印象があります。全ての子を一同にオープンルームに置いてしまうと、中にはさらに集中できない子も出てきてしまうのでは……というのが私の見解です。
■雑音に慣れる「メリット」
実際に最近の心理学の研究でも、子どもたちは大人以上に「快適に聞ける環境が大事」という結果が出ています。大人よりも子どもの方が、ざわざわした環境下での傾聴が苦手というわけです。教室内に多くの声が飛び交っている中で集中するのが難しいのは容易に想像できますが、たとえば、飛行機の音のようないわゆる「雑音」にさらされる場合でも、読解力が低下するなどの結果が分かっています。
とはいえ、子どもたちが大人になるまでには、雑音下でも集中力を発揮しなくてはいけない場面が多々あります。学校の試験や受験などはその代表で、そこには、常にある程度の雑音(鉛筆で書く音、咳払い、紙をめくる音など)が存在しますので、それらに慣れていくことはサバイバルにもつながります。
■雑音の中で勉強する意味はある?
勉強する際に、雑音があった方がいいのか、ない方がいいのか。判断が難しいところですが、雑音下での集中力は、大人に近づくにつれ磨かれていくことを踏まえると、子ども、特に小学生には高度なスキルだということは確かです。前述したように、その子の特性によっても出方が違いますので、まずは集中することが大事、それができてから、雑音下で慣らしていくことがポイントなのではないでしょうか。そうしないと、どっちみち集中できない状態に陥ってしまう気がします。
オランダ心理学会 認定心理士
佐藤めぐみ
子育て心理学が専門のAll About子育てガイド。オランダ在住。 育児相談室「ポジカフェ」主宰&育児コンサルタントとして、ママ向けのストレス管理、叱り方のノウハウをお伝えするため日々活動中。 著書: 「子...
佐藤めぐみのプロフィール&記事一覧