銚子電鉄、いすみ鉄道…。話題のローカル線は社長の気合が違う!

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野田隆

犬吠埼駅付近を走る銚子電鉄の電車。今後は、社長自ら運転する電車に遭遇するかも!?

銚子電鉄の社長が電車の運転免許を取得した。自社の運転士が慢性的に不足していることや、自ら運転士を兼任することで、お客様との接点を持ちたいと意気込んでいる、との報道があった。ただただ頭が下がる思いであり、こうした取り組みを耳にすると、今まで以上に、この小さなローカル鉄道を応援したくなる。

 

銚子電鉄は、沿線の少子高齢化、過疎化、東日本大震災以後の風評被害による観光客の減少など、逆風にあえいでいる。もちろん本業に全力を尽くしているけれど、それだけではなく、濡れ煎餅生産の副業に精を出したり、地元の銚子商業高校の生徒がクラウドファンディングで脱線車両の修繕費用を集めるなど様々な協力を得てきた。また、夏の「お化け屋敷電車」といった奇想天外な企画を立て、NHKのニュースで紹介されるなど何とか鉄道を活性化しようとの懸命な取り組みを続けている。

 

銚子電鉄は銚子~外川間の6.4kmを約20分で結ぶローカル線。「ぬれ煎餅」販売で話題になった

 

こうした社長を中心とした鉄道の活性化は、銚子電鉄だけのものではない。同じ千葉県を走る第三セクターのいすみ鉄道も集客努力には目を見張るものがある。元々は国鉄から見捨てられた木原線であり、かつては沿線の過疎化に加え、取り立てて観光地もないので、廃止はやむなしとの空気が強かった。しかし、公募社長の奮闘努力により、まずはムーミン列車で女性や家族連れの注目を集め、次には、旧国鉄形ディーゼルカーをJRから譲り受け、懐かしい列車の旅や日本の原風景ともいうべき里山の車窓をウリにした。観光地ではない平凡な田舎の風景であっても、それを逆手にとり、PRの仕方によっては充分人を集められるということを実証したのである。さらには、旧型ディーゼルカーをレストラン列車に仕立て上げ、地元のグルメを中心に多くの人に乗ってもらえる人気列車にしてしまった。

 

いすみ鉄道は里山の風景のなかに旧国鉄型のディーゼルカーを走らせ“懐かしい列車の旅”をウリにした

 

このいすみ鉄道と上総中野駅でつながっている小湊鐡道は、しばらくは静観しているかのように思われたのだが、2015年秋に里山トロッコ列車の運行開始を発表した。それも小型蒸気機関車の形をしたディーゼル機関車が牽引するという画期的なアイデアで一躍人気となった。車両の初期故障で、本格的な運行は2016年春からとなったものの、窓ガラスのないトロッコ風車両から眺める里山の車窓は、鉄道旅ならではのものと多くの来訪者に思わせた。小湊鐡道といすみ鉄道を乗り継ぐ房総横断の列車旅は魅力的で、モータリゼーションの発達ですっかり元気がなくなってしまった千葉の鉄道の中では、今や三つのローカル鉄道が牽引役を務めていると言っても過言ではないだろう。

 

小湊鐡道は今年の3月から里山トロッコ列車の運行を開始。いすみ鉄道とともに、房総横断の列車旅を提案

 

千葉県以外でも、お隣茨城県のひたちなか海浜鉄道が元気だ。旧型車両は、相次いで引退してしまったけれど、「高田の鉄橋」という新駅の開業で、新たな需要を喚起したほか、ひたちなか海浜公園までの路線延伸も実現が視野に入ってきた。右肩下がりの暗い話題ばかりが先行する地方のローカル鉄道にあっては、心強い限りである。

 

茨城県のひたちなか海浜鉄道は「高田の鉄橋」という新駅を開業した

 

ほかにも、秋田県の由利高原鉄道や鳥取の若桜鉄道が、公募社長のリーダーシップで活性化に取り組み成果を上げていて頼もしい。

 

その一方で、北の大地を走る鉄道会社は、日本でも有数の車窓風景を活かすことなく、暗い話題ばかりである。活性化するよりも路線の廃止ばかりを考える後ろ向きの姿勢。少しは、活性化に取り組んでいる小さなローカル鉄道を見習ってもらいたいものだ。地域や鉄道を愛するやる気のある人が社長や首脳陣にならないと、世の中のためにならないのではないかと改めて思う次第である。

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野田隆

野田隆

1952年名古屋生まれ。長年、高校で語学を教える傍らヨーロッパと日本の鉄道紀行を執筆。2010年、早期退職後、旅行作家として活動中。著書に「定年からの鉄道ひとり旅」「出張ついでのローカル線」「テツはこう乗る」...

野田隆のプロフィール
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