今、若い世代から人気! 懐かしの「ラジカセ」ヒットの裏に大いなる意志が…?

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多分、人類には、男女問わずスイッチをカチャカチャすると幸せになる性質が備わっているのだと思う。全員とは言わなくても半分くらいには。しかし、時代はデジタル化にしてもスマホ化にしても、スイッチから離れる方向に向かってしまった。もっとも、スイッチなんて日常生活の中ではそうそう沢山ある訳でもなく、かつては、部屋の照明だって紐を引っ張ったりしていて、だから、放送部やら視聴覚室やらが人気だったり。

 

 

■デジタル化で消えたスイッチ機能

 

そんなスイッチ人にとって「ラジカセ」は夢のような機械なのだ。最低でも、「再生」「停止」「録音」「早送り」「巻き戻し」「一時停止」「イジェクト」「ラジオのオンオフ」の8つのボタンがあり、さらに、ボリューム、トーン、チューニングダイアルといったつまみも付いている。しかも、それは全て、普通に使うだけでもフルに利用できるスイッチ達なのだ。ついでに、何と、ラジオが聴けて録音も出来る。高機能タイプになればなるほどスイッチの数が増えていく。そんなスイッチだらけの機械は、他にはアナログシンセサイザーくらいしかない。それは、今でもそうだ。当時のラジカセを知らない若い人が、今、ラジカセを見て「カッコいい」と思うのなら、それはデジタル化に押されて潜伏していたスイッチ人の感性が揺さぶられているのだ。

 

MDにせよ、CDにせよ、ラジカセの、あの「ガッチャン」と押し込むスイッチ感は味わえない。しかも、スイッチを押すという行為と、その操作がカセットテープを回すという動作が、感覚的に繋がりやすく、自分で操作しているという感覚が強い。ラジカセとカセットテープの面白さは、ここにある。テープが長いと長く録音されているという分かりやすさも、音楽を手にしている感が強くなる。手のひらサイズと適度な厚みのモノとしての質感と、その「モノ」の中身を好きに編集できる「ラジカセ」の機能。最近は、サンスイブランドの「SCR-B2」のような、Bluetoothスピーカーにラジカセの機能を載せて、しかもデザインは80年代を思わせるメカメカしさの製品が売れているというが、これも当たり前のような気がするのだ。

 

 

■音楽環境としての完成度の高さ

 

もちろん、もう少しまともな理由だって挙げられる。まず、ステレオタイプのラジカセのデザインは、オールインワンのモバイルオーディオシステムとして完成度が高いこと。だって、あれはミニコンポをさらに小型化して、どこにでも置けるようにした音楽環境そのものだから。似たようなコンセプトのBluetoothスピーカーはあるけれど、Bluetoothスピーカーで横幅が広いステレオオーディオ機器を作ると、デザインがどうしても間延びする。何より、大型化することで音質を上げなければと思うからか、輸送コストの問題か、価格も上がってしまう。その点、ラジカセの機能を組み込めば、その大きさに説得力が出るし、デジタルと関係なく音楽を再生できるし、価格も抑えられる。カセットのデジタル化もできて、ラジオも録音できて、何だか機能も満載だ。スペックだけで語る製品レビューが全盛の今風の製品だと言うことだってできてしまう。最近、アイドルのグッズにだって当たり前に使われるカセットテープを再生する環境が無いなら、1台買っといても損はしないだろう、というのが、ヒットの秘密だし、実際、損しない満足感がある。だって、スイッチがいっぱいあるから。

 

 

■「カチッ」という感触がもたらす幸せ

 

かつて、一世を風靡したパソコンゲームに、「MYST」「GADGET」という名作がある。これが、まあ細かいことを端折って、ざっくりと説明すれば、謎の街を彷徨って、そこで見つけた不思議な機械を操作する事を楽しみつつ、謎を解いていくという、もうほとんどスイッチ人のためのゲームだったのだが、これが世界中でヒットした。

 

こういう話をすると、それは「男の子っぽい」ネタだと言う人も多いが、そんなことはない。私は、体験的に、スイッチ大好きな女性を沢山知っているし、スイッチに特に興味ない男性も沢山知っている。男性原理とか抜きに、指先が求める、あの「カチッ」という感触で幸せになる人は沢山いる。今更ながらのラジカセのヒットの正体は、デジタル化で消えそうなスイッチの快楽を現代に蘇らせたいという大いなる意志なのだと、あくまで個人の意見ではあるけれど確信している。

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小物王

納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

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