残業サラリーマンも反抗期の息子も、人間より機械に注意されるほうが効果的!? AIに管理される弊害は?

人間関係

 

働き方改革が叫ばれているなか、ドローンで残業を監視しようという動きが出ているそう……どうやら、本気のようです。

 

これまで残業者への退社勧告は総務担当者などが対応していたそうですが、「担当者自身の残業が増える」「社員間の精神的軋轢を生む」といった問題があったのだとか。見まわる側の残業を減らすためにドローンを選択するというのは納得ですが、精神的軋轢の解決にドローンとはユニークです。人とのコミュニケーションよりも、機械とのコミュニケーションのほうが良い。そんなケースもあるのでしょうか。

 

 

■注意することによって関係性が悪くなる?

 

私たちには、自分の行動や選択を自分で決めたいという欲求があり、それを他人から強制されると反発したくなる傾向があります。「もう遅いから寝なさい」といった、正しい言い分であり自分のためになるアドバイスでも、つい心では反発したくなる。これは誰もが経験したことのある反応ではないでしょうか。

 

このようなコミュニケーションが続くと、注意された人は、注意してくれた人に対して不快感を抱くようになります。こういった感情は相手に伝わってしまいがち。結果として注意した側も不快になるというのはよくある話です。かくいう筆者も、こんな残念な体験を日常的にしている一人です。多くの中学生男子がそうであるように、我が家の息子もぐうたらです。叱言は言わないよう気をつけているものの「起きて」「早く支度しないと間に合わないわよ」などと促さない日はありません。

 

この「~しなさい」という促しをスマホアプリに任せることができたら……。ドローンでの残業監視に触発された筆者は、さっそく実験を開始しました。

 

 

■注意をスマホアプリに任せてみた!反抗期の息子の反応は?

 

まずは、朝、時間に間に合うように家から送り出す作戦からスタート。カウントダウン機能のあるアプリをいくつかを使ってみて、最終的に「Smile Timer」というアプリを選びました。

 

このアプリのいいところは、1分前のアラートに、「もうすぐ時間だよー」という小さな子供の声があること。催促による不快感を減らすのに、子供のたどたどしい声は最強のようで、いつもは「わかってるよ!」と怒る息子も反発する気力をそがれていました。残り時間3分になると好きなBGMを流せるという機能も秀逸です。BGMには運動会などでお馴染みの「クシコスポスト」をダウンロードし、無事にカウントダウンが終わると「時間だよー」と可愛らしい女の子が連呼してくれるよう設定しました。

 

いつものように朝グズグズしていている息子に、アプリによる催促を試してみました。初めは「何これ!?」と迷惑そうな顔をしていましたが、効果はテキメン。注意されて機嫌が悪くなるといったいつもの反応が見られないだけでなく、音楽効果で着替えの手が速くなっているのを母は見逃しませんでした。注意されてもアプリ相手なら腹も立たない、という仮説は間違っていないようです。連日繰り返されるアプリ攻撃に呆れられはしたものの、注意することによる軋轢が減るのを体感できました。

 

これに気をよくし、学校のチャイム音と入力した文字を読み上げるアプリを活用して「宿題やって」と言わなくてもよい環境を、そして睡眠アプリを使い「もう寝なさい」と言わなくて済む環境も設定。いちいち注意しなくていい生活は想像以上に快適で、楽しい会話だけでよい子育ては理想的だとも思えました。しかし2週間が過ぎると、ふと筆者の本能が告げたのです──「このままでいいのか」と。

 

 

■機械に管理されることで失われる感性はあるのか

 

筆者が感じた、漠然とした不安を言語化してみました。

 

  • 注意されたときの不快感情がなくなると「なぜ?」と考える機会が減りそう
  • 軋轢への対処が下手な子になりそう
  • 問題にぶつかったときに解決策をアプリに求めるような大人になりそう
  • ひらめきや勘といった人間ならではの感性が鈍い子になってしまわないか
  • 反発心が減ることで指示されて動くことに慣れ過ぎないか
  • 相手の異変に気づく力、見守る優しさなどが衰えないか

 

テクノロジーの発展は私たちに多くの恩恵をもたらすでしょう。例えば、勤怠管理をAI(人工知能)で行えるようになれば、メンタルヘルスのアラートを出してくれたり、有給の消化を促してくれたり、ときには遅刻を減らすべきだとアドバイスをしてくれたりといったことも可能になると思います。

 

その一方で、人間ならではの「心配する」「見守る」「声をかける」「相手の反応を見ながら対応を変える」といった繋がり方は、希薄になりそう。何事にも多少の弊害はありますし、筆者の心配など杞憂に過ぎないと思いたいのですが。やはり人に心配してもらったり、叱ってもらったりという経験は大事な気がするのです。

 

 

■アプリによる注意を母の注意に戻した結果

 

アプリに注意してもらう生活をやめて3日目。息子は母に名前を呼ばれるだけで、怒りながら返事をする子に戻りました。

 

どう解決したらいいものか……。真剣に考え抜いて採用したのが「名前を呼ぶときときはドラえもんのモノマネをする」という作戦。呼ばれただけなのに怒ってしまうという息子の反応は、「ウケる」「何それ!」といった反応に変化しました。注意を「しょうがないなぁ~」とドラえもん風にするようにしてからは、辛辣に言い過ぎることがなくなりました。

 

息子「もうドラえもんはいいよ」

母「だって、怒らせたくないんだもん」

息子「じゃあ、もう怒んないし」

 

親子関係も改善に向かっているようです。

 

注意する側の創意工夫や感性も大事なのだと気づかされました。いろんなものがAIにとって代わられる、もしかすると豊かで、もしかすると何かが足りなくなるかも知れない未来。そんな時代に生きるわが子に感性豊かな大人になってほしい。母はそう願ってやみません。

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コミュニケーション研究家

藤田尚弓

All About 話し方・伝え方ガイド。企業と顧客のコミュニケーション媒体を制作する株式会社アップウェブを経営。言語・視覚の両面から「伝わる」ホームページやパンフレットなどの制作を通し、日々コミュニケーション...

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