最後の節約!? 「献体すれば葬儀・お墓の費用がかからない」の誤解

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「家族だけの葬儀だったが、飲食を含めて100万円以上かかった」「火葬のみでも20万円以上」「お墓を建てたら150万円」と、葬儀やお墓については万単位で大きな額が動きます。近年は格安をうたう業者もありますが、破格の費用というわけではなく、むしろ安かろう悪かろうでトラブルになるケースも見られます。そんな中、このような噂が巷に出回っています。

 

「献体すれば葬儀・お墓の費用がかからない!?」

 

葬儀代等の節約の手段として、献体登録を希望する人が多くなっているそうです。

 

 

■増加する献体登録者と、その理由

 

そもそも献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究のために、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することで、「自分の死後、自らの身体をもって医学・歯学の教育と研究のために役立てたい」と志した人が生前から登録しておきます。

 

献体したい大学またはこれに関連した団体に生前に登録し、死後、遺族あるいは関係者がその遺志にしたがって遺体を大学に提供することで実施されます。

 

つまり、本人が希望していても、家族や関係者の同意がなければ献体は実行されることはなく、中には家族の一人でも反対者がいれば不可という厳しい条件を付している大学もあります。献体されたのち、遺骨が家族に返還されるまでの期間は通常1~2年、長い場合は3年以上かかります。

 

登録者は年々増加し、2017年3月末時点での登録者は28万人超え。10年前に比べて7万人も増加しているそうです。増加の理由は、献体の制度が広く認知されたこともありますが、献体すれば葬儀は不要、お墓の心配もいらない、と社会貢献の主旨から外れた意図で献体登録を希望する人も少なからずいるとか。大学側では本来の主旨に沿った意志のある人を受け入れたいという意向を明確に示し、また献体を受け入れたら処置・管理・火葬等まで相当の額を負担しなければいけないという事情もあり、事前面談等を徹底するようになりました。

 

 

■「葬儀費用はすべて用意してくれる」の誤解

 

大学等が負担してくれるのは、車両(大学までの搬送用)、火葬費用のみ。棺や自宅等で安置するためのドライアイスなどの費用も基本的には遺族が負担します(大学によって異なる)。火葬だけで良いという場合、確かに費用はかからないことになりますが、通常通りの通夜、葬儀・告別式をするとなると、それにかかる費用は遺族が負担することになります。遺骨がしばらく戻ってこないからこそ、葬儀はきちんとやっておきたいと考える家族が多いようです。

 

 

■「お墓の用意は不要」の誤解

 

大学によっては慰霊塔(慰霊墓)や納骨堂がある場合もあるので、お墓の心配をしなくても済むといって申し込みを希望する人もいますが、遺骨は基本的には遺族に返還することを前提としています。大学の慰霊塔(慰霊墓)や納骨堂は、あくまで身寄りがなく、遺骨を受け取る人がいない場合の受け入れ先であり、お墓代を節約したいという人のための受け皿ではありません。

 

解剖は全身にメスを入れられます。脳や眼球、骨までありとあらゆる細かい部分まで解剖されますので、解剖を認めた遺族でも、本人の死後、罪悪感や後悔の念などに苦しめられるケースも少なくありません。遺骨がなかなか戻ってこない状況で、自分たちはどこを向いて死者を弔ったら良いのか悩んでしまうケースもあります。

 

解剖実習は「屍は活ける師なり」(シはイけるシなり)と言われているほど、机上ではわからない実際の人体構造を学び、技術を研さんしていく実学です。献体は医学の発展のために行う社会貢献であって、葬儀やお墓問題の解決先として捉えてはいけないのではないでしょうか。

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葬儀・お墓コンサルタント

吉川 美津子

社会福祉士(葬送ソーシャルワーカー)、葬儀・お墓・終活コンサルタント。90年代半ばに葬儀業界に足を踏み入れ、大手葬儀社「公益社」勤務、つづいて仏壇・墓石販売店「はせがわ」勤務。駿台トラベル&ホテル専門学...

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