いったい何が“タブー”なのか? 女性アスリートに求められる月経コントロール

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清水なほみ

写真:Imaginechina/アフロ

オリンピックの水泳選手が月経について語ったことで話題になっているようですね。

 

「スポーツ選手のタブー」と書かれていますが、いったい何が「タブー」なのかしばらく理解ができませんでした。試合と月経の日が重なることは普通にありえることですし、月経中だからスポーツを行ってはいけないなんてことはありえません。どうやら、スポーツ選手が「月経そのものについて語る」ことがタブー視されているようです。スポーツ選手もひとりの女性です。なぜ月経について言及してはいけないのでしょうか? 女性選手も男性選手と同じように「月経などを言い訳にしないで頑張れ」といった風潮があるのでしょうか?

 

女性アスリートが月経について口に出しにくい要因の一つとして、指導者に男性が多いということが挙げられます。実際、女性アスリートから女性特有の課題に関して相談を受けている指導者は半数以下しかおらず、男性指導者の場合は約38%しか相談を受けていません。また、指導者の6割以上が選手の月経周期を把握していないというデータもあります。

 

月経中にパフォーマンスが落ちることは、普通に月経を体験したことのある女性なら何も言わなくても理解できると思います。記事にもある通り月経中は鉄欠乏状態になりやすいですし、骨盤内には血液がうっ滞しやすくなりますし、いわゆる月経痛以外にも頭痛や腰痛や吐き気などの不調が出やすくなります。仕事をしている人であれば「生理休暇」があるくらい、月経中は心身の調子は悪くなりやすいのです。

 

大事な試合に月経が重ならないようにする方法は簡単です。ピルで月経を移動させることができるからです。ずらしたい月経の前に単発でピルを飲んで移動させることもできますし、普段から定期的にピルを飲んでおいて来させたい時に出血を来させるというコントロールも可能です。私も妊娠を希望している時以外はずっとピルを飲んでいますが、オペの日や当直の日の合間を縫って「この日なら大丈夫」という3~4日間を狙って出血させることができるのでとても便利です。

 

月経に日々の生活を振り回されるのではなく、月経を含めて自分の体調を自分の意志でコントロールできるのでとても主体的に行動することができます。にもかかわらず、日本の女性アスリートのピル利用率はまだまだ低く約3%程度にとどまっています。欧米の女性アスリートの約83%がピルで月経も体調もコントロールしていることを考えると、日本の女性アスリートがいかに不利な立場に立たされてしまっているかがうかがわれます。

 

ピルは月経日をコントロールできるだけでなく、月経不順・月経痛・月経前症候群などの様々な女性特有の悩みを解消してくれます。もちろん、ピルを服用していてもドーピングには引っかかりません。ぜひ、女性アスリート本人にも指導者にもピルに対する正しい知識をもっていただき、日本の女性アスリートにも欧米並みのコンディションコントロール術を身に着けられるような環境を整えていただきたいなと思います。

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清水なほみ

女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性...

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