劇場とは〝おんな〟である。聖なる契りとしての「Endless SHOCK」、その魔性の正体とは?

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2月4日、堂本光一さん主演舞台Endless SHOCKが、東京・帝国劇場で幕を開けた。同作は、2000年の初演から18年になる今も上演が続けられ、3月6日の公演で実に1600回を数える。2017年は帝国劇場で2か月、大阪の梅田芸術劇場で1か月、そして福岡の博多座で1か月と、3劇場で約4か月公演が行われ、そのすべてが満席という快挙を成し遂げた。

 

観客のほとんどは女性だが、大部分は大人が占め、十代とおぼしき少女はごくわずか。上は80代くらい、また、年齢の中央値は40代半ばくらいと思われる。ではなぜ、酸いも甘いもかみ分けた大人の女性たちが、引き寄せられるように足繁くSHOCKに通うのか?

 

「劇場とは“おんな”である」という観点から、その謎を読み解いてみたい。

 

Endless SHOCKは、ショービジネスに命を賭ける若きエンターテイナー・コウイチと、彼が率いるカンパニーの仲間との愛憎を描いた群像劇だ。作中には、スリリングなフライングやパーカッション、シェイクスピアの劇中劇などさまざまな仕掛けが盛り込まれ、まさに息つく暇もない。また、再演のたびに新たな試みがなされるので、毎回新鮮な驚きがある。

 

だが、こうした構成の巧みさもさることながら、本作の“魔性”はおそらく、女性の本能を刺激してやまない”魂の契り”が仕込まれているからだと私は思う。


劇場とは、“おんな”である。特に日本のそれは、海外のオペラ座等と異なり、パートナーにエスコートされて臨む場というよりむしろ夫や家庭といった日常から女を切り離す場だ。母でも妻でもない、“おんな”として純化した存在として、彼女たちは劇場に吸い込まれていく。仄暗い場内、紅く柔らかい客席は、そのまま女性の胎内を思わせる。女たちと劇場は溶け合い、開演と共にひとつの意識体として同化する。

ここから、コウイチと私たちの営みが始まる。

 

純化した“おんな”に応えるのは、男の中の男でなくてはならない。それは、磨き上げられた肉体と類い希な精神力を有し、強さ華麗さ美しさで“日本を代表する三劇場”を骨抜きにした、堂本光一その人だ。


第一幕のクライマックス。劇中劇「ジャパネスク」で、コウイチは攫われた姫を救うべく、宿敵と死闘を繰り広げる。刀がぶつかり合う激しい殺陣、これに続くコウイチの“階段落ち”は本作の大きな見所で、そこに至る過程は“おんな”が最愛の男を生み出すための、極めて神聖な場面となっている。悲劇の舞台となる大階段こそは、“おんな”の化身。セットデザインは少しずつ手が加えられているが、大階段のまわりにはマーブル模様が施され、このなかには女性の象徴を思わせるモチーフが紛れ込んでいる。もっと言えばコウイチ軍の旗にはクロスした日本刀が描かれており、刀とはすなわち男性の象徴である。

これが、いわゆる性的サブリミナルを狙ったものかどうかはわからない。しかしながら、敵に奪われた姫(おんな)はこの階段の頂上で捕縛され、ただひとりの男が上りくるのを待っている。階段を上りつめたコウイチは敵に斬られ、その身を鮮血に染め上げる。それは、まさしく破瓜の血だ。だが、瀕死になりながらも彼は勝つ。これこそはひとつの受胎であり、彼を受け入れた“おんな”は、うねり、緋の大階段を模した産道からただひとりの“おとこ”を産み落とす。転げ落ちたコウイチの苦しげなうめき声は、たった今生まれ出た子の産声にほかならない。

劇場は、“おんな”は、またしても彼を生んでしまった。そうやって私たちは何度でも夢見、孕み、彼を産み落とさずにいられないのだ。いちばん強く美しい男を産み落としたいし、契りたい。「光一さんのファンだ」、「ストーリーが好きだ」、それはもちろん。だが何より女が抱く本能的な渇望を、SHOCKは無意識のうちに叶えてくれる。劇場と私たちは、本作を介して女どうしの美しい共犯関係を結ぶのだ。だから女性たちは、SHOCKに通い詰めずにおれないのではなかろうか。

 

光一さんは、今夏井上芳雄さんとW主演で新作『ナイツ・テイル-騎士物語-』に挑むことが報じられ、現時点でSHOCKの再演は発表されていない。でもかならず、劇場(おんな)は彼を呼ぶ。

 

私もまた、おんな。再演の声を聞けば、暴れるように身体が疼く。本能のまま何度でも、劇場に足を運ぶに違いない。どうしようもなく官能を掴まれる魔の舞台。それが、女から見たEndless SHOCKなのである。

 

※Endless SHOCKは、帝国劇場で2018年3月31日まで上演中。

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ジャニヲタ・エバンジェリスト

みきーる

ジャニヲタ・エバンジェリスト、女子マインド学研究家。出版社勤務を経て、ライター&編集者として2000年に独立。女心を知って楽しく生きるためのライフハック“女子マインド学”を提唱。ふだんはファッシ...

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