F1から消えるのはレースクイーンではなく「グリッドガール」。彼女たちの代わりに登場するのはグリッド…

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F1世界選手権の興行面を取り仕切る「Formula 1(フォーミュラ・ワン)」は1月31日、3月25日に2018年シーズンの開幕を迎えるオーストラリアGPから「グリッドガール」を廃止すると発表。担当責任者はその理由を次のように説明した。

 


「グリッドガールは何十年にもわたり、F1グランプリにとって当たり前の光景になっていました。しかし、私たちはこの習慣が私たちのブランドバリューに共鳴しないと感じていますし、現代の社会規範と照らし合わせた場合、明らかに矛盾していると感じています。世界中の新旧F1ファンにとっても適切だとは思っていません」

 

グリッドガールとは、ドライバー名やカーナンバーが書かれたボードを持ってスターティンググリッドに立つ女性のこと

時代にそぐわない、というわけだ。F1の興行面を取り仕切る組織は2016年にアメリカの企業に買収された。2017年シーズン以降段階的に、アメリカ風の演出が導入されている。テキサス州オースチンで開催されたアメリカGPでは、当地では超有名なリングアナウンサー(マイケル・バッファー)がボクシングやプロレスの選手紹介よろしく、スタート前にF1ドライバーを順番に紹介した。


紹介されたドライバーはコース上に仮設されたボックスからスモークをかき分けて登場し、レッドカーペットを歩いてグリッドに向かうという趣向。レッドカーペットの脇でドライバーを出迎えたのは、いかにもアメリカンなチアガールたちだった。この派手なドライバー紹介を行うために、アメリカGPだけ特別にスタート進行は15分早められたのだった。

 

2017年シーズン以降段階的に、アメリカ風の演出が導入されている。アメリカGPでは、リングアナウンサーに紹介されたドライバーが、チアガールが出迎えるレッドカーペットを歩いてグリッドに向かう


そうした派手な演出があった一方でグリッドガールの廃止である。フォーミュラ1は明確には説明していないが、大物映画プロデューサーの行為がきっかけで大騒動に発展したハリウッドのセクハラ問題が影響しているのではないかと疑いたくなる。いずれにせよ、ショーを演出する要素としての女性色は排除しておこうという方針なのだろう。ほんの数ヵ月前はチアガールを呼んだくせに……。

 

グリッドガールは、グランプリ開催国の文化、伝統を感じさせる衣装を身にまとう。写真上はオーストリアGP、下はベルギーGP

 

■レースクイーンは日本発祥!?

 

ところで、日本で「グリッドガール廃止」が報道されると、何を勘違いしたのか「F1はレースクイーンを廃止する」と一部で報道され、「ナニッ! レースクイーンがいなくなる?」と一部で大騒ぎになった(らしい)。


廃止されるのはグリッドガールであって、レースクイーンではない。別の職業である。グリッドガールは、ドライバーの名前やカーナンバーが書かれたボードを持ってスターティンググリッドに立つ女性を指す。彼女たちの雇い主はレースイベントの主催者だ。

 


お色気を感じるかどうかは人それぞれだが、グリッドガールは基本的に、グランプリ開催地や開催国の文化や伝統を感じさせる衣装を身にまとう。その土地の文化や伝統を、写真や映像を通じて世界に発信するのが彼女らの役割だ。


一方、レースクイーン(は和製英語である)は日本のレースイベントが発祥だ。現在ではSUPER GTを中心に活躍の場が用意されている。彼女たちの雇い主はイベント主催者ではなく、チームやチームのスポンサーである。スターティンググリッドにも立つが、グリッドウォーク(観客がピットレーンを歩くことのできる催し)ではガレージの前に立つ。チームやスポンサーをPRするのが彼女らの役割だ。

 

バブル期のレースクイーン。ハイレグ&ハイヒールのスタイルで一世を風靡(?)


1980年代から90年代にかけてのバブル経済期のレースクイーンは、ハイレグ水着(死語?)を身につけていたりもしたが、昨今のレースクイーンはその当時に比べれば控え目な、かわいらしい衣装を身にまとっている(まあ、比較の問題だが……)。


ちなみに、サーキットが雇い主の「サーキットクイーン」なる職種も存在する。富士スピードウェイのイメージガール「クレインズ(CRANES)」がその一例だ。彼女たちはレースイベント期間中、場内放送やステージイベントに登場し、イベントの紹介やサーキットの魅力を伝える仕事をする。


さらに言うと、東京オートサロンなどで企業やショップのブースに華を添えるのはキャンペーンギャル(キャンギャル)と呼んだり、イベントコンパニオンと呼んだりする。彼女らのお色気度はかなり幅が広いが、独断と偏見でお色気度に順序をつけると、キャンギャル>レースクイーン>グリッドガールといった感じだ。

 

2017年東京モーターショーのコンパニオン。露出度は控えめ


レースクイーンはサーキットにファンを集める力を持っている。彼女らのまわりを、カメラを構えたファンが十重二十重に取り囲むのは、レースイベントでの日常風景だ。一方、グリッドガールに一般のファンが近づくことは許されない。なぜなら、スターティンググリッドに一般の観客は入れないからだ。映画スターや有名ミュージシャンにアーチスト、プロスポーツ選手に企業のVIPなど、セレブの社交場として機能している。

 

グリッドガールの後は「グリッドキッズ」が導入されるようだ


グリッドガール廃止を発表した5日後の2月5日、フォーミュラ1はグリッドガールに代わって「グリッドキッズ」を導入すると発表した。ゴーカートなどの下位カテゴリーで活動する子供たちから採用するという。すでに日本のスーパーフォーミュラなどで採用されている。サッカーの試合で選手と手を繋いで入場するエスコートキッズをイメージした取り組みだろうか。F1ドライバーになることを夢見るキッズにとっては朗報だろう。


それにしてもグリッドガールの廃止、個人的にはつくづく残念だと、改めて写真を見るに思ってしまう……。

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全...

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